
2025年上半期(1~6月)の全国倒産は4,990件に達し、3年連続で増加傾向。中でもサービス業の倒産が突出し、美容室など労働集約型業界では人手不足とコスト高が倒産を促す要因となっている。一方、労働市場は依然としてタイトな状況であり、就労希望者や求人倍率は高止まり。企業の経営構造と雇用動向との乖離が浮き彫りとなっている。
倒産が4,990件:零細企業が中心
帝国データバンクの集計によれば、2025年上半期に倒産した企業は4,990件で、前年同期比1.1%増。上半期としては2014年以来の高水準だ。倒産の77.2%(約3,840件)は負債1億円未満の小規模事業者で占められており、経営体力に乏しい企業の淘汰が進んでいる。
美容業界では1~8月の倒産件数が157件に上り、前年同期の139件を上回った。3年連続で増加しており、通年でも過去最多の更新が目前に迫っている。
要因は以下の通り:
- 低価格チェーンや個人サロンとの競争激化
- 美容資材、光熱費、家賃の高騰
- フリーランス化の進行による人材確保の難航
- 長時間・低賃金による既存スタッフの流出
特に人手不足による倒産は今年すでに9件あり、前年の年間数と並んだ。
サービス業の倒産が突出
業種別倒産では、サービス業が1,697件と最多(前年比+4.8%)、全体の34%超。以下は主な業種別件数:
- 建設業:969件(+2.3%)
- 製造業:583件(+5.0%)
- 小売業:548件(+2.2%)
- 情報通信業:218件(+15.3%)
- 不動産業:160件(+11.8%)
- 農林漁業:60件(+7.1%)
サービス業内部でも、広告・物流・介護・派遣・ソフト開発など一部業種への倒産集中が顕著であり、とりわけ人手依存度の高さが脆弱性を高めている。
倒産の背景には複合的な構造的課題がある。
- 販売不振:4,117件(全体の82.3%)
- 人手不足:202件(過去最多)
- 物価高:449件
- ゼロゼロ融資返済負担:316件
- 後継者難:267件
これらの要因が重なり、体力の乏しい事業者から経営破綻が進行している。
地域別傾向:東北や近畿で増加、関東は小幅減
地域別では、以下のような動きが見られる:
- 東北:312件(+6.1%)──16年ぶりに300件超
- 近畿:1,302件(+3.0%)──12年ぶりの1,300件台
- 中部、北陸、四国も増加
- 関東:1,694件(–2.2%)、北海道:129件(–7.8%)、中国地方:211件(–10.5%)で減少
都道府県別・最多は東京が161件、その後大阪・兵庫・愛知と続く。
病院・診療所・歯科医院の倒産は上半期で35件に上り、過去最多水準。建物の老朽化、職員不足、跡継ぎ問題などが複合的に経営を圧迫。通年では70件規模に達する可能性も示唆されている。
労働市場は依然として逼迫──就労希望者数にも注目
総務省の2025年7月時点での統計によれば:
- 就業者数:6,838万人(前年同月比+72万人、34か月連続増)
- 完全失業者数:183万人(前年同月比–10万人)
- 完全失業率:2.5%(高止まり)
- 有効求人倍率:1.24倍と高く、求職者1人につき求人が1.24件ある状況
「非労働力人口」の中で就業を希望している人の数は、2025年4~6月期で公表されており、潜在的な就労希望者の存在も確認されているが、具体的な数値が公表されている資料は省庁未確認のため扱いを控えます。
倒産件数が高水準で推移している一方、就労希望者数および求人倍率は依然として高く、雇用の需給ギャップが存在している。これは人材不足という言い換えも可能であり、企業側は「採用できない」「雇っても辞められる」といった構造的な難題に直面している。
今後の課題と展望
- 単なる再分配ではなく、人材確保と付加価値創出の両立戦略が経営の鍵
- 労働市場・雇用制度の柔軟化、採用・定着支援の強化が必要
- デジタル技術の活用やプレミアム戦略で競争優位をつくる企業が生き残る可能性