
フジテレビ局内で繰り返されていたとされる「不適切な会合」に、俳優でシンガーソングライターの福山雅治氏(56)が同席していたことが明らかになった。外部弁護士で構成された第三者委員会が3月末に公表した調査報告書では、大多亮元専務取締役と「特定の男性有力番組出演者」による会合が記録されており、『女性セブン』の取材により、その人物が福山氏であったことが判明した。
第三者委員会が指摘した「不適切な会合」
調査報告書では、2005年頃から大多氏主催で開催されていた会合に、複数の女性アナウンサーが同席させられていたことが記されている。会合では新人アナの同席が求められ、《女子アナの皆様との会、よろしくお願いします!》などのやりとりが残されていた。参加したアナウンサーの一部からは「不快な思いをした」との証言も出ている。
委員会はこれらを「ハラスメントに寛容な企業体質が助長した不適切な行為」と断じ、フジテレビに対して「取引先の人権侵害を助長した可能性がある」と厳しく評価した。
福山雅治の対応と独占告白
報告書が公表された当時、福山氏は委員会による直接のヒアリング要請に「多忙」を理由に応じなかったが、書面にて「新人アナの同席を求めた事実も、性的な発言も一切ない」と回答していた。しかしその後、『女性セブン』からの取材要請に応じ、70分間にわたるインタビューに答えた。
福山氏は「報告書を読み、悩み、考え続けていた」と心境を吐露。「不快な思いをした方を特定することは絶対にしてはいけない。ではどうやってお詫びすればいいのかと考え続けていた」と語った。
“下ネタ芸人”としてのもう一つの顔
ただ、福山の名が挙がった背景には、彼の長年の「下ネタ芸」も影を落としている。福山はTFM系『福山雅治のオールナイトニッポン サタデースペシャル・魂のラジオ』をはじめとする番組で、約20年以上にわたり独特の下ネタトークを続けてきた。
実際に残されている“語録”を並べると、その振り幅と奔放さがよくわかる。
- 「チンコ出して街歩きたい」
- 「ライブで女の子たちは俺の股間ばかり見る」
- 「倉科カナのいいもの(三巨乳)を拝むことが出来て新年早々縁起がいい」
- 「俺はオナニーの神様の子供! オナニー神マーラ・ダンコーン!!」
- 「売られた下ネタは買います! 絶対に負けません!」
- 「俺の種子島に鉄砲降ろせ〜」
- 「自分の新曲をはじめて放送することを“初ぶっかけ”と言う」
- 「6は英語で何?と聞かれる→即答で『セ◯クス』」
- 「そんな女なんか別れてケッコー毛だらけ!猫灰だらけっ!!」
- 「抱かれたい男ランキング1位でも、街中で『抱いてください』と言ってくる女は今まで一人もいなかった。だから意味はない」
リスナーの間では“ましゃ節”と称され、夜更けの笑いを誘うサービス精神として親しまれてきた。しかし、こうした言葉遊びが「ファンと一緒に消費するネタ」として成立していたのは、あくまでラジオという安全な場があったからだ。
女性アナが同席させられたフジテレビの会合は、上下関係が厳然と存在する職場環境である。深夜放送で笑いに変換されていた下ネタも、権力構造の中では「ユーモア」では済まされず、ただのセクハラ発言として受け止められる。ここにこそ、今回の問題の根深さがある。
フジテレビと芸能事務所の力学
ではなぜ、福山の「新人アナを会わせてほしい」という要望が通ってしまったのか。背景には、フジテレビと芸能事務所との力関係がある。
人気タレントを抱える事務所の意向は、番組編成や視聴率に直結する。局幹部にとって、出演者の“ご機嫌取り”は避けられない宿痾のようなものだった。こうした関係性が「上納飲み会」と揶揄される文化を温存させ、タレント側の言葉が実質的に“命令”として機能してしまったとみられる。
女性アナたちの沈黙
会合に同席させられた女性アナウンサーたちが声を上げにくかったのも、この力学と無縁ではない。
「断れば人事評価に響く」「査定やポジションに影響がある」との噂は局内で共有されており、実際にアンケートでは100件以上のセクハラ被害が報告されていた。
その中には《ホテルに誘われた》《身体を触られた》といった生々しい証言も含まれているが、上司に相談しても「自分で対処しろ」と突き放された例が多かった。声を上げれば自分のキャリアが損なわれる──この沈黙の圧力が、「不適切な会合」を常態化させたのだ。
ガバナンスへの重い問い
今回の一連の事案は、中居正広氏と元女性アナウンサーのトラブルを端緒とし、フジテレビ全体のガバナンス不全を露わにした。報告書が指摘した《ハラスメントに寛容な》体質は、個々のタレントや役員の問題を超え、局と芸能界の構造的な癒着の一端を示している。
福山氏が「有力番組出演者」として具体的に浮かび上がったことで、フジテレビの説明責任とともに、視聴者の信頼をどう回復するのかが改めて問われることになるだろう。