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パナマ運河問題とは?トランプ大統領が取り戻すと発言する背景や影響を解説

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パマナ運河
pixabay

世界の貿易を支える大動脈、パナマ運河。しかし近年、その運営を巡り、国際社会で大きな議論が巻き起こっている。米国と中国の対立、パナマ政府の対応、そして運河の未来はどうなるのか。本記事では、その背景と今後の展望を詳しく解説する。

 

パナマ運河問題とは?重要性と最近の動向

パナマ運河は、太平洋と大西洋を結ぶ世界有数の海上交通の要衝である。1914年に開通して以来、世界貿易の流れを変えた重要なインフラだ。現在、年間約14,000隻の船舶が通航し、世界貿易の約5%がこの運河を経由している。そのため、運河の管理権や運営を巡る問題は国際政治にも大きな影響を与える。

近年、パナマ運河を巡る問題が国際的な注目を集めている。その背景には、通航料の高騰、米中の地政学的な対立、パナマ政府の外交政策が絡んでいる。特に、2025年に入ってから、トランプ前大統領が「パナマ運河の管理権を取り戻す」と発言し、米国の介入が現実味を帯びてきた。

本記事では、パナマ運河の歴史、米国と中国の対立、パナマ政府の立場、今後の展望について詳しく解説する。

パナマ運河の歴史:なぜ問題が起きるのか?

パナマ運河の歴史を理解することは、現在の問題を読み解く鍵となる。
以下の年表で、その変遷を整理する。

パナマ運河、主要な出来事の歴史年表

出来事
1903年アメリカがパナマの独立を支援し、運河建設権を獲得
1914年パナマ運河が開通、アメリカが運営開始
1977年米パ両国が「パナマ運河条約」に合意、返還を決定
1999年パナマ運河が正式にパナマ政府へ返還
2017年パナマが中国との外交関係を強化
2025年トランプ前大統領が「運河を取り戻す」と発言

米国が建設し、管理した時代(1903年~)

パナマ運河の建設は、当初フランスが試みたものの、熱帯病や財政難で頓挫。1903年にアメリカはコロンビアから独立したばかりのパナマと条約を締結し、アメリカ主導の元、建設を完了させた。1914年に開通すると、その後約85年間にわたり、アメリカは運河地帯をほぼ自国の領土のように扱い、軍を駐留させて運営を行った。

しかし、パナマ国内では「自国の領土にありながら、米国の支配下にある」という現状に対する不満が高まっていった。1964年には、パナマ人学生が米国の旗を降ろしパナマ国旗を掲げる抗議活動を行い、これが米国との緊張を一層高めることとなった。

パナマへの返還と「中立条約」(1977年~)

1977年、米国のジミー・カーター大統領とパナマのオマール・トリホス将軍の間で「パナマ運河条約」が締結された。この合意により、1999年末までに運河をパナマへ返還することが決まった。

同時に、「パナマ運河の永久中立を定める中立条約」が制定され、これによりパナマ運河は国際水路としての中立を維持することが定められた。これにより、米国は必要に応じて運河の安全を確保する権利を持つこととなった。

1999年12月31日、運河は正式にパナマ政府に返還され、現在は「パナマ運河庁(ACP)」が運営している。

パナマが中国との外交強化(2017年〜)

1999年にパナマが運河を管理するようになった後、同国は経済成長のための新たなパートナーを求め始めた。そして2017年、パナマ政府は台湾との外交関係を断絶し、中国との正式な国交を樹立した。

この決定により、中国はパナマでの影響力を急速に拡大。インフラ投資や貿易の増加を通じて、パナマの経済発展に貢献すると同時に、パナマ運河を利用する重要な国の一つとなった。さらに、中国企業はパナマ運河周辺の物流拠点や港湾施設の開発に関与し、一部のプロジェクトでは中国資本が大きな役割を果たしている。

この外交強化により、パナマは米中の間で難しいバランスを取る立場に立たされている。米国は中国の影響力拡大を懸念し、パナマ政府に対して警戒を強めている。特に、米国の政権が交代するたびに、パナマ運河を巡る政策も変化するため、パナマ政府は慎重な対応を迫られている。

トランプ前大統領の発言の背景:なぜ「取り戻す」と言うのか?

 

通航料の不公平感

トランプ大統領は「米国の船舶が不当に高い通航料を支払っている」と主張する。実際、米国はパナマ運河の最大の利用国であり、年間約6,000隻が通航する。2023年のデータによると、米国船舶の通航料は年間約30億ドルに達し、米国の一部政治家から「不公平」との声が上がっている。

中国の影響力への警戒

2017年、パナマは台湾との国交を断絶し、中国との関係を強化している。さらに、中国は「一帯一路」構想の一環として、パナマ運河周辺のインフラ開発に資金を投じている。これに対し、米国は「パナマ運河が中国の影響下にあるのではないか」と警戒を強めている。トランプ氏の「運河を取り戻す」発言は、この中国の影響力排除の意図があると考えられる。

パナマ政府の対応と立場

パマナ大統領の考え「運河の主権はパナマにある」

パナマのムリーノ大統領は「運河の主権はパナマにあり、米国の介入を許さない」と強調。パナマ政府は中国と米国の間でバランスを取る外交戦略をとっている。

パナマは、地政学的に重要な位置にあるため、歴代政権は外交関係に慎重な姿勢をとってきた。特に、運河を管理する立場として、米国と中国の双方に対して友好的な関係を維持しながらも、どちらか一方に偏ることを避ける政策を展開している。近年では、中国からの投資が増加し、一帯一路構想の一環としてインフラ整備が進められたが、一方で米国はこれを警戒し、パナマに対して圧力を強めている。

パナマ政府としては、経済成長のためには中国との関係を維持したいが、米国との関係悪化も避けたいというジレンマを抱えている。そのため、貿易や投資においては両国の利益を調整しながら、外交の舵取りを慎重に進める必要がある。

中国との「一帯一路」からの撤退検討

2025年2月、ムリーノ大統領は「中国との『一帯一路』覚書は更新しない」と発表。これは、米国の圧力を考慮した決定とみられている。

中国政府はこの決定に対し、「パナマとの経済協力は相互利益に基づくものであり、地域の発展に寄与するものである」とコメントを発表した(新華社通信)。中国外務省の報道官も、「パナマとの関係は長期的な視点で維持されるべきであり、一帯一路の枠組みはパナマの経済発展にとって有益である」と述べた。

一帯一路の一環として、中国はパナマ運河の周辺地域にインフラ投資を行っており、港湾施設や物流拠点の整備にも関与している。そのため、今回の覚書の更新停止は、中国にとって大きな戦略的打撃となる可能性がある。今後、中国がどのようにパナマとの関係を再構築し、影響力を維持するのかが注目される。

パナマ運河問題の今後の展開と影響

 

米国の今後の動向

米国は、パナマ運河に対する影響力を維持するため、今後さらなる外交圧力や経済制裁を強める可能性がある。また、1977年の「中立条約」を根拠に、軍事的な措置を取る可能性も否定できない。特に、パナマ政府が中国との関係を強化し続ける場合、米国は新たな対応を求められるだろう。

中国の対応

中国は、パナマとの経済的な結びつきをさらに強化する方針を維持している。パナマへの投資を拡大し、港湾施設やインフラ整備を進めることで、影響力を確保しようとしている。また、万が一パナマ運河での影響力が弱まる場合には、代替ルートとして北極海航路の開発など、新たな物流ルートの確保に注力する可能性がある。

パナマの経済と安定

パナマにとって、運河は国家収入の約14%を占める重要な財源である。そのため、運河の管理権や通航料の問題は、国内経済の安定に大きな影響を及ぼす。もしも米中対立が激化し、運河の利用に関する新たな制約が設けられれば、パナマの経済に深刻な影響を与える可能性がある。今後の情勢次第では、パナマ政府が運河の管理方針を再調整する必要に迫られるかもしれない。

まとめ

パナマ運河を巡る問題は、歴史的な背景と現在の地政学的な対立が絡み合っている。
今後、米国と中国の動向が注視されるが、パナマ政府がどのようにバランスを取るかが鍵となるだろう。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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