
東京・表参道の美容室で、20代女性客をトイレに連れ込み、わいせつな行為をしたとして、美容師の男が逮捕された。経営者であり“カリスマ美容師”として知られていた藤井庄吾容疑者(33)は、SNSで「毎月200名以上を担当」と誇り、予約困難な人気店を築いていた。その華やかな表舞台の裏で、密室を悪用した卑劣な行為が繰り返されていた可能性が浮かび上がっている。
捜査員が入った人気美容室
9月30日夕方、表参道の一角。ガラス張りの美容室にスーツ姿の捜査員が次々と入っていく。周囲の通行人が驚いた表情で立ち止まる中、店の奥から小走りで出てきたのは藤井庄吾容疑者だった。
「ビル自体で何か問題があったようで、うちも協力している状態です」
記者にそう答えたわずか3時間後、彼は「不同意わいせつ」の容疑で逮捕され、警察署へと連行されていった。
“月200人担当”のカリスマ美容師
藤井容疑者は、美容室「ELTE OMOTESANDO」の代表を務める美容師。美容室激戦区の表参道で独立し、若い女性客を中心に人気を集めてきた。
Instagramのフォロワーは1.5万人を超え、人気アイドルやインフルエンサーの髪を担当。SNSでは「毎月200名以上の方を担当」「ご新規は月10名限定」と、自らを“売れっ子美容師”として発信し続けていた。実際に予約は1か月先まで埋まることも多く、顧客からは「カリスマ的存在」と認識されていたという。
密室で狙われた女性客
事件が起きたのは今年4月。施術を終えた20代女性客に対し、藤井容疑者は「トイレの方にいいですか」と声をかけた。女性が誘導に従って入ると、藤井容疑者も中へ入り鍵をかけた。
「いいシャンプーあげるし、きょうの料金もいらないです。あなたにしか頼めないんです」
そう囁きながら女性の手首をつかみ、下着の上から無理やり自身の下半身を触らせたとみられている。女性は逃げ場のない状況に追い込まれていた。
常連客によれば、この美容室は基本的にマンツーマン施術。アシスタントを介さないため「落ち着いた空間」と好評を得ていたが、その静けさは同時に「二人きりになりやすいリスク」にもつながっていた。
浮かび上がるセクハラ発言の常態化
今回の事件を機に、他の女性客からも証言が相次いだ。
「会計の時に『以前のお客様がお金が足りず、性行為で代金を払おうとした』と話された。さらに『もし僕が相手ならいくらでできますか?』と聞かれた」
「俺が(お金を)払うからそういうことしてって言ったらする?と繰り返し聞かれた」
いずれも会計時の“密室”での発言だった。こうしたセクハラトークが常態化していた可能性があり、返答次第ではトイレに連れ込まれていたのではと恐怖を感じた女性もいる。
美容師業界に広がる波紋
40年のキャリアを持つベテラン美容師は憤る。
「月200人の担当は、スタッフがいれば可能な数字です。しかしこの事件は、日々真剣に技術を磨いている全国の美容師の信用を傷つけるもの。免許を取り消してほしい」
SNSでも「努力を積み重ねて表参道で店を持ったのに、なぜ捕まらないと思ったのか」「信頼を裏切った代償は大きい」といった批判が殺到している。
SNS集客とセルフブランディングの光と影
藤井容疑者はInstagramを重要な営業ツールとして活用していた。カット後の写真を日々投稿し、「このクオリティをぜひ体感してください」と宣伝。事件発覚前日まで集客を続けていた。
SNSによる“成功モデル”として多くの美容師の憧れでもあったが、裏では女性客を物色する手段ともなっていた疑念が拭えない。
信頼を裏切った代償
美容室は本来、客が安心してリラックスできる空間である。しかし、藤井容疑者はその信頼関係を裏切り、密室性を利用して女性客を狙ったとされる。警視庁にはすでに複数の被害相談が寄せられており、余罪の解明が進められている。
“カリスマ美容師”と呼ばれた男の転落劇は、美容師という職業が持つ「人と人との距離の近さ」の危うさを改めて浮き彫りにした。