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広島カープ羽月隆太郎(25歳)薬物送検とオンラインカジノ問題 相次ぐ不祥事が映すプロ野球界の統治不全

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羽月隆太郎
NPB 日本野球機構 公式サイトより

プロ野球界に重い現実が突きつけられている。2026年1月27日、広島東洋カープの羽月隆太郎選手(25歳)が、指定薬物「エトミデート」(通称「ゾンビたばこ」)を使用した疑いで逮捕され、29日に送検された。本人は否認しているが、尿検査で陽性反応が出たとされ、自宅からは吸引器具などが押収されたという。
現役日本人選手による同薬物での摘発は初とみられ、球界への衝撃は大きい。さらに前年には、違法オンラインカジノ問題で8球団16人の関与が判明しており、不祥事は個人の逸脱ではなく、プロ野球界の統治と管理体制そのものを問う局面に入っている。

 

羽月隆太郎(25歳)逮捕と送検 初摘発級の重みが球界を直撃

今回の事件は、薬物事件としての性質だけでなく、タイミングと象徴性が際立つ。エトミデートは鎮静作用を持つ薬物で、過剰摂取によりけいれんや異常行動を引き起こす危険が指摘され、「ゾンビたばこ」と呼ばれる。日本では2025年5月に指定薬物として規制されたばかりで、社会が十分に警戒の輪郭を固め切らないうちに、プロ野球選手の摘発へとつながった格好だ。

羽月容疑者は逮捕後も「使った覚えはありません」と容疑を否認し続けている。

否認は権利であり、結論は司法手続きに委ねるべきだが、同時に、尿検査の結果と押収物の存在が報じられている以上、世論が厳しい視線を向けるのも避けがたい。とりわけプロ野球は、地域に根差した公共性の高い興行であり、選手個人の問題が球団、リーグ、競技そのものの信用へ波及する。送検という節目は、事件が「噂」ではなく「手続きの上に載った現実」であることを突きつけた。

 

代走のスペシャリストが背負った期待 「上り調子」だったからこそ痛い

羽月隆太郎は2019年にドラフト7位で広島へ入団した。武器は俊足。

代走という一見地味な役割でありながら、接戦の終盤に「走力」という確実性を持ち込める選手は、勝敗を左右する存在だ。昨シーズンは自己最多となる74試合に出場し、出番の多さが信頼の裏返しであることを示していた。

だからこそ今回の逮捕は、戦力の毀損にとどまらない。代走要員は単に速ければ務まるわけではなく、試合終盤の緊張下でミスをしない集中力、ベンチの規律、そして周囲が安心して託せる信用が土台になる。ここが崩れると、チームが積み上げてきた「勝ち方」の設計そのものが揺らぐ。若手が「伸びてきた」時期の不祥事は、本人のキャリアだけでなく、球団の育成や文化にも長い影を落とす。

 

新井貴浩監督の謝罪コメント 短い言葉に滲む組織の痛恨

事件後、新井貴浩監督は次のようにコメントした。
「監督として大変重く受け止めております。事実関係につきましては現在捜査中であり、詳細なコメントは差し控えさせていただきますが、チームの一員として自覚を欠いた行動であり、非常に残念な気持ちです」
捜査中で踏み込めないという制約を抱えながらも、球団内部の衝撃がにじむ。監督コメントは、しばしば火消しの定型句になりがちだが、今回はそれだけで済む話ではない。

球団が問われるのは、処分の厳しさだけではない。どのように兆候を察知し、どのように相談につなげ、どのように再発を防ぐのか。危機対応の本質は「沈黙の正当化」ではなく、「やるべきことの手順化」にある。事実関係の解明を待つ必要がある部分と、待たずに整えられる再発防止の枠組みは分けて提示しなければ、ファンの不信は膨らむ一方となる。

 

「ゾンビたばこ」拡散の構図 新しい薬物ほど啓発が遅れ、入口が軽くなる

エトミデートをめぐる危険性は、単に成分の有害性にとどまらない。

新しい指定薬物は、規制が始まった時点で「知らない人」が圧倒的に多い。そこに、通称や流行語のような呼び名が重なると、危険性がエンタメ化しやすい。さらに吸引型の使用形態は、見た目が一般の喫煙具と紛れやすく、警戒心を薄める。

若年層へ広がる背景には、情報の断片化もある。短い動画や切り抜きの文脈では、リスクや依存性の説明が省かれ、刺激だけが残る。もし「一度くらい大丈夫」という過信が入り込めば、歯止めは利きにくい。プロ野球選手であっても例外ではない。むしろ遠征や交流の幅、注目される立場ゆえのストレス、周囲に弱みを見せにくい空気が重なると、危うさは増す。球界がこの薬物を「知らなかった」で済ませれば、次の当事者を生むだけである。

 

否認と押収物が突きつける説明責任 SNSの擁護と批判が生む二次被害

羽月容疑者が否認を続ける一方、尿検査の陽性反応や押収物の存在が伝えられ、SNSでは擁護と批判が混在した。「被害者」扱いする声が出るほど感情が先行すると、家族や関係者への詮索、根拠の薄い推測の拡散が起きやすい。こうした二次被害は、事件の本質をぼかし、社会の学びを奪う。

重要なのは、応援と免罪を切り分けることだ。真相がどうであれ、プロの選手には、説明責任と社会的影響を受け止める責任が付随する。もし意図しない摂取を主張するなら、なぜ検査で反応が出たのか、なぜ器具が押収されたのか、入手経路はどうなっているのかという疑問は、むしろ強くなる。逆に、断罪を急げば、司法手続きの土台が揺らぐ。結論を急がず、しかし目を逸らさずに見つめる姿勢が求められる。

 

オンラインカジノ16人関与と実名報道の断層 薬物事件と同根のガバナンス課題

球界の統治不全を語るうえで、オンラインカジノ問題は避けて通れない。

2025年の調査では、8球団計16人が関与し、総額1020万円の制裁金が科された。しかし選手の実名は基本的に非公表とされ、警察捜査への影響を考慮したとして、詳細な氏名リストは公式に公開されなかった。
その中で、公に名前が出た選手として、オリックス・バファローズの山岡泰輔投手、読売ジャイアンツのオコエ瑠偉外野手、増田大輝内野手が挙げられる。オコエが約700万円、増田が約300万円の利用金額と伝えられたこともあり、世間の注目は一気に「実名が出た側」へ集中した。

ここにねじれが生まれる。人数は16人と明示されながら、顔ぶれは見えない。実名が出た数名だけが矢面に立ち、伏せられた多数は「どこかにいる」という不気味さだけを残す。処分の重さより、手続きの納得感が信頼を左右する時代に、透明性の不足は致命傷になり得る。
羽月事件は刑事事件として実名が出やすい性質だが、オンラインカジノ問題の余韻が残る今、球界は「また曖昧に終わるのか」という疑念と戦わなければならない。

薬物と賭博は別の問題に見える。しかし根は同じだ。法令リテラシー教育の不足、最新リスクの共有不足、相談体制の弱さ、そして公表の基準が揺れるガバナンス。これらを「個人の自覚」に委ね続ける限り、不祥事は断続的に起きる。プロ野球が社会的な信頼と憧れを取り戻すには、再発防止を抽象論で終わらせず、具体策として可視化し、継続して実行するほかない。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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