企業と学生の共育モデル、全国展開も視野に

地域の人事部としての挑戦OFA

「One For All, All For One」の理念のもと、地域企業が単独ではなく”連携”によって採用・育成に取り組む共同体的なプラットフォームだ。その名には、地域が一体となって若者を”招き入れる（Offer）”という意味も込められている。

事業主体は北九州市役所。運営企業として株式会社ワールドインテック、株式会社人材屋、株式会社Human Creationの3社が入る。2024年度に実施された第1期では、北九州市内の21社と全国から集まった学生81名が参加。

地方創生やキャリア形成をテーマに、地方創生マーケティングの実践や地域企業との合宿などを通じて交流が行われた。企業と学生が上下関係を超えてフラットに意見を交わしながら、「挑戦したい学生」と「想いのある企業」が真剣に向き合った9ヶ月間となった。

参加者が語る「成長の場」

参加した学生たちは、「熱い企業や仲間に刺激を受け、自分の成長を実感できた」「様々な業種の人と出会い、就活とは関係のない話も含めて視野が広がった」「雰囲気がよく、企業のことだけでなく、大学時代にすべきことや就職後の働き方についても学べた」と口をそろえる。

一方で、企業側からもポジティブな反応が寄せられている。「学生と過ごす貴重な時間を通じて、自身を見つめ直すきっかけになった」「和やかな雰囲気の中で学生の悩みに触れ、自社の課題もあらためて浮き彫りになった」「他の企業の話も聞けて、大きな学びがあった」と、学生との交流から得られる気づきの多さが強調された。

単なるマッチングではない、「共育」の仕組み

OFAのプログラムは、いわゆる採用イベントとは一線を画す。地方との接点を求める学生にとっては、自分自身の可能性を試す「入り口」となっており、企業は”メンター”として寄り添いながら、学生の視野拡大や将来像の構築を支援する。このプロセスは、短期的な就職斡旋ではなく、長期的なキャリア支援と地域定着の仕組みを目指すものだ。

実践性と連携を深める第2期プログラム

第2期では、より実践的な内容と企業間連携の深化に重きを置いた構成となる。具体的には、就活スケジュールに合わせた「デアイバ」と称する企業と学生とのマッチングが実施されるほか、20名の選抜された学生が3日間の合宿形式でリアルな課題解決に取り組む「インターンマッチ」もより強化される。

また、プログラム参加者の成長を可視化するため、定期的な面談が行われ、学生のモチベーション維持を図る設計となっている。企業同士が組織課題を共有し議論する「企業交流会」も定期的に設けられ、地域全体で人材育成や組織活性を進める姿勢がより鮮明になる。

さらに、「ワクサイ」と題した初のプログラムを追加し、企業の魅力を外部に発信するコンテストと学生と企業参加の運動会も用意され、参加者全員を巻き込んだイベントにも寄与することが期待されている。

北九州から、全国のロールモデルへ

この取り組みは、北九州市内にとどまらず、将来的には全国の地域課題に応用可能なモデルとしての展開が構想されている。行政・企業・教育機関・学生が一体となって進めるOFAは、「人が育ち、地域が続く」未来の第一歩を示している。

地域課題の解決に挑むこの共創モデルは、単なる地方創生の枠を超え、人材育成・地域活性・企業改革という複合的な領域にわたる社会実験でもある。

「共に育つ社会」を目指して

OFAは、若者の地域離れ、中小企業の人材難、育成リソースの不足といった課題に対し、地域・企業・若者がともに学び、ともに育つ”共育”の場として機能している。第2期では実践型プログラムの充実と企業間連携の深化を軸に、さらに一歩進んだ取り組みが進められている。

このプロジェクトが、北九州市を起点に日本各地の地方都市へと広がっていくことが期待されている。地域の未来を築くパートナーとして、企業・団体・教育機関・個人の参画を呼びかけている。