
秋田県と聞くと、豊かな自然と農作物、伝統文化が思い浮かぶ方が多いだろう。「あきたこまち」「比内地鶏」「ハタハタ」など全国的にも知られる名産品をはじめ、独自の気候風土が育んだ第一次産業が目立つ一方、近年ではIT、建設、非鉄金属製錬、金融など多彩な分野で存在感を示す企業が県内に根付いている。大手就職情報サイトや帝国データバンク、公的機関の情報をもとに、売上高の大きい秋田県本社企業をランキング形式でまとめた。
ここで紹介するランキングは、2021年頃の公表データや、企業による最新の決算・開示情報、推計値を組み合わせて作成したものであり、すべての企業を網羅するものではない。また、同じ企業でも年度や発表元によって売上高が異なるケースもあるため、目安としてご覧いただきたい。なお、掲載順位は売上高をベースに大きい順とし、「名門」と呼ばれる歴史や実績、地域貢献などの要素にも注目している。
第19位:株式会社自然科学調査事務所(本社:大仙市)
- 売上高:7億6,772万円(2021年時点)
- 業種:地質・環境調査、建設コンサルティング
- 設立:1979年(昭和54年)
- 社員数:56名
- 名門ポイント:地質・地下水調査などを行い、秋田県の自然環境や都市インフラを支えてきた。地域社会に不可欠な企業として、環境保護と持続可能な開発の視点からも重要な役割を果たしている。
第18位:Takamitu株式会社(本社:大仙市)
- 売上高:7億7,811万円(2021年時点)
- 業種:建設、測量、産業廃棄物リサイクル
- 設立:1980年(昭和55年)
- 名門ポイント:建築解体業から測量、産業廃棄物のリサイクルまで幅広く事業展開し、循環型社会の実現を目指している。
第17位:柴田工事調査株式会社(本社:湯沢市)
- 売上高:7億8,572万円(2021年時点)
- 業種:建設コンサルタント、測量
- 設立:1968年(昭和43年)
- 名門ポイント:開発・防災・環境保全などの調査・設計業務を中心に官公庁や民間企業のコンサルティングを担う。
第16位:株式会社シビル設計(本社:由利本荘市)
- 売上高:10億7,667万円(2021年時点)
- 業種:測量・設計・土木コンサル
- 設立:1975年(昭和50年)
- 社員数:148名
- 名門ポイント:UAV(ドローン)技術を積極活用し、インフラ整備や防災分野で高い技術力を誇る。
第15位:株式会社ウヌマ地域総研(本社:秋田市)
- 売上高:13億3,646万円(2021年時点)
- 業種:建設コンサル(都市計画・環境・河川・ダムなど)
- 設立:1978年(昭和53年)
- 名門ポイント:秋田の都市計画や防災事業を支える老舗の建設コンサル企業。
第14位:秋田県土地改良事業団体連合会(本社:秋田市)
- 売上高:21億95万円(2021年時点)
- 業種:土地改良事業(農業インフラ整備)
- 設立:1961年(昭和36年)
- 名門ポイント:「水土里ネット秋田」として農業基盤を支え続け、農村振興の重要な役割を果たしている。
第13位:奥山ボーリング株式会社(本社:横手市)
- 売上高:22億7,482万円(2021年時点)
- 業種:地質・土質調査、地すべり対策工事
- 設立:1963年(昭和38年)
- 名門ポイント:地質調査・解析を中心に防災やインフラ整備に貢献。
第12位:インスペック株式会社(本社:仙北市)
- 売上高:23億4,820万円(2021年時点)
- 業種:半導体パッケージ基板などの外観検査装置メーカー
- 設立:1984年(昭和59年)
- 上場の有無:上場(東証グロース)
- 名門ポイント:秋田発のハイテク企業として、グローバル展開を進める。
第11位:伊藤建設工業株式会社(本社:横手市)
- 売上高:39億2,123万円(2021年時点)
- 業種:土木・建築工事施工・管理
- 設立:1950年(昭和25年)
- 名門ポイント:インフラ整備の実績豊富な地元ゼネコン。
第10位:株式会社山二(本社:秋田市)
- 売上高:63億円(2024年12月実績)
- 業種:総合商社(エネルギー・住宅資材・生活関連)
- 設立:1954年(昭和29年)
- 名門ポイント:県民生活を支える商社として長年にわたり安定した事業展開。昭和期に設立された地場系の老舗総合商社。石油・ガス事業から住宅設備、食品・日用品まで幅広い事業領域をカバーしており、地域住民の暮らしを包括的に支えるライフサポート企業。長きにわたる堅実経営と地域密着型のサービスで知名度が高い。
第9位:秋田県食肉流通公社(本社:秋田市)
- 売上高:91億3,400万円(2021年時点)
- 業種:食肉加工・流通
- 設立:1973年(昭和48年)
- 名門ポイント:秋田県内の畜産業と食品流通を支える中核企業。厳格な衛生管理のもと、「秋田牛」などのブランド肉を全国へ供給しており、地元の食文化の発展に貢献。
第8位:株式会社東北フジクラ(本社:秋田市)
- 売上高:119億3,500万円(2021年時点)
- 業種:電子機器部品製造
- 設立:1992年(平成4年)
- 名門ポイント:フジクラグループの一員として、フレキシブルプリント配線板や半導体圧力センサを開発・製造。県内製造業の中核を担う。
第7位:小坂製錬株式会社(本社:鹿角郡小坂町)
- 売上高:134億2300万円(2020年)
- 業種:非鉄金属製錬
- 設立:1950年(昭和25年)
- 名門ポイント:廃家電や電子機器から20種類以上の非鉄金属を回収・精錬するリサイクル技術を誇る。秋田の鉱山技術を継承するエコ企業としても評価が高い。
第6位:株式会社北都銀行(本社:秋田市)
- 売上高(経常収益):234億6,800万円(2024年5月時点)
- 業種:地方銀行
- 設立:1941年(昭和16年)
- 名門ポイント:秋田銀行と並ぶ県内の主要銀行。金融商品の仲介手数料の増加などで、近年3期連続の増収を達成。地域密着型の経営戦略を展開し、中小企業の金融支援にも力を入れる。
第5位:株式会社タカヤナギ(本社:大仙市)
- 売上高:276億円(2024年3月期)
- 業種:スーパーマーケット運営
- 設立:1927年(昭和2年)
- 社員数:1,650名(2024年3月現在)
- 名門ポイント:秋田県内に広く展開する地元密着型スーパー。生鮮食品の品質にこだわり、地産地消を推進。
第4位:秋田製錬株式会社(本社:秋田市)
- 売上高:288億2,100万円(2024年3月期)
- 業種:非鉄金属製錬(亜鉛生産)
- 設立:1953年(昭和28年)
- 名門ポイント:日本の亜鉛使用量の約3分の1を生産。環境配慮型の製錬技術を開発し、持続可能なものづくりを実現。
第3位:株式会社秋田銀行(本社:秋田市)
- 売上高(経常収益):468億61百万円(2023年3月期)
- 業種:地方銀行
- 設立:1879年(明治12年)
- 上場の有無:上場(東証プライム・証券コード8333)
- 社員数:1,350名
- 名門ポイント:秋田県最大の金融機関として地域経済を支える。企業向け融資や地域振興策を積極的に展開。明治期に創業し、秋田県最大の地方銀行として地域金融の中核を担う。個人向け金融サービスや企業向け融資のほか、地方創生に向けたプロジェクトも積極展開。
第2位:株式会社プレステージ・インターナショナル(本社:秋田市)
- 売上高:約587億円(2024年3月期)
- 業種:BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
- 設立:1986年(昭和61年)
- 上場の有無:上場(東証プライム・証券コード4290)
- 社員数:連結:4,757人 (2023年3月31日時点)
- 名門ポイント:全国規模で展開するBPOサービスのリーディングカンパニー。秋田に本社を構え、地域雇用を創出しながら国内外の企業と取引を行う。
第1位:イオン東北株式会社(本社:秋田市)
- 売上高:1,032億6,500万円(2021年時点)
- 業種:小売(食品・日用品)
- 設立:1972年(昭和47年)
- 名門ポイント:東北6県で展開するイオングループの中核企業。マックスバリュやザ・ビッグなどの店舗網を持ち、地域の食文化や生活を支えている。
総評~名門企業がつなぐ地域と未来
秋田県は少子高齢化や人口減少が深刻化する一方、古くからの「名門企業」が地域産業を下支えしてきた歴史がある。金融機関・製錬・建設・商社・食品流通・メディアなど多彩な業種がバランスよく根付き、県外・海外と連携しながら変化に対応している。特に、創業から半世紀~一世紀近くを迎える老舗企業の多くは、堅実な地盤と先進技術の融合を図り、県民の生活や産業の向上に寄与してきた点が「名門」たるゆえんだろう。
また、最新のデジタル技術やグローバル市場に挑む新興企業も台頭しており、BPOや精密検査装置といった分野で全国的な評価を得ている。これらの企業が、秋田県特有の課題である高齢化や産業構造の転換をどう乗り越え、新しいビジネスチャンスを作り出すかが今後の焦点になる。歴史と伝統を守りながら、時代に即したイノベーションに踏み出す企業が増えれば、秋田の将来にさらなる明るい展望が開けるに違いない。
本ランキングは、各種情報をもとに独自に再編した一例である。実際の業績や経営状況は年度や市況により大きく変動するため、最終的な判断には企業の公式IRや最新の決算情報を参照していただきたい。秋田県内で転職や企業研究を考えている方にとって、ここに挙げた企業の存在は一つの目安となるだろう。地元企業が果たしてきた歴史的役割と、これからの進化にぜひ注目してほしい。