
全国に約200店舗を展開していた美容整体チェーン「Filament」および関連ブランド「LIGHT」が、7月末から相次いで営業を停止し、事実上の事業廃止状態に陥っている。8月現在、予約は取れない状態が続き、公式な再開見通しは示されていない。
会員向けLINEで突然の営業停止告知
7月下旬、Filamentの会員顧客にはLINEで以下のような通知が送られた。
「現在、運営会社の都合により店舗の営業体制について急な変更が発生しております。そのため、誠に勝手ながら明日以降のご予約を一旦停止・キャンセルとさせていただきます。…会社の運営体制が整い次第、再度ご案内させていただきます。」
このメッセージが、事実上の閉鎖予告となった。多くの店舗は7月末をもって営業を停止し、SNSや口コミサイトでも閉店や返金不可に関する投稿が相次いでいる。
SNSにあふれる悲痛な消費者の声
SNSでは、主に消費者と思われる人たちが突然の閉店に困惑と怒りを表明している。
「7月に回数券を買ったばかりなのに、もう使えないなんて信じられない」
「10万円近く前払いして、あと5回残ってたのに…泣き寝入りするしかないの?」
「ホットペッパーから店舗情報が消えて、現地に行ったら電気も消えていてエレベーターも止まらない階になっていた」
「先月の給料が未払いだと聞いて、スタッフが次々辞めていったらしい」
「お試しで行った時、施術前から高額コースを強く勧められた上、他院の悪口を延々言われて契約しなかった。あの時の直感は正しかった」
こうした投稿は、被害金額や残り回数の具体的数字とともに拡散されており、利用者だけでなく従業員の生活基盤にも影響が及んでいる現実を浮き彫りにしている。
株式会社Filamentと川島悠希氏の急成長ストーリー
株式会社Filamentは「人の手で革命を」をミッションに掲げ、2019年2月に設立された美容整体ベンチャー企業。独自開発のオールハンド施術「骨膜整体®︎」を提供し、短期間で全国展開を果たした。
創業者で社長の川島悠希氏は1993年生まれ、宮崎県出身。猫背を治してもらった経験をきっかけに整体師の道へ進み、21歳で整体院を開業。30分1万円の施術が数ヶ月待ちとなる人気整体師へと成長した。YouTubeチャンネル「美容整体師 川島さん。」を運営し、メディア出演や著書出版も重ね、カリスマ経営者として注目を集めた。
2024年8月には人気YouTube番組「タイガーファンディング」フランチャイズ版に出演。番組内で川島氏が公開した2024年3月の月間売上は、宮﨑店739万円、福岡店1084万円、新大阪810万円、梅田950万円、銀座2710万円、恵比寿1750万円、青山1470万円と好調で、出演社長陣から「バケモノレベル」と称賛されていた。
しかし、わずか1年後に急成長の陰で資金繰りの悪化が表面化。2024年末には川島氏の放漫経営をFilament株主の坂井秀人氏がsnsで糾弾するなど不穏な流れに。
現在、川島氏は数億円を持ち去り行方不明との情報が関係者間で広がっている。
株主とフランチャイジーの間で勃発した「人材引き抜き」疑惑
混乱のさなか、Filament株主で投資家の坂井秀人氏は7月27日、Xでフランチャイズチャンネル(FCチャンネル)取締役・伊藤慎之介氏の行動をXで指弾した。
坂井氏によると、伊藤氏はFilament社員が参加するグループチャットで「今月末に全直営店舗が閉鎖される」との未確定情報を流し、自身が運営する麻布店への人材勧誘を行った。坂井氏はこのやり方を批判し、「他の加盟店は人材確保にコストをかけている中、混乱に乗じて自店舗に有利な動きを取るのは悪質」と非難した。
この批判に対し、伊藤氏は「既に多くの人に迷惑をかけているお前が言うな」と反発。発言は坂井氏の指摘に対する直接的な反応だったとみられる。伊藤氏はその後、関連ポストを削除している。
坂井氏の指摘が事実であれば、確かにフランチャイズチャンネルの伊藤氏の投稿はあまりにも行儀が悪いと言える。
フランチャイズチャンネルでは、最近も不動産紹介の逆転ホームをめぐり、フランチャイジーと運営の間でトラブルが発生しているなど、経営力のない会社まで闇雲に称賛する姿勢から、仲介者としてのフランチャイズ構築のサポート力に疑念が持ち上がっている。令和の虎にはじまり、番組としては面白いだけに、改善が期待される。
伊藤氏自身も被害を主張
編集部が確認したグループチャットのスクリーンショットでは、伊藤氏自身が「Filament神戸院をライセンス契約で運営し、1,500万円を投資したが、5月以降の売上が振り込まれず騙されている状態」と発言していた。また「代表と連絡が取れず、給与が期日に振り込まれないのは異常」「被害者をできるだけ減らしたい」とも述べ、動き出す意思を持つ人を支援する考えを示していた。
業界全体にも広がる経営不振
近年、整体業界では急拡大の末に資金繰りが悪化する事例が相次いでいる。2024年末には大手「ベアハグ」が破産(東京商工リサーチ報道)し、ほかにも「JITAN BODY」や「KINMAQ整体院」が一部店舗閉店を余儀なくされている。業界全体が過剰投資からの転換点を迎えていることがうかがえる。
今後の見通し
Filamentの事実上の営業停止は、多数の従業員、数千人の顧客、金融機関など幅広い関係者に甚大な影響を与える見込みだ。坂井氏は「資金回収の見込みはなくても関係者を守るため行動してきた」と述べており、今後も事態の推移が注目される。