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インプラント詐欺の実態 悪徳歯科医・高橋仁一が患者366人から19億円詐取した手口

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高額治療で「健康な歯」まで抜かれた患者たちの悲痛な声 制度の盲点と加害者逃亡ルートを検証

「快適な未来」「後悔のない選択」それは、高橋仁一氏が運営していた「高橋デンタルオフィス(TDO)」のホームページに掲げられていたキャッチコピーだった。しかし、現実は正反対だった。患者の健康な歯を抜き、根拠のない説明で高額なインプラント治療を契約させ、治療の途中で医院は閉鎖。被害総額は19億円にのぼり、元院長の高橋氏は自己破産を申請して姿をくらました。

6月19日、このドクズ歯科医が逮捕された、

 

 

自費診療の「制度の穴」が詐欺を生む土壌に

今回の事件が社会的に深刻なのは、こうした“詐欺的歯科医療”が、制度上は違法性の判断が極めて難しい領域で行われている点にある。

歯科治療のうち、保険が適用されないインプラントやセラミック治療などは、医師の裁量で価格設定が可能だ。料金表の掲示義務や第三者の審査もなく、「患者に説明した」とさえ言えば高額な費用でも正当化できてしまう。

さらに、日本にはインプラント治療に関する厳格なガイドラインが存在せず、抜歯の判断や埋入の本数、素材の選択も医師の自由裁量に委ねられている。そこにつけこみ、「全部抜かなければ意味がない」「チタンは発がん性がある」といった事実無根の説明で患者を追い詰めて契約に導く構図が可能になってしまっている。

 

医師の言葉にすがる患者心理

インプラント治療は、見た目や生活の質(QOL)に直結するため、多くの患者は“元の状態に戻りたい”という不安や焦りを抱えている。特に歯を失った直後は心理的に動揺しており、冷静な判断が難しくなる。

今回、被害者となった50代男性も、「高額だが一生モノの治療なら」と自らを納得させようとし、セカンドオピニオンも取らず契約書にサインしてしまったという。実際、こうした心理状態を利用し、「今決めなければ値上げになる」「今だけキャンペーン」などの煽り文句は詐欺常套句として知られている。

医療現場では、こうした“医師の言葉に逆らってはいけない”という信頼関係の逆手を取る詐欺が、歯科に限らず潜在的に存在している。

 

“破産→勤務再開”という加害者の逃げ切り構造

2024年7月8日、TDOの元患者を含む複数の被害者に、「破産管財人就任のご連絡」という通知が届いた。そこには、〈高橋仁一氏は366名の債権者に対し、約19億円の負債を抱え支払不能となり、千葉地裁で破産手続開始決定が下された〉と記されていた。

だが、それがすべての終わりではなかった。

7月15日、高橋氏は東京都内の別の歯科医院で勤務している姿を記者が確認。診療を終えて出てきたところを直撃したが、名乗った瞬間に表情を変え、無言のまま早足で歩き出し、商業施設のトイレに逃げ込むという行動に出た。

これまでに数千万円単位の被害が報告されているにもかかわらず、医師免許は剥奪されず、名前を変えて他の歯科医院で勤務し続けることが可能なのが現実だ。

「自己破産→雇用再開」というサイクルは、制度の抜け穴を逆手に取った“合法的逃げ得ルート”とも言える。

 

デジタル時代に巧妙化する“歯科詐欺の顔”

TDOのホームページには、美しい院内写真と丁寧な説明が掲載され、口コミサイトでも高評価が並んでいた。一見すると信頼できそうな印象を受けるが、実際は「サクラ口コミ」や「クチコミ削除」などの操作が疑われる状況だった。

現在ではGoogle Map、EPARK、エキテン、Yahoo!ロコなどでクリニック評価を見るのが一般的だが、事業者側が不都合な口コミを削除申請できる仕様になっており、ユーザーにとって本当のリスク情報は見えづらくなっている。

“口コミ社会”と呼ばれる時代にあっても、信じた情報がすでに加工済みの「演出」だったという可能性は排除できない。今回のように、ネットの印象だけで選んだ歯科医院が地獄の入り口だったというケースは、決して他人事ではない。

 

すぐインプラントと言われたら疑うべき5つのサイン

被害を未然に防ぐため、以下のような“レッドフラッグ”を覚えておきたい。

  1. 初診で「全部抜かなきゃ意味がない」と言われた
  2. セカンドオピニオンを勧めず即決を迫られる
  3. 「今日中に決めれば安くなる」と即日契約を促す
  4. 治療計画が大きすぎる(10本以上の同時インプラントなど)
  5. チタンやジルコニアについて極端なメリット・デメリットを強調される

特に、「インプラントは一生モノ」という説明に惑わされて契約を急ぐケースが後を絶たない。インプラントは優れた治療法ではあるが、万能ではない。信頼できる歯科医は、他の選択肢や長期的な影響、価格の妥当性についても丁寧に説明してくれるはずだ。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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