
ミラノ・コルティナ冬季五輪のカーリング女子1次リーグ。
静まり返ったコルティナの氷上で、日本のストーンがわずかに伸びた。その数十センチが、試合の流れを決定づけた。
日本代表フォルティウスは、世界ランキング上位のカナダに6-9で敗戦。通算1勝5敗となり、準決勝進出は数字上も不可能となった。平昌銅、北京銀と続いたメダルの流れは、ここでいったん途切れる。
しかし、この敗戦は単なる「結果」ではない。そこには五輪特有の重圧、経験値の差、そして代表選考の在り方までをも浮き彫りにする、濃密な90分間があった。
第1エンドの光と、第3エンドの暗転
立ち上がりは理想的だった。
第1エンド、後攻の日本はスキップの吉村紗也香が正確なドローをハウス中心へ沈め、2点を先制。ベンチから「ナイスショット!」の声が飛び、チームに笑顔が広がる。
だが、第2エンドで同点に追いつかれると、空気は微妙に変わる。
そして迎えた第3エンド。
日本は細かなショットミスを重ね、苦しい形で最終投を迎えた。ドローは一瞬、ラインに乗ったかに見えた。しかし「ちょっとキープして!」の声が響く。ウエイトがわずかに強い。赤いストーンはハウスを抜け、無情にも外へ転がった。
3点スチール。
氷上の空気が一気にカナダへ傾いた瞬間だった。
精度の差 ドロー成功率84%という壁
この日の分岐点は、ドローの精度だった。
テークアウト成功率は互角。しかし、ドロー成功率でカナダが84%、日本は76%。わずか数%の差が、スコアでは3点差となって現れた。
カナダを率いるのはスキップのレイチェル・ホーマン。
最終第10エンド、彼女のラストショットは、日本の3つのストーンの隙間を縫うようにハウス中央へ止まった。歓声と同時に、日本の敗退が事実上決まった。
「自分が決めていれば」スキップの自責
試合後、吉村は静かに語った。
「3点を取られたところも、自分がしっかり決めていればクロスゲームに持っていけた」
五輪初出場。
氷の微妙な変化、刻一刻と高まる緊張、背負う責任。平常心を保つことの難しさは想像を超える。
だが同時に、それが五輪だ。
なぜ日本は勝てなかったのか【戦術・選考・経験値】
今回の敗戦を単なる「不調」と片付けることはできない。
- 氷への適応力
海外特有のアイスへの順応が遅れた可能性。 - ドロー精度の課題
強めに投げてスイープで調整する戦術との差。 - 代表選考方式への議論
国内決定戦中心でいいのか。
国際大会ポイント制を導入すべきか。
北京五輪金メダルの英国は国家選抜チームだった。世界基準で戦うには、選考から国際志向へシフトすべきという声も強まっている。
残る3試合 「終戦」ではなく「始点」
統計上、準決勝進出はない。
だが、イタリア、英国、中国との3試合が残っている。
ここで若手を起用するのか。
それとも主力で意地を見せるのか。
敗退決定後の戦い方こそ、次世代へのメッセージになる。
平昌の銅、北京の銀。その成功体験があるからこそ、今回の挫折は重い。
だが、氷の上で学んだ失敗は、次の五輪サイクルで必ず生きる。
日本カーリングは、まだ終わらない。



