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学歴詐称から失職へ──伊東市・田久保真紀市長、図太さが招いた末路

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田久保眞紀氏
田久保眞紀氏 Xより

静岡県伊東市の田久保真紀市長(55)が、学歴詐称問題に端を発した混乱の末、ついに失職する。市議会は10月31日、2度目となる不信任決議案を賛成多数で可決。地方自治法に基づき、田久保氏は日付が変わる11月1日午前0時をもって職を失う。

昨年の市議選で最下位当選から一転、市長選で現職を破る“下剋上”を果たした田久保氏だったが、就任からわずか半年で政治生命に終止符を打つ形となった。学歴詐称という虚偽、議会との対立、そして開き直りとも受け取れる強気な姿勢が、信頼を崩壊させた。

 

2度目の不信任可決、市長失職が確定へ

静岡県伊東市議会は10月31日、田久保真紀市長への2度目の不信任決議案を賛成多数で可決した。地方自治法の規定により、同一任期中に2度目の不信任決議を受けた首長は失職となる。これにより田久保市長は、日付が変わる11月1日午前0時をもって職を失うことが確定した。

議会側が2度目の決議に踏み切った背景には、市政への信頼回復が見込めないとの判断があった。市長としての説明責任を果たさぬまま、議会解散を選んだ田久保氏の政治手法は「市民不在」との批判を招いた。わずか半年足らずでの失職は異例であり、伊東市政に深い傷跡を残した。

 

下剋上からわずか数か月──勝利の余韻も束の間

田久保氏は元市議で、2023年の市議会議員選挙では定数20の中で最下位当選。決して強い地盤を持つ政治家ではなかった。だが2025年5月に行われた市長選では現職を破り、奇跡的な“下剋上”を果たした。新風を期待する有権者の支持を得たが、それは長くは続かなかった。

市長就任直後から市政運営は混乱を極めた。議会との対立が絶えず、発言のぶれや説明不足が相次いだ。政策面での実績を積む前に、学歴をめぐる疑念が一気に信頼を崩壊させた。田久保氏が掲げた「誠実で開かれた市政」という看板は、皮肉にも最初に失われたものとなった。

 

学歴“東洋大学卒”の記載と「除籍」判明の経緯

発端は、選挙時に報道機関へ提出された経歴調査票だった。そこには「東洋大学法学部経済法学科卒業」と記載され、市の広報誌にも同様の表記があった。だが6月初旬、市議全員宛に「彼女は除籍であり卒業していない」という告発文が届いた。

確認の結果、田久保氏は東洋大学を卒業しておらず、在学中に除籍となっていたことが判明。にもかかわらず「卒業」と公的文書に記載していた事実が明らかとなり、市議会は学歴詐称と断定した。

この問題に対し、田久保氏は「故意ではない」と釈明し、「法的には問題ない」と主張した。しかし、説明は曖昧で、卒業証明書などの提示も拒んだ。その姿勢に市民や議会からは「誤りを認めない」「責任を回避している」との非難が噴出した。

 

市議会との対立と“図太さ”の構造

学歴問題が表面化した後も、田久保氏は市議会への反発を強めた。不信任案が提出されると、彼女は市議会を解散し、再選を狙う強硬策に出た。しかし10月19日の市議選では、定数20のうち19人が「反田久保派」となり、圧倒的な逆風が吹き荒れた。

その後、再び開かれた臨時議会で不信任決議案が提出され、可決は時間の問題とみられていた。それでも田久保氏は「私は良心に従って真実を述べている」と強気の姿勢を崩さず、記者団の質問にも「市政は私が責任をもって立て直す」と応じた。

だが、その言葉とは裏腹に、議会との協議や説明の場からはたびたび姿を消した。議会との意思疎通を断ち切ったまま、市民の不信が積み重なっていった。こうした強情さと開き直りが「図太い」「反省の色がない」との印象を決定づけた。

 

市政に残された空白と再建への道

市長の失職により、伊東市政は大きな空白を抱えることになった。今後は市長選が実施される見通しだが、市政の停滞と混乱は避けられない。観光都市・伊東市にとって、行政の信頼喪失は経済や地域振興にも影を落とす。

田久保氏の問題は、単なる学歴詐称の一件にとどまらない。行政トップが誤りを認めず、説明責任を回避する姿勢が、いかに組織の信頼を失わせるかを示した。地方自治体のトップは、政策能力以上に“誠実さ”が問われる。

市民の間では「もう嘘はうんざりだ」「真面目にやる人に市政を任せたい」という声が広がる。再建の第一歩は、透明性と説明責任を徹底する新たなリーダーを選ぶことに尽きる。市政の信頼を取り戻す道のりは険しいが、教訓を生かせるかどうかが、伊東の未来を左右する。

田久保市長の失職劇は、地方政治における「信頼」という基盤の脆さを突きつけた。経歴の虚偽、説明の回避、議会との対立──そのすべてが積み重なり、政治家としての資質を失わせた。

「正直であること」が最も単純で、最も難しい政治倫理である。田久保氏の図太さは、一時的な強さに見えても、最終的には孤立と失墜を招いた。

伊東市は今、失われた信頼をどう再生するかという試練に直面している。政治の再建とは、市民の心を取り戻すことにほかならない。新しい市政には、真実と誠意に裏打ちされたリーダーシップが求められる。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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