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「子どもを産んだ女性にはもれなく賞金100万円をプレゼントしてほしい」――ユーチューバーのあやなん氏が3月2日、自身のX(旧ツイッター)で発信したこの提案は、大きな反響を呼んだ。彼女は「子育てはとても大変であり、子どもは日本の未来を担う財産である」とし、経済的な支援の必要性を訴えた。
しかし、日本の少子化問題は、単なる「賞金」だけで解決できるものではない。では、実際に少子化対策に成功しつつある国はどこにあるのか。その答えの一つがハンガリーだ。
ハンガリーの大胆な少子化対策が出生率回復を実現
日本の少子化が深刻化するなか、ハンガリーでは政府が大規模な家族政策を実施し、出生率の改善を図っている。ハンガリーの出生率は2011年に1.23と日本よりも低い水準だったが、2023年には1.51まで回復。これは、移民に頼らず国内の出生数を増やすという政府の明確な方針のもと、各種の経済的支援策が導入された結果だ。
GDP4.7%を投入するハンガリーの少子化対策
ハンガリー政府は、少子化対策にGDPの約4.7%という巨額の予算を投入している。その施策の一つに、「子どもを4人産んだ女性の所得税をゼロにする」という政策がある。
オルバーン・ヴィクトル首相は2019年、この制度を導入し、4人以上の子どもを持つ母親の所得税を全額免除する措置を講じた。この政策は、母親に対する経済的負担を軽減し、家族の生活を安定させる目的がある。
新婚カップルへの支援—結婚奨励金と住宅ローン免除
また、ハンガリーでは新婚カップルを対象にした「結婚奨励金」制度もある。新婚夫婦が結婚すると、2年間にわたって税控除を受けられるうえ、妻が妊娠すると追加の給付金が支給される。さらに、若年層の家庭形成を支援するため、18歳から40歳の夫婦には無利子の住宅ローンが提供され、3人目の子どもが誕生するとそのローンは全額免除される。
3年間の有給育児休暇と体外受精費用の全額補助
育児支援の面でも、日本とは異なる手厚い制度が整っている。例えば、育児休暇は最長3年間取得可能であり、その間の給与は出産前の収入の70%が補償される。さらに、体外受精の費用を全額補助する政策も導入されており、希望する夫婦が経済的な負担なく子どもを授かる機会を得られる。
ハンガリーの出生率は上昇、日本の教訓となるか
これらの政策の結果、ハンガリーの出生率は2011年の1.23から2023年には1.51に上昇した。この成果は、日本が参考にすべき事例として注目されるべきだろう。
一方で、ハンガリーの少子化対策には課題もある。手厚い住宅支援や補助金制度によって、不動産価格が高騰し、経済格差が拡大する懸念が指摘されている。また、「子どもを産むことが義務のように押し付けられている」との批判もあり、一部の女性からは「選択の自由が制限されるのではないか」という懸念の声も上がっている。
日本の少子化対策の課題と今後の方向性
日本でも、政府は少子化対策を進めているが、現状では十分な効果が得られていない。岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げ、児童手当の拡充や育児休業制度の改善を進めているが、抜本的な対策には至っていない。日本の出生率は2023年時点で1.20と過去最低を記録しており、政策の見直しが急務となっている。
日本においても、ハンガリーのように「経済的インセンティブを強化し、育児環境を抜本的に改善する」施策が求められるのではないだろうか。あやなん氏の発言は、こうした議論を喚起する契機となるかもしれない。