
フリマアプリ大手のメルカリは25日、「メルカリ」と「メルカリShops」において胎児のエコー写真やそれに類する商品の出品・販売を禁止すると発表した。不適切な商品に該当すると判断し、9月1日からは事務局による確認後、順次削除対象とする。出品者には取り下げを求める。
今回の措置は、エコー写真を悪用した詐欺の横行を受けた対応だ。SNSでは、購入したエコー写真を男性に見せ、「あなたの子を妊娠した。堕胎費用を払ってほしい」と金銭を要求する事例が問題視されていた。X(旧Twitter)上では8月中旬からこうした投稿が拡散し、利用者の間で懸念が高まっていた。
「妊娠詐欺」の実態 ある女性の証言
取材の過程で浮かび上がったのは、驚くほど巧妙な手口だった。ある30代女性は、マッチングサイトで知り合った男性との関係が深まった後、数週間してから突然「妊娠した」と告げる。そのときに利用するのが、メルカリで入手した陽性判定の妊娠検査薬の写真であり、さらに本物のように見せかけるため、胎児のエコー写真も組み合わせて提示する。
「一度の関係では疑われるから、2~3回会ってから切り出すのがコツ」と女性は語る。彼女はその“戦略”によって、男性から「中絶費用」や「生活支援金」と称した金を受け取り、多い月には複数人からあわせて100万円近くの収入を得ていたという。
まるで感情の裏側に計算が潜んでいるかのような冷静さで、「証拠」と称する品を見せつければ、相手は簡単に財布を開いたと証言する。
メルカリの対策と“イタチごっこ”
メルカリは「定期的に禁止出品物の見直しを行っており、胎児エコー写真もその一環として禁止対象に追加した」と説明する。ただ、ネット上では「9月の削除開始前に“駆け込み需要”が増えるのではないか」と警戒する声も出ている。
同様のケースは過去にもあった。妊娠検査薬で陽性が出たものを「証拠」として悪用するために出品する動きが一時期広がり、メルカリはこれを禁止にした。だが現在も「妊娠検査薬風ドッキリグッズ」と偽っての出品が続いており、運営と不正利用者の“イタチごっこ”が続いている。
広がる不安と冷ややかな声
SNS上では「ついにここまで来たか」「被害者が出る前に対応して正解」と評価する意見がある一方、「ドッキリグッズを装った抜け道は防げるのか」と冷ややかな見方も広がる。匿名性の高いネット取引が生む影は、個人のモラルだけでは防ぎきれない。
インターネット上のフリマ市場が拡大するなか、メルカリをはじめとするプラットフォーム運営側には、モラルに反した取引を防ぐための監視体制の強化が引き続き求められている。