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法務省発表、中国籍が帰化者数で初の最多に

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初の最多、中国籍帰化者3千人超 「永住より簡単」の逆転現象と告示非公開の波紋

中国籍帰化者が増加

2023年、日本国籍を取得した外国人(帰化許可者)は8863人にのぼり、このうち中国からの帰化者が3122人と、統計が残る昭和42年(1967年)以降で初めて韓国・朝鮮籍(2283人)を上回った。

法務省によれば、「特別永住者の帰化が減っていることが一因」とされる一方、在日中国人の帰化増加の背景には、制度上の“逆転現象”があると指摘されている。

 

背景に「中国系中間層の定住化」と子の進学ニーズ

なぜ中国籍の帰化者が急増したのか。在日中国人支援団体の関係者は「技能実習や留学で来日した人が、長期滞在後に定住を志すケースが増えている」と語る。とりわけ、日本語に堪能な20~40代の中間層が家族単位で帰化する傾向が強く、「子どもが日本の学校に進学する際、日本国籍の方が進学や就職で有利になる」との動機がしばしば聞かれるという。

また、中国本土における監視体制の強化やSNS検閲、愛国教育への不満を背景に、自由な生活を求めて「日本国籍を取得することで精神的な独立を果たしたい」という声も一定数ある。

 

帰化は「永住」よりも緩やか? 行政書士の見解

法務省は帰化の審査基準について「公表された基準はない」としつつ、一般的な条件として「在留5年以上」「素行が善良」「生計の安定」「国籍喪失(単一国籍)」「日本語能力」などを挙げている。これに対して永住ビザは原則10年以上の在留が必要で、審査も厳格だ。

東京都内で外国人案件を多数扱う行政書士は、「本来は永住の方が日本に長く住む前提なのに、手続きとしては帰化のほうが柔軟で、行政対応にも余地がある」と指摘する。

「帰化は提出書類が膨大ですが、書類さえ整えば比較的スムーズに審査が進む。一方、永住は収入や税金、保険、家族構成などが厳しく審査されるため、『帰化の方が簡単』という現場の実感は決して誇張ではありません」と語る。

 

官報での告示が非公開に 情報透明性への懸念も

こうした帰化の動きに対し、制度の在り方を問い直す声も出ている。特に注目を集めているのが、2025年4月から実施された「帰化告示の非公開化」だ。

これまで帰化許可は官報に告示され、名前や住所の一部が公に記載されていたが、現在はインターネット版官報に移行したことを機に、「プライバシー保護のため」原則90日間の非公開措置が取られている。

この変更について、ジャーナリストや研究者の間では「移民政策の実態が見えにくくなる」「統計や実名が検証できず、監視の手段が失われた」とする懸念も根強い。

法務省は「制度的に帰化の不服申し立てはできず、官報告示は許可の唯一の外部的証明。そこが非公開になれば、制度の透明性は揺らぐ」(ある法学者)との批判も受けており、帰化制度の公正性と個人情報保護のバランスを巡る議論が今後高まる可能性がある。

 

見えない「移民国家」の実像

今回のデータは、日本が事実上の「移民受け入れ国」であることを再確認させる結果となった。制度として移民政策を明示せず、「技能実習」や「特定技能」「帰化」などで外国人を段階的に受け入れてきた日本。だがその構造が、国籍取得という領域で明確に表れ始めている。

帰化は単なる行政手続きではなく、日本社会への“参入資格”を問う制度でもある。その透明性、公平性、将来の帰化者数のあり方を、私たち自身が問い直す時期にきているのかもしれない。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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