兵庫県知事選における広報活動を巡り、斎藤元彦知事側が公職選挙法違反の疑いを指摘されている問題で、22日、斎藤知事の代理人弁護士が「公選法に抵触する事実はない」とコメントを発表した。
この問題は、選挙活動に携わった兵庫県のPR会社meruchuの折田楓氏が自らの業務内容を公開したことで浮上し、SNS上で法律違反を疑う声が広がっている。関係者の主張や識者の見解を整理し、今後の展開を考えてみる。
PR会社の投稿が引き金に
問題の発端は、PR会社meruchu(メルチュ)の経営者である折田楓氏がインターネット上で知事選の広報活動について発信したことだった。折田氏は「広報全般を任されていた」と主張し、選挙用の写真撮影やキャッチコピーの提案、SNSアカウントの運営、ハッシュタグの考案などを手掛けたことを明かした。
この投稿がきっかけで、「選挙運動に有償で携わることは公職選挙法違反に該当するのではないか」との指摘がSNS上で広がったことは既報の通り。
22日、齋藤知事側は、PR会社に一定の対価を支払ったことを認めたが、それは法が認めるポスター制作などに限られるとしている。しかし、meruchuの折田楓氏が発信した投稿の一部が削除されており、真相は明らかになっていない。
高橋洋一氏「金額次第で判断」
元内閣官房参与で経済学者の高橋洋一氏はSNSでこの問題に言及し、「選挙収支報告が出れば、どの程度の金額が支払われたかわかる。捜査当局が動くかどうかは金額次第だ」との見解を示した。また、「斎藤知事は元総務官僚として公選法の知識があったはず。それにもかかわらず、こうした問題が起きたのは、選挙活動に不慣れな人物を関わらせたことが原因ではないか」と指摘した。
高橋氏は、選挙活動に関する法的な線引きについても解説し、「例えば車上運動員には報酬を支払うことが認められるが、電話作戦にお金を払うと買収に当たる」と説明した。今回のケースでは、SNSを利用した選挙運動に対する報酬が違法性を問われる可能性があるとした。
PR業界からの批判も
PR業界大手のサニーサイドアップグループを牽引する次原悦子氏もSNSで反応を示した。次原氏は「PR会社の仕事は裏方に徹するべきもので、表に出るべきではない」とコメントし、折田氏の行動を暗に批判した。「手の内は表に明かさないことが、この業界で生き残る秘訣だ」と述べ、PR業務としての倫理観とプロ意識の重要性を強調した。
次原氏の投稿には、多くの支持や共感が寄せられており、PR業界全体にとっても今回の問題は業務の在り方を見直す契機になっている。
今後の展開に注目
今回の問題によって、選挙活動におけるPRやSNSの運用方法が改めて注目されている。公職選挙法では、選挙活動の一部に報酬を支払うことは合法とされているが、SNS広報のような新しい分野では法解釈が曖昧な部分も多い。今後、選挙収支報告書の公開や関係者の説明によって、問題の詳細が明らかになると見られる。
齋藤知事側は法的問題がないことを強調しているが、捜査機関が動くかどうかや、meruchuと知事陣営の関係性がさらに精査される可能性もある。SNSでは折田楓氏の過去の投稿やmeruchuの開示内容から、あら捜しが続いている。
一方で、PR業界にとっては、今回のケースが守秘義務の大切さ、業務の透明性やモラルを再考するきっかけとなるかもしれない。今後の動向が注目される。