
北海道積丹町で、住民の命を守るべきクマ駆除体制が崩壊している。発端は、副議長・海田一時氏(かいだ・かずよし、74歳)による地元猟友会へのパワハラ発言だった。
自宅近くでヒグマが捕獲された際、現場で暴言を繰り返し、「金目当てだろう」「予算を削る」と威圧したことで、猟友会が「謝罪がない限り出動しない」と決断。町内ではクマの出没が相次ぎ、子どもたちの通学路にも不安が広がっている。にもかかわらず、海田氏は「僕は悪くない」と謝罪を拒否。町民の怒りと恐怖は、いまや頂点に達している。
捕獲現場での暴言 「誰に物を言っている」から始まった騒動
9月27日、北海道積丹町の副議長・海田一時氏の自宅近くに設置された箱罠に、体重284キロの巨大なヒグマがかかった。危険を察知した猟友会のハンター約10人が現場に駆けつけ、駆除と搬出作業を開始した。
その際、海田氏は安全確保のため立ち入りを制止されたことに腹を立て、「誰に物を言っているんだ!」と声を荒らげたという。さらに、
「こんなに人数が必要なのか? 金をもらうために集まっているんだろう」
「俺にそんな口をきくなら駆除をさせないようにしてやる」
「議会で予算を減らす」「辞めさせてやる」
などと、議会の立場を利用した発言を連発。
現場のハンターは「命がけで作業しているのに、公職者に脅されるとは思わなかった」と憤る。別の関係者も「副議長の威圧は明らかなパワハラ。恐怖で声が出なかった」と語る。
命を守る現場で放たれたその言葉が、積丹町の平穏を壊すきっかけとなった。
猟友会が下した苦渋の決断 「謝罪がない限り出動しない」
暴言を受けた猟友会は緊急会合を開き、全会一致で「謝罪がない限り出動しない」と決定した。
ヒグマの駆除や巡回は町からの委託事業であり、地域の安全を支える“命の仕事”だ。報酬はわずかだが、責任と誇りを持って活動してきた。
その彼らが活動を止めたのは、単なる反発ではない。命を軽んじるような発言を受け入れれば、組織としての誇りを失うからだ。
しかし、出動拒否以降、町ではクマの目撃が急増。小学校近くで子グマが現れ、畑が荒らされる被害も出ている。町職員が代わりに見回りを行っているが、銃を扱えないため実質的な防御は不可能だ。
「これで本当に守れるのか」「子どもを外に出せない」という声が、町中に広がっている。
副議長の居直り 「僕は悪くない」「謝罪はしない」
海田氏は、問題発覚後の取材に対し、「僕は悪くない」と発言している。
さらに「(猟友会に謝罪はしないのか)」という質問には、はっきりと「しない」と答えた。
また、「『辞めさせてやる』『予算を減らす』などの発言を現場で行ったのか」と問われると、「そんなことは現場では言っていない。議会での話を誤解している」と弁明。責任を全面的に否定した。
だが、現場にいた複数の証言が一致しており、「副議長は確かにそう言った」との声は揺るがない。
町民からは「この期に及んで“僕は悪くない”とは呆れる」「謝罪を拒む姿勢が火に油を注いでいる」と批判が集中している。
責任を認めず、謝罪を拒む態度が、町民と議会の間に深い溝を生んだ。
議会も沈黙 “権力の壁”が作る不信の連鎖
当初、町議会内部では倫理委員会の設置や謝罪勧告の案も検討されたが、海田氏の反発と一部議員の擁護によって立ち消えとなった。
副議長という立場の影響力は大きく、「逆らえば議案が通らない」という声もあった。
その結果、議会は沈黙を選び、町民への説明責任も果たしていない。
町の関係者は「副議長に意見できる人がいない」「議会が自浄能力を失っている」と嘆く。
地方政治の信頼は“透明性”によって支えられるが、今回の問題ではその原則が完全に崩壊した。
行政と議会の間に漂う緊張感は、町民の暮らしにまで影を落としている。
文化祭中止と爆破予告 町全体を覆う不穏な空気
11月初旬、積丹町役場に爆破予告が届き、文化センターで開催予定だった「積丹町文化祭」が中止された。
文化祭は保育園児から中学生、町民までが参加する年に一度の地域行事で、子どもたちはこの日のために練習を重ねてきた。
突然の中止に、町内では「子どもの晴れ舞台が奪われた」「町全体が壊れていく」と悲嘆の声が広がった。
爆破予告の理由は明らかになっていないが、「クマ騒動との関連があるのでは」との見方も根強い。
SNS上では、「謝らない副議長が混乱を生んでいる」「あの人のプライドのせいで町がめちゃくちゃ」と批判が相次ぎ、海田氏への怒りは広がる一方だ。
小さな町が抱えた不安と疲弊――その中心にいるのは、一人の政治家である。
クマよりも恐ろしい人間の傲慢
海田一時氏(かいだ・かずよし、74歳)の言葉と態度は、地方政治の慢心を象徴している。命を守る現場での暴言、謝罪拒否、そして「僕は悪くない」という居直り。その一つ一つが町の信頼を壊していった。
「誰に物を言っている」と怒鳴ったその声は、いまや町全体に響いている。「あんたこそ、誰に仕えているのか」と。
積丹町が取り戻すべきは、権力の威圧ではなく、住民への誠実と責任である。
クマより恐ろしいのは、人間の傲慢だ。謝罪一つ拒むその姿勢が、町を暗闇へと導いている。

  

                
                
                
            
                
                
                
                
                
                
                
                
                