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藤井聡太“六冠”後退 伊藤匠が王座奪取 二強時代の幕開けか?

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伊藤匠
公益社団法人日本将棋連盟公式インスタグラムより(伊藤匠氏 第73期王座戦挑戦者決定戦)

10月28日、将棋界が息をのむ瞬間が訪れた。
王座戦五番勝負の最終局で、藤井聡太七冠が伊藤匠叡王に敗れ、六冠に後退。伊藤は二冠となり、史上4番目の若さで九段へ昇段した。
同じ時代を歩んできた二人が、再びタイトルを懸けて相まみえた夜。
勝負を決したのは、「常識外の一手」と称された桂馬の一撃だった。
盤上のドラマを通して、師匠・杉本昌隆八段が見た“時代の転換点”を描く。

 

 

「常識外の桂馬」が生んだ衝撃

静まり返る対局室。
藤井のと金が相手陣へ迫り、誰もが「払う」と読む局面だった。
だが、伊藤はその駒を取らず、桂馬を打って攻め合いに出た。

観戦していた棋士たちの間に、わずかなざわめきが走った。
「受けの棋風で知られる伊藤が、ここで攻めるのか?」
その非常識な一手が流れを決定づけた。

藤井はわずかに表情を崩し、口元を押さえながら深く前傾する。
形勢が傾くのを悟ったように、静かなうなずきが続いた。

そして午後8時34分、投了の合図。
新たな王座が誕生した。
観戦室の空気が一瞬止まり、やがて拍手が静かに広がった。

 

15年越しの再会。泣き虫少年の成長

伊藤匠が藤井と初めて戦ったのは、小学3年の全国大会。
当時、伊藤が勝ち、敗れた藤井は人前で大粒の涙を流した。
そのときの“泣き虫少年”は、のちに史上最年少で七冠を達成する天才となる。

15年後、ふたりは再び頂上で出会った。
伊藤は2024年の叡王戦で藤井の“八冠”を崩し、2025年の王座戦では、再びその牙城を崩した。

「苦しい形勢でも最善を尽くす。最近はそういう将棋が指せていると思います」
対局後の伊藤は、淡々と語りながらもどこか誇らしげだった。

タイトル通算3期、23歳0カ月で九段昇段。
その記録は羽生善治を上回り、史上4番目のスピード昇段。
幼き日の涙が、静かに誇りへと変わった瞬間だった。

 

師弟が見つめる「次の時代」 二強の行方

藤井六冠の師匠・杉本昌隆八段は、敗局を冷静に見つめていた。

「伊藤叡王の内容が非常に良かった。
形勢が不利になってからの粘り強さ、ここに関しては藤井を上回ったかもしれません」

では、将棋界は二強時代に突入したのか。
杉本は慎重に首を振った。
「まだ“一強”ですね。
伊藤さんがもうひとつタイトルを取った時が、本当の“二強時代”の始まりだと思います」

その視線の先には、すでに次の舞台、竜王戦がある。
「彼は負けを引きずらないタイプ。むしろ過密日程の方が強い」
杉本は、愛弟子の底力を知っている。

盤上での勝敗はついても、勝負は終わらない。
追う者と、追われる者。
二人の若き天才が互いを映す鏡となり、新しい時代の光を、静かに照らし始めている。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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