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アフターピル市販化で激化する「面前服用」論争 性暴力被害者の視点から問われる日本の制度設計

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アフターピル市販化

日本で長年議論されてきた緊急避妊薬、いわゆるアフターピルの市販化が2026年2月2日から始まった。対象はレボノルゲストレル1.5mgを有効成分とする「ノルレボ」で、医師の処方箋なしに薬局やドラッグストアで購入できるようになった点は大きな前進といえる。一方で、薬剤師の面前で服用することを義務づけた「面前服用」ルールは、性暴力被害者の救済につながるのか、それとも新たな二次被害を生むのかという根源的な問いを社会に突きつけている。

 

市販化の概要と現実 広がった選択肢と残る壁

市販化は2026年2月2日から全国で始まり、厚生労働省に登録された約7000店舗の薬局やドラッグストアで販売されている。希望小売価格は1錠7480円で、緊急性の高い医薬品としては高額との指摘が多い。
効果は性交後72時間以内の服用で妊娠を約80%防ぐとされ、24時間以内では95%、48時間以内で85%、72時間以内では58%程度まで低下する。早期服用が重要であるにもかかわらず、価格や制度が入手の障壁になる可能性は否定できない。
年齢制限は設けられず、保護者の同意や同伴も不要とされた一方、購入と服用は女性本人に限定され、代理購入は不可とされた。この「本人限定」という原則は、被害者保護の観点では重要だが、同時に運用の厳格さが当事者を追い詰める場面も想定される。

 

最大の争点「面前服用」 安全確保か過剰管理か

今回の制度で最も議論を呼んでいるのが、薬剤師の面前でその場で1錠を服用し、薬を持ち帰れないというルールである。厚生労働省の検討会議や専門部会で決定され、薬剤師が書面で説明し、服用を目視確認する仕組みが採用された。
行政側は、誤用防止や転売対策、服用後のフォロー確保、性犯罪被害の可能性がある場合の支援機関案内を目的として挙げている。安全性を重視する姿勢は理解できるが、その「管理」が当事者にどのような体験を強いるのかについては十分な検証が尽くされているとは言い難い。
特に緊急避妊薬は時間との勝負であり、対面対応や心理的抵抗が服用の遅れにつながれば、本来の効果が損なわれる恐れがある。

 

性暴力被害者にとってのアフターピル 救済と二次被害の分岐点

性暴力被害者にとって、緊急避妊薬は妊娠という長期的な影響を回避するための最後の安全網である。事件直後の被害者は、恐怖や混乱、羞恥心を抱え、誰にも会わず、誰にも説明せずに薬を手に入れたいと願うケースも少なくない。
面前服用は安全確保を目的とした制度だが、第三者の視線の中で服用を強いられる体験が、被害の記憶を呼び起こし、精神的苦痛を増幅させる可能性は否定できない。薬剤師の善意や配慮があったとしても、「見られる」「確認される」という構造自体が負担となる場合がある。
さらに、性犯罪被害の疑いがある場合に警察や支援機関への案内が想定されている点についても、「相談を望まない被害者」の存在をどう位置づけるのかという課題が残る。制度が善意であっても、選択の余地を狭めれば、結果として被害者を沈黙や断念に追い込む危険性がある。

 

「男性責任論」が孕む危うさ 被害者視点の欠如

市販化をめぐる議論では、「女性ばかりが負担を背負っている」という不公平感が語られてきた。

しかし、その不満の矛先として示された一部の声には、被害者視点を欠いた危うさが含まれている。
緊急避妊薬が必要となる状況には、合意のない行為や明確な性暴力が含まれる可能性がある。その相手を一律に責任共有の前提とする発想は、被害者に加害者との再接触や説明を強いる二次被害につながりかねない。
問題の本質は、女性にのみ即時的な対応を求める構造と、避妊や性行為の責任が社会的に男性側へ十分に問われてこなかった点にある。責任論を安易に制度に持ち込むことは、被害者保護を弱める結果になりかねない。

 

国際基準と日本の現在地 次に問われるもの

海外では、WHOが緊急避妊薬を必須医薬品と位置づけ、処方箋なしでの薬局販売を推奨している。

多くの国で迅速なアクセスと自己決定権が重視され、面前服用のような制限はほとんど見られない。
日本の市販化は大きな前進だが、価格の高さ、地域や時間帯によるアクセス格差、包括的性教育の遅れ、そして面前服用ルールの是非といった課題は残されたままだ。
次に問われるのは、制度が本当に被害者のために機能しているのかという検証である。管理を強めることが安心につながるのか、それとも沈黙と断念を生むのか。アフターピル市販化は、日本社会が性暴力被害者をどう扱うのかを映し出す試金石となっている。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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