
大手電力10社と大手都市ガス4社は28日、9月使用分(10月請求)の標準家庭向け料金を発表した。いずれも前月比で値上がりし、背景には政府による補助金縮小がある。電気は26~168円、都市ガスは17~25円の値上げ幅となり、家計への影響が一層広がっている。
電気料金 ― 北海道と九州で1900円以上の差
電力10社の標準家庭向け料金(260kWhモデル)は以下の通り。
- 北海道電力:8868円(+168円)
- 東北電力:8295円(+125円)
- 東京電力:8046円(+110円)
- 中部電力:8064円(+107円)
- 北陸電力:7924円(+98円)
- 関西電力:7416円(+92円)
- 中国電力:7672円(+88円)
- 四国電力:7580円(+80円)
- 九州電力:6944円(+26円)
- 沖縄電力:7835円(+95円)
最高値は北海道電力で、最安の九州電力との差は1900円以上。託送料金の引き上げが北海道の料金を押し上げた。
都市ガス料金 ― 東邦ガスが最高値
都市ガス4社(30㎥モデル)は以下の通り。
- 東京ガス:5488円(+17円)
- 大阪ガス:5847円(+20円)
- 東邦ガス:6323円(+25円)
- 西部ガス:5982円(+21円)
東邦ガスが最も高く、東京ガスとの差は800円以上となった。
政府補助金の仕組みと縮小
政府は2023年1月から電気・ガス料金の補助を導入したが、2024年度から段階的に縮小。今年は夏季(7~9月)に限定し、8月のみ冷房需要を見込んで補助額を上乗せした。
- 7月・9月分:電気=1kWhあたり2円、ガス=1㎥あたり8円
- 8月分:電気=3.5円(特例上乗せ)
今回の値上げは、この特例補助が終了し通常水準に戻ったことが要因だ。
家計の声 ― 現場の不安と節約
- 札幌市・40代主婦:「冬は暖房代が月3万円近くかかる。今から不安で仕方ない」
- 大阪府・20代単身男性:「節電しても去年より高い。食費を削るしかない」
- 福岡市・30代子育て世帯:「子どもが小さいので冷暖房は欠かせない。補助が終われば生活が成り立たない」
過去数年の料金推移
- 電気(東京電力260kWh)
2020年:約7100円 → 2022年:約7800円 → 2023年:約8500円 → 2024年:約8000円(補助適用後) - 都市ガス(東京ガス30㎥)
2020年:約5200円 → 2022年:約5800円 → 2023年:約6000円 → 2024年:約5500円(補助適用後)
補助がなければ、2020年比で電気・ガスともに約2割高い。
世帯年収別の光熱費負担
総務省家計調査による光熱費(電気・ガス・水道)の支出割合は以下の通り。
- 年収300万円未満世帯:平均支出の約11%
- 年収500万円前後世帯:約7%
- 年収800万円以上世帯:約4%
低所得層ほど光熱費の比率が大きく、負担感は深刻だ。
自由化市場の動向 ― 新電力・新ガスの選択肢
2016年の電力、2017年のガス自由化以降、家庭向け選択肢は拡大。燃料高騰で撤退例もあるが、携帯・石油・ガス大手とのセット割が依然競争力を持つ。
主要新電力・新ガス会社の比較表
会社名 | 主な特徴 | セット割・特典 | 注意点 |
---|---|---|---|
楽天でんき | 基本料金ゼロ、楽天ポイント還元 | 楽天市場買い物ポイント+0.5倍 | 燃料高騰時に価格変動 |
auでんき | auスマホと連動 | スマホ代が最大月1,100円割引 | 非au契約者は恩恵少 |
ENEOSでんき | ガソリン代割引などENEOSカードと連動 | ガソリン代毎月最大1円/L割引 | 提供エリアが限定的 |
ソフトバンクでんき | スマホ・ネットとセット契約で割安 | スマホ代が最大月1,100円割引 | 契約条件が複雑 |
東京ガス(電気販売) | ガスと電気のセット割 | 年間最大5,000円程度節約 | 東京圏のみ |
大阪ガス(電気販売) | 関西圏中心、ガス利用者にセット割 | 年間数千円規模の節約 | 関西圏のみ |
冬の暖房需要に備えた節電・省エネ策
専門家は「契約見直しだけでなく、家庭の省エネ工夫も不可欠」と強調する。
- 断熱対策:窓に断熱シートを貼る、厚手カーテンで熱を逃さない
- エアコン効率化:設定温度を20℃前後に、フィルター清掃を徹底
- 暖房器具の選択:電気ストーブよりエアコンやガスファンヒーターの方が効率的
- 最新家電導入:省エネ性能が高いエアコン・冷蔵庫・LED照明は長期的に節約効果
- 重ね着・小型加湿器:体感温度を高め、暖房の過剰使用を防ぐ
こうした取り組みで、光熱費を年間数千円~数万円抑えられるとされる。
専門家の見解
エネルギー政策の専門家はこう指摘する。
「新電力や新ガスによる節約も大切だが、今後は“安さ”より“安定供給と省エネ投資”のバランスが重要になる。補助金が終わった時、家庭が自力で負担を減らせる備えが必要だ」
まとめ
9月使用分の値上げは、補助金縮小とエネルギー市場の不安定さを反映した。世帯年収による負担格差も浮き彫りになり、冬の暖房期を前に家庭の危機感は強まっている。選択肢の広がった新電力・新ガスを含め、契約の見直しと節電・省エネの実践が今後の暮らしを左右することになる。