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全国の消防本部や消防署でハラスメントが多発していることが、総務省消防庁の初の実態調査により明らかになった。2023年度、暴力や性的嫌がらせなど計176件が報告され、206人が懲戒処分を受けた。背景には厳格な上下関係や特殊な職場環境があるとされ、対策の強化が急務だ。
一方、企業の職場ハラスメントに関する厚生労働省の調査からも、対策の現状と課題が浮き彫りとなった。
消防現場でのハラスメント、初の全国調査で実態が判明
総務省消防庁が2024年7〜8月に実施した初の全国調査によると、2023年度に全国の消防本部や消防署で発生したハラスメントは少なくとも176件にのぼった。
この結果、206人が懲戒処分を受けたことが共同通信の報道で分かった。
パワハラが最多、上司から部下へのケースが大半
調査結果によれば、ハラスメントの内訳は以下の通りだった。
・パワーハラスメント(パワハラ):145件
・セクシュアルハラスメント(セクハラ):19件
・複数のハラスメント:11件
・マタニティハラスメント(マタハラ):1件
特に上司から部下へのハラスメントが全体の83.5%を占めた。懲戒処分は免職1人、停職17人、減給43人、戒告32人、訓告113人に及んだ。
西臼杵広域消防本部では26件のハラスメントを認定
宮崎県の西臼杵広域行政事務組合消防本部では、2024年12月までに職員20人がパワハラ被害を訴えた。百条委員会の調査により、上司3人によるハラスメント26件が認定され、地域での深刻な問題も表面化してきている。
企業の職場ハラスメントの現状と課題
厚生労働省は2024年5月、「職場のハラスメントに関する実態調査」の結果を公表した。この調査は2023年12月から2024年1月にかけて全国の企業を対象に行われ、職場ハラスメントの発生状況や対策の課題が浮かび上がった。
相談件数は横ばい、セクハラは減少もカスハラは増加
調査によると、過去3年間のハラスメント相談件数は大きな変動がなかったものの、ハラスメント種別で傾向が分かれた。
- **セクハラは「減少」**の回答が最多で、社会的意識の向上が影響しているとされた。
- **カスタマーハラスメント(カスハラ)は「増加」**が「減少」を上回った。
特にカスハラの増加は、サービス業界に根強い「お客様は神様」という考え方が影響しているとの指摘があった。
企業のハラスメント対策と課題
調査では、9割以上の企業がハラスメント対策を実施していると回答した。
主な取り組みは以下の通り。
・相談窓口の設置と周知(7割超)
・ハラスメント防止方針の明確化と周知(6割超)
・社内規定への厳正な対処方針の明記(多数)
一方で、企業が抱える課題としては「ハラスメントかどうかの判断が難しい」、「対応時のプライバシー保護が困難」、「社内に対応できる人材が不足している」という課題も浮き彫りとなった。
パワハラ防止法の影響と企業の対応状況
2020年のパワハラ防止法施行以降、大手企業を中心にハラスメント対策が進んでいるが、中小企業では対策に遅れが目立つ。企業規模別では、99人以下の企業でも88.4%が対策を講じていたが、マニュアル作成や社員研修の実施率は低く、予防対策には課題が残っている。
今後求められる取り組みと課題解決への道筋
消防現場の再発防止策
総務省消防庁は今回の調査結果を受け、全国の消防機関に対して研修強化など再発防止策を呼びかけた。有識者は「上下関係の厳しさや閉鎖的な職場環境がハラスメントを生む温床となっており、組織文化の改革が不可欠だ」と指摘する。
企業に求められる取り組み
企業においては、ハラスメント発生時の迅速な対応と予防措置の強化が求められる。
特に以下の施策が有効とされる。
・実務対応マニュアルの整備と研修実施
・外部相談窓口の設置による通報ルートの多様化
・管理職のハラスメント対応力向上研修の強化
・被害者保護およびプライバシー確保の徹底
社会全体での意識向上と法整備の重要性
厚生労働省の調査結果からも、企業が対策を進める中で「何をしても解決にならない」という無力感が、ハラスメント被害者に広がっている現状が読み取れる。ハラスメント根絶には、企業単位の取り組みにとどまらず、社会全体での意識向上と法制度のさらなる充実が不可欠だ。
まとめ
消防現場や企業の職場におけるハラスメント問題は深刻さを増している。特に消防現場では階級制や閉鎖的な文化が背景となり、企業ではカスハラなど新たな問題が浮上している。再発防止策として、職場環境の改善、予防策の徹底、そして社会全体での意識向上が求められている。
【参照】
・「 職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します(厚生労働省)