
1966年の開業以来、日本を代表する温泉リゾートとして親しまれてきた「スパリゾートハワイアンズ」が、新たなステージへと進もうとしている。2026年の60周年を前に、100億円規模の大規模改修が発表された。背景には、施設の老朽化や経営の課題がある。さらに、運営会社である常磐興産は米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」の傘下となり、新たな経営体制のもとで再生を図ることになった。ハワイアンズの過去、現在、そして未来を紐解きながら、大規模改修の狙いと今後の展望を探る。
ハワイアンズ誕生の歴史:炭鉱から観光へ
スパリゾートハワイアンズの前身である「常磐ハワイアンセンター」は、1966年に誕生した。福島県いわき市の主要産業だった炭鉱が衰退し、地域の雇用を守るために生まれた施設だ。当時、日本人が憧れる海外旅行先ナンバー1だった「ハワイ」をテーマに、温泉とエンターテインメントを融合させた画期的なリゾート施設として注目を集めた。
その後、1990年に「スパリゾートハワイアンズ」と改称し、温泉リゾートとしての特色を強化。2006年には映画『フラガール』が公開され、全国的な知名度を獲得するなど、一時代を築いた。
買収の背景:施設の老朽化と経営課題
長年にわたり多くの観光客を迎えてきたハワイアンズだが、近年では施設の老朽化や財務問題、観光市場の変化といった課題に直面していた。特に施設の老朽化は深刻であり、ウォーターパークをはじめとする主要設備の改修が急務となっていた。しかし、大規模な投資を行う資金的な余裕は限られており、抜本的な解決策が求められていた。
さらに、ハワイアンズ運営会社の常磐興産は2024年3月時点での有利子負債は約300億円にのぼり、財務の立て直しも避けられない状況だった。コロナ禍からの回復に成功し、2023年度の観光部門の営業利益は過去最高を記録したものの、長期的な成長を見据えると、より安定した経営基盤を確立する必要があった。
また、ハワイアンズが主要ターゲットとしてきたのは首都圏のファミリー層だったが、少子高齢化の影響でこの市場の縮小が避けられない状況にある。今後の集客戦略を抜本的に見直す必要があったのだ。
こうした経営課題に対応するため、2024年、米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」が常磐興産の買収を発表。2025年3月には完全子会社化され、マイステイズ・ホテル・マネジメントがハワイアンズの運営を受託することが決まった。フォートレス側は「歴史ある施設を次世代へとつなげることが重要」とし、資本力と運営ノウハウを活用してハワイアンズを再生する方針を示している。
100億円規模の大改修 狙いは「日本人の心のハワイ」
今回の改修の中心となるのは、ハワイアンズの象徴とも言える「ウォーターパーク」。ダンシングチーム「フラガール」のショーが行われるステージを開業当初の雰囲気に近づけ、より開放的なデザインに変更する予定とのこと。また、フードコートを昔のハワイのマーケットのような雰囲気に改装し、訪れる人々がハワイの文化をより身近に感じられるようにするという。
改修内容:新たな温浴施設やホテルの活用
改修は「ウォーターパーク」のリニューアルにとどまらず、ハワイアンズ全体の魅力向上を目的としている。
① 温浴施設の新設
ウォーターパーク内に新たな温浴関連施設を設置し、温泉リゾートとしての魅力を高める。ハワイアンズは元々、炭鉱跡から湧き出た温泉を活用した施設であり、その強みを最大限に生かす狙いがある。
② 既存エリアの改装
「スプリングパーク」や「スパガーデンパレオ」などのエリアも、ハワイをテーマに改修される。
より一体感のあるデザインにすることで、訪問者がリゾート全体の雰囲気を楽しめるようになる。
③ マイステイズのネットワークを活用した集客戦略
ハワイアンズの運営を受託しているマイステイズ・ホテル・マネジメントは、日本全国に177棟のホテルを展開しており、その会員組織を活用して新規客の呼び込みを強化する。また、従来通りファミリー層の集客を軸としながら、平日の高齢者層の利用促進にも力を入れるという。
今後の展望:60周年を迎えるハワイアンズの未来
スパリゾートハワイアンズは、かつて炭鉱の町から観光の町へと変貌を遂げ、日本人の「憧れのハワイ」を体現する施設として愛されてきた。しかし、施設の老朽化や経営課題に直面し、買収という大きな決断を下すこととなった。
フォートレス・インベストメント・グループの傘下となることで、100億円規模の改修が実現し、ハワイアンズは新たなステージへと進もうとしている。60周年を迎える2026年、ハワイアンズはどのような姿に生まれ変わるのか。日本の温泉リゾートの歴史に、新たな1ページが刻まれようとしている。
【参照】常磐興産