
ダウンタウンの浜田雅功氏が体調不良のため休養に入った。芸能界のトップランナーとして走り続けてきた彼の休養は、単なる「疲れ」ではなく、近年注目される「男性更年期」が背景にある可能性が指摘されている。見逃されがちな男性更年期の症状と、放置することで起こりうるリスクについて詳しく解説する。
男性更年期とは?
男性更年期の定義と原因
男性更年期とは、加齢に伴い男性ホルモン「テストステロン」の分泌が低下することで起こる症状の総称である。医学的には「LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism)」と呼ばれ、40代以降の男性に多くみられる。
男性の場合、女性と異なり「閉経」のような明確な節目がないため、症状が緩やかに進行し、気づかないうちに悪化してしまうことが少なくない。特にストレスや不規則な生活が、テストステロンの減少を加速させる要因となる。
女性更年期との違い
女性の更年期は閉経前後に急激にエストロゲンが減少し、症状が短期間で強く現れることが多い。それに対して男性は、テストステロンの減少が緩やかに進むため、長期間にわたってじわじわと不調が表れる。これが「気づかないうちに進行していた」といったケースが多い理由だ。
男性更年期の主な症状とサイン
男性更年期の症状は大きく3つに分類できる。以下のような症状が重なることで、日常生活や仕事に大きな支障をきたすことがある。
◾️身体的な症状
・倦怠感
・筋力の低下
・睡眠障害(不眠、眠りの浅さ)
・ほてりや多汗
・動悸やめまい
◾️精神的な症状
・イライラや怒りっぽさ
・気分の落ち込みや不安感
・集中力や記憶力の低下
・無気力感
◾️性機能関連の症状
・性欲減退
・勃起不全(ED)
・頻尿
放置のリスクと経済的損失
男性更年期の症状を放置すると、以下のリスクが高まる。
◾️うつ症状や不眠の悪化
男性更年期の症状が悪化すると、抑うつ状態が慢性化しやすくなる。これにより、仕事や家庭内でのコミュニケーションが困難になり、社会的な孤立を引き起こす可能性がある。さらに、抑うつや不眠が続くことで、日常生活の質が著しく低下し、活動意欲の喪失やひきこもりに至るケースもある。
◾️生活習慣病のリスク増加
テストステロンの低下は、体内の代謝機能にも影響を与える。これにより、血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病や高血圧、脂質異常症の発症リスクが高まる。これらの生活習慣病は心筋梗塞や脳梗塞など重篤な疾患につながる恐れがあるため、早期の対策が不可欠だ。
◾️経済的損失
経済産業省の試算によると、男性更年期障害が引き起こす欠勤や業務効率の低下による経済的損失は、年間約1兆2000億円にのぼる。これは、働き盛りの40代~60代の生産性低下が大きく影響している。企業にとっては、従業員の健康管理が経営リスクの軽減にも直結する重要な課題となっている。
浜田雅功氏のケースが示す「ストレス」との関係
浜田氏の休養の背景には、相方・松本人志の活動休止という大きな精神的負担、芸能界という特殊な環境における過密なスケジュールや少ない休養時間も、心身への負担を増大させた可能性が指摘されている。また長年にわたりMCとしての重責を担い続けたことも、蓄積された疲労の原因と一つと考えられ、これらの要因が複合的に絡み合い、浜田氏の体調に影響を及ぼした可能性がある。なお、浜田氏の休養の要因に関しては断定できず、あくまで予測の域を出ないが、無理を続けることで男性更年期の症状が悪化するケースは珍しくない。
企業による男性更年期への対策
男性更年期への理解が進む中、企業でも従業員の健康を守るための取り組みが広がっている。例えば、ホンダは男性更年期の啓発活動に力を入れ、社内向けにオンラインセミナーや医療機関との連携サービスを提供している。これにより、男性更年期に関する正しい知識が浸透し、早期の受診につながった事例も報告されている。野村ホールディングスでは、男性更年期に対応した特別休暇制度「マイケア休暇」を導入し、男女問わず体調不良時の休養をサポートしている。こうした取り組みは、従業員の健康管理と生産性向上の両面で成果を上げており、今後さらに広がりが期待されている。
男性更年期の対策と予防法
医師による診断と治療
- ホルモン補充療法(HRT):テストステロンを補う治療法で、症状の改善が期待できる。
- 食生活の見直し:テストステロンの分泌を促す栄養素(亜鉛、ビタミンD、良質なタンパク質)の摂取が推奨される。
- 適度な運動:筋トレやストレッチが有効。過度な運動は逆効果となるため注意が必要。
- 趣味やリラックスの時間を確保する:心身に高負荷なストレスが発生する環境から一時的にでも離れ、ストレスを軽減することが重要
セルフチェックの活用
男性更年期の早期発見には、AMS(Aging Males’ Symptoms)質問票の活用が効果的だ。自分の体調に不安がある場合は、泌尿器科や男性更年期外来など専門の医療機関への相談が勧められる。
浜田雅功氏の休養が投げかけるメッセージ
今回の浜田雅功の休養は、働き盛りの40代〜60代にとって「無理をせず休む」重要性を再認識させる出来事となった。日本では「休む=怠け」と捉えられがちだが、心身の健康を守るために積極的な休養が必要な場合もある。
男性更年期は決して珍しい症状ではなく、早めの対策と適切な治療が回復の鍵となる。浜田の事例を機に、自分や身近な人の不調に気を配り、必要であれば医師の診断を受けることが大切だ。
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