
テレビ東京の人気ドラマ「孤独のグルメ Season10」の岐阜県下呂市ロケをめぐり、温泉施設を巻き込むトラブルが発生した。制作を担当していたのは株式会社共同テレビジョン。今回の件は、X(旧Twitter)上でインフルエンサー・滝沢ガレソ氏が取り上げたことで一気に拡散し、炎上へとつながった。
制作会社は当初、下呂温泉の老舗旅館「小川屋」に「入浴シーンを撮影したい」と予約を入れていた。旅館側は営業時間を調整し、従業員も対応の準備を整えて撮影班を待っていた。
しかし約束の時間になっても一向に到着せず、問い合わせると「入浴シーンの撮影は無くなりました。もう下呂にはいません」との回答。だが実際には別の施設で撮影が行われていたことが判明し、説明が虚偽だったことも明らかになった。
SNSで批判噴出
ガレソ氏の投稿を契機にXでは「人気番組の奢りでは」「普通の会社なら報連相不足で大問題」「旅館が公表しなければ謝罪すら無かったのでは」といった批判が殺到。ファンからも「好きな番組なだけに残念」「信頼が揺らぐ」と落胆の声が相次いだ。
これを受け、テレビ東京と共同テレビジョンは小川屋に直接謝罪。小川屋は「誠意ある謝罪をいただいた」として一応の決着を見た。ただし、番組制作現場に潜む構造的な問題への視線はなお厳しい。
テレビ業界に残る“特権意識”
今回のトラブルは単なる連絡ミスにとどまらず、テレビ業界に根強く残る“特権意識”の象徴とも言える。これまで地方の施設や観光地は「撮影協力は名誉」という暗黙の了解のもと、時に負担を強いられながらもメディア露出による宣伝効果を期待して協力してきた。
だが、今回のように信義を欠いた対応が公になれば、業界全体への信頼を揺るがす危険性がある。
観光地経済に及ぶ影響
下呂温泉のような観光地ではテレビ放送が地域経済に直結するケースも多い。ドラマやバラエティのロケは集客効果をもたらす一方、トラブルが拡散すればブランド価値の毀損にもつながる。観光産業とメディアの関係は「宣伝」と「リスク」が表裏一体であることを改めて浮き彫りにした。
信頼回復への課題
人気番組だからこそ、制作現場には現地との信頼関係を何より大切にする姿勢が求められる。SNSの存在によって、これまで水面下で処理されてきた業界の慣習は瞬時に可視化される時代となった。テレビ東京と共同テレビジョンの謝罪で表面的には収束したものの、視聴者の信頼を再び獲得できるかは今後の対応にかかっている。