愛媛県名門企業・有名企業一覧売上ランキング〈2025年版解説〉

南予から東予まで、造船・機械・紙・食品・金融が複層的に併存する愛媛。一次資料（決算短信・有価証券報告書・官報公告等）だけを突合し、売上（銀行は経常収益）順に並べた最新ランキングだ。

20 位　田窪工業所〈今治市〉　売上 158 億円〈2024/3〉

名門ポイント：スチール物置専業。本社・西条工場と国内11営業所体制。設備紹介に示される夜間無人運転可能なパンチコイルラインやロボット塗装ラインへの投資で省人化と多品種少量生産を可能とし、自社ブランド「タクボ物置」で屋外収納を全国展開している。

19 位　マルトモ〈伊予市〉　売上 252 億円（連結）〈2025/3〉

名門ポイント：1918年創業の削り節老舗。愛媛県5工場から全国へ供給し、ペット用『減塩かつおだいすき』は日経POSセレクション売上No.1を獲得。日本食糧新聞2024年11月号によると高付加価値『プレ節』効果で削り節上期売上は前年比8％増と伸長、上海子会社を軸に海外販路も開拓し多角化で収益基盤を固める。

18 位　BEMAC〈今治市〉　売上 330 億円〈2024/3〉

名門ポイント： 5千総トン超建造船で主配電盤シェア50％超を誇る。また東南アジアを中心としたEV三輪「E-Trikes」開発にも取り組み量産開始で4000台以上が活躍。DXサービス「Sailing DX」、海外6拠点で市場拡大を狙う。

17 位　伊予鉄グループ〈松山市〉　営業収益 337 億円（連結）〈2024/3〉

名門ポイント： 1887年創業の路面電車を核に、鉄軌道・バス・百貨店・不動産を束ねる地域コングロマリット。鉄軌道旅客収入は2.6％伸長。2028年完成予定の松山市駅ZEB Ready複合ビルで非運輸事業を拡充し、脱炭素と街づくりを進める。完全週休3日制で人材確保にも挑む。AI運行管理導入で効率化。

16 位　住友重機械マリンエンジニアリング〈新居浜市〉　売上 347 億円〈2024/12〉

名門ポイント：住友重機械工業100％子会社。横須賀造船所と愛媛・西条工場の二拠点体制でVLCC船殻技術を転用し洋上風力基礎構造物を量産準備。10月にはオリックス保有ばら積み船で風力を活用した省エネ運航の実証を開始し脱炭素輸送に挑む。そしてNEDO採択の浮体式洋上風力研究を通じ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。

15 位　リブドゥコーポレーション〈四国中央市〉　売上 565 億円〈2024/3〉

名門ポイント：大人用紙おむつ「リフレ」で病院・介護施設向けシェア上位。四国中央・徳島・栃木の7工場でオール電化ラインを導入し、三野工場はCO₂排出を前年比15％削減。医療用不織布と合わせ150超の製品を展開する。

14 位　四国ガス〈今治市〉　売上 595 億円（連結）〈2024/3〉

名門ポイント： 1912年創業の地域ガス会社。LNG価格下落でも減収幅を抑え、家庭向け電力取次「ガポタでんき」とのセット提案を拡大。大阪ガスから調達したカーボンニュートラルLNGを自社設備で消費し、脱炭素を推進。都市ガス自由化下で顧客接点を強化し、地域密着営業で需要獲得を狙う。

13 位　愛媛銀行〈松山市〉　経常収益 651 億円（連結）〈2024/3〉

名門ポイント： 1915年創業の第二地銀。2024年3月期経常収益651億円、預金2.65兆円・貸出1.94兆円。法人支援のM&A・DXマッチングを推進し、四国4県18金融機関と20億円規模「しこく活性化ファンド」に出資。HandyBank支店などデジタル強化で若年層開拓、連結自己資本比率8.15％と健全。2025年3月期も預貸拡大と外貨運用で経常収益増を見込む計画。

12 位　レデイ薬局〈松山市〉　売上 871 億円〈2024/5〉

名門ポイント：ツルハHD傘下で中四国を地盤に252店を展開する地域ドラッグチェーン。6月2日開設香西店で調剤併設72店体制となり、処方箋対応強化が利益を押上げる。「くらしリズム」拡販が成長ドライバーで売上高は過去最高を更新。

11 位　アスティス〈松山市〉　売上 939 億円〈2024/3〉

名門ポイント：スズケン100％子会社で四国4県医薬品卸シェア首位。病院・診療所向けMS活動で地域密着営業を展開し、「コラボポータル」で医療・介護における課題や悩みの解決に厳選したサービスを提供している。

10 位新来島どっく〈今治市〉　1,106億円〈2024/3〉

1902年創業の民営最大級造船所。24年3月期はバルク船28隻完工。日本初の大型LNG燃料船を先行受注。・LNGタンク生産・DX化による生産工程の最適化を図る。

9 位　四国薬業〈松山市〉　売上 1,396 億円（連結）〈2024/3〉

名門ポイント： 2004年によんやくと中澤氏家薬業の共同株式移転で誕生した医薬品卸持株会社。顧客は病院・診療所約4,000軒、薬局約950軒。四国全域を市場に両社が医療用医薬品を一括調達・供給しシェア首位を維持。本社物流センターに96時間稼働の非常発電機を備え、全7拠点へ災害対策車両を配備し停電下でも医薬品供給を継続できる態勢を構築。止まらない物流で命をつなぐ。

8 位　三浦工業〈松山市〉　売上 1,596 億円（連結）〈2024/3〉

名門ポイント：貫流ボイラで世界首位級。海外機器・保守計408億円と伸長。北条工場では四国電力と水素燃料ボイラを通年稼働実証。CO₂回収ボイラ「CCUS」を展示会で公開し、省エネ・脱炭素機器を拡充。オンライン監視台数は国内外7万台を超える。

7 位　井関農機〈松山市〉　売上 1,684 億円（連結）〈2024/12〉

名門ポイント：農機大手。海外売上の553億円のうち欧州向けの景観整備製品が385億円と7割を占め伸長。海外比率は33％。北米トラクタOEMも好調。24年6月に無人自動運転トラクタ「TJW1233-R」を発売しスマート農業市場を深耕。プロジェクトZで組立拠点を松山に集約し収益改善を急ぎ、目標達成を目指す。

6 位　いよぎんホールディングス〈松山市〉　経常収益 1,927 億円（連結）〈2024/3〉

名門ポイント： 1927億円の経常収益（前期比11％増）と経常利益585億円で過去最高益※を計上（決算短信）。預金6.9兆円・貸出5.6兆円へ拡大し地域金融を下支え。24年2月には事業承継・成長支援ファンド２号（総額30億円）を設立してM&A・MBOを伴走支援。

5 位　PHCホールディングス〈東温市〉　売上 3,615 億円（連結）〈2025/3〉

名門ポイント：東温市松山地区が診断薬・バイオメディカのマザー工場。Eversense長期CGM軸に糖尿病マネジメントを強化、医療IT連携も拡張し、世界展開を加速。

4 位　今治造船〈今治市〉　売上 4,431 億円〈2024/3〉

名門ポイント： 2023年の新造船竣工量シェアが国内約35％・世界約5.8％で首位級を維持し、民営造船最大手とされる。2024年3月期は社長会見で売上4,431億円と11年ぶりの増収を報告。世界最大級の24,000TEUTEU型コンテナ船やLNG燃料自動車船など環境対応船を量産し、2025年2月には累計建造3,000隻を達成した。

3 位　大王製紙〈四国中央市〉　売上 6,689 億円（連結）〈2025/3〉

名門ポイント：パルプ一貫体制を武器に「エリエール」で国内衛生紙2位。三島工場石灰キルンをバイオガス混焼化し年間CO₂3.4万t削減を宣言。ベトナム紙おむつや豪州衛生紙M&Aで海外売上比率伸長。さらに地域雇用も強化する方針。国内外連携で事業拡大。

2 位　フジ〈松山市〉　売上 7,782 億円（連結）〈2025/2〉

名門ポイント：2024年3月、マックスバリュ西日本等と合併し新生フジが発足。中国・四国・兵庫10県で「フジ」「マルナカ」など514店を運営。リンクアンドコミュニケーション共同のAI健康アプリや電子レシート活用でDX販促を推進し地域シェア向上を図る。

1 位　ユニ・チャーム〈四国中央市〉　売上 9,889 億円（連結）〈2024/12〉

名門ポイント：ベビー・生理・介護用品で世界三強。2024年12月期売上9,889億円で過去最高を更新。海外売上比率66.4％とグローバル化が加速。北米好調でペットケア売上6.6％増が成長を牽引。大人用紙パンツ「ライフリー」の再資源化を実装し、環境目標2030でCO₂排出量“０“を掲げる。

総評

愛媛県の産業構造は「紙・衛生用品＋造船＋機械・ボイラ＋アルミ・化学＋地域金融」が五本柱。紙から派生した衛生・介護用品が国内外市場を席巻し、造船はLNG・CO₂船で脱炭素対応に活路を見いだす。機械・医療機器は海外展開で円安を追い風に伸長。地方銀行はDX支援と資産運用コンサルで手数料依存を高める――2025年度もカーボンニュートラル投資と医療・介護関連の需要取り込みが各社共通テーマだ。