
牛丼チェーン大手のすき家(ゼンショーホールディングス)は、来月4日から牛丼「並盛」を480円から450円に値下げする。値下げ幅は30円で、2014年以来11年ぶりの価格改定となる。並盛以外にも36商品で10円から40円の値下げを実施し、消費者の家計を意識した施策として注目されている。
すき家、業界最安へ
牛丼大手3社の並盛価格は以下の通りとなる。
- すき家:450円(値下げ後、最安値)
- 松屋:460円
- 吉野家:498円
今回の値下げにより、すき家は「牛丼業界で最も安いチェーン」という地位を確立する。物価高と円安による原価高騰が続く中での値下げはリスクも伴うが、同社は「価格訴求による集客増加」でシェア拡大を狙う。
ファミレス業態の動き
ファミリーレストラン大手のスカイラークグループは、効率化を進めることで低価格メニュー展開を強化している。特に「ガスト」などにおいてはワンコインランチや低価格帯メニューの拡充を図り、コスト削減を背景に消費者への訴求力を高める戦略に転じている。
回転寿司チェーンの価格戦略
くら寿司は2022年10月、従来の110円皿を115円に値上げする一方、220円皿を165円に値下げするという「一部値上げ・一部値下げ」の価格改定を行った。高単価層と低単価層を同時に取り込み、幅広い客層への対応を進めている。
対照的に、はま寿司やかっぱ寿司は「100円寿司」を維持し、消費者への低価格訴求を続けている。物価高の中でも「変わらない安さ」を前面に押し出し、スシローやくら寿司との差別化を図っている。
カレーチェーンCoCo壱番屋の逆風
一方で、カレーチェーン最大手のCoCo壱番屋は段階的な値上げを続けた結果、顧客離れが顕著となっている。2022年、2024年にかけて数度の値上げを実施したが、
2024年9月から2025年春にかけて来客数は前年同期比で5〜7%減少。高価格路線による収益確保を優先した施策が、逆に利用者の離反を招いている。
比較表:外食チェーンの価格戦略
業態・チェーン名 | 戦略内容 | 狙い・背景 |
---|---|---|
すき家 | 牛丼並盛を30円値下げ(480円→450円) | 集客増加と業界最安値の確立 |
松屋・吉野家 | 現状維持(松屋460円/吉野家498円) | 価格競争よりも付加価値戦略へ |
スカイラーク(ガスト) | 効率化で低価格メニュー拡充 | ワンコインランチなどで幅広い層を取り込み |
くら寿司 | 一部値上げ・一部値下げ(115円/165円) | 高・低価格層を同時に取り込み |
はま寿司・かっぱ寿司 | 100円寿司維持で低価格アピール | 「変わらない安さ」で差別化 |
CoCo壱番屋 | 段階的な値上げによる収益確保 | 客数減少というリスク顕在化 |
総括
すき家の11年ぶりの値下げは、物価高に直面する消費者にとって朗報であると同時に、外食産業の価格戦略の転換点を象徴している。
ファミレスは効率化による低価格維持を選び、回転寿司は「値上げと値下げの使い分け」または「100円維持」の二極化、カレーチェーンでは値上げによる逆風と、各業態で対応が分かれる。
外食産業は価格競争だけでなく、ブランドの信頼や付加価値戦略も試される局面に入りつつある。