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湘南美容クリニックの「成長ホルモンプラン」が炎上 韓国で一般化する“身長注射” 日本でも拡大懸念

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SBC、成長ホルモン注射炎上

美容整形クリニック大手の湘南美容クリニック(SBC)が打ち出した「成長ホルモンプラン」が、SNS上で炎上している。

「身長+5cm目指す!」「6歳から診療可能」「中学生までにはじめる」などと掲げた広告やLPなどの内容が拡散し、保護者や医療関係者から「親の不安を煽る」「副作用リスクを十分に伝えていない」との批判が相次いでいる。

 

SNSで噴出した怒りと賛否

XなどのSNSでは「小児医療を食い物にする社会悪」「副作用が出たら保険医療に丸投げする気ではないか」といった厳しい意見が目立つ。

「低体重児を産んだ親の罪悪感を利用しているように見える」「適応外の子に+10cmを求めれば過剰投与になりかねない」との声も広がっている。

一方で「低身長治療で実際に平均まで伸びた」「身長が高いメリットはデメリットを補って余りある」との肯定的な体験談もあり、SNS上では賛否が鋭く対立している。

 

韓国で加熱する“身長注射”ブーム

だが、実はこうした論争は日本だけの話ではない。

韓国では「키 크는 주사(身長注射)」が近年一般化し、公共放送KBSの時事番組『追跡60分』(2025年7月18日放送)がその実態を報じたりもしている。

番組によれば、首都圏の成長クリニックは予約が殺到し、上位病院では受診まで1年以上待たされる。費用は月70万〜90万ウォン(約8万〜10万円)、数年間で数百万〜数千万ウォンを投じる家庭も少なくない。親が「180cmを超えてほしい」と望み、夜遅くまで中学生に注射を打つ姿も放送された。

韓国における成長ホルモン製剤の供給額は2019年の1,957億ウォンから2023年には4,800億ウォンに倍増。副作用として頭痛、浮腫、脊柱側弯の悪化、糖尿病の境界値判定、さらには視神経浮腫といった報告が増え、2020年以降は異常事例が急増している。

一部クリニックでは、思春期の進行を遅らせる目的で「アロマターゼ阻害薬(本来はがん患者向けの薬剤)」が子どもに処方される例まで確認されているという。

韓国小児内分泌学会は「正常児への使用は絶対に禁じるべき」と強調している。

 

欧米の慎重姿勢との対比

一方、欧米では、こうした動きに強い慎重姿勢が示されている。フランスでは、平均よりやや小柄な程度ではホルモン治療は行わず、代わりにビタミンD補給を勧めた例もある。

米国の専門医は、成長ホルモンで上昇するIGF-1が「乳がんや大腸がん、前立腺がんリスクと統計的関連がある」と指摘し、長期追跡データの不足を理由に正常児への使用を推奨していない。

国際学会のガイドラインでも「研究目的の臨床試験を除き、正常児への投与は行わない」と定められている。

 

保険適用の低身長治療

これに対し、これまで日本国内での正規の低身長治療は厳格な基準のもとで行われてきていた。

保険適用となるのは、成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群、慢性腎不全など、医学的適応が明確に認められた場合に限られる。診断は小児内分泌科医による精密検査を経て行われ、投与後も成長曲線や副作用を継続的にモニタリングする体制が敷かれている。

保険適用下では治療費は大幅に抑えられ、国の助成や医療費補助の対象となる場合も多い。あくまで「病気や医学的リスクに基づく治療」として位置づけられている点が、自由診療ベースの「+5cmを目指す」プランとの最大の違いである。

 

美容整形大国の潮流、日本への伝播懸念

韓国は世界有数の美容整形大国であり、二重手術や鼻形成、脚延長はすでに一般化している。成長ホルモン注射もその延長線上にあり、背の高さが「外見を整える」一要素として扱われている。

日本の美容業界は韓国をベンチマーキングする傾向が強く、SBCの「成長ホルモンプラン」もその一端を示すものといえる。

高身長には誰もが憧れるものなだけに、現在はアレルギー反応が見られるが、これも数年後には、かつての美容整形がそうだったように、日本でも韓国同様に“身長注射”が一般化する未来の到来もあり得るだろう。

 

日本で問われる広告倫理と説明責任

医療の自由度を広げること自体は否定されない。身長も高い方が男性の場合は圧倒的に生きやすくなることは確かである。しかし「正常児にも使える」と誤認させる訴求や、「+5cm」「+10cm」といった確約風の表現は、SNSの反応を見るに、まだ2025年段階の日本では抵抗があるということなのだろう。

今後求められるのは、適応疾患と正常児の明確な線引き、副作用や限界・費用を含めた十分な説明、未成年を対象とする広告規制の整備、副作用発生時の責任分担ルールなどもわかりやすく明記されていくことではないか。。

今回の炎上は、美容整形大国・韓国の潮流が数年遅れで日本に押し寄せる可能性を示す警鐘である。日本社会がどのように線を引き、どのように保護者と子どもに情報を提供していくかが問われている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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