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広浜が興す「い草」の維新 畳の端材を名作椅子へ変えた老舗の知恵

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広浜が興す「い草」の維新 畳の端材を名作椅子へ変えた老舗の知恵
提供:広浜株式会社

「い草を最後まで活かしきる」という執念が、捨てられるはずの端材を名作椅子に変えた。畳メーカー広浜が挑むのは、単なる再利用ではない。素材の機能性を現代の家具へと翻訳し、伝統産業を新生させる戦略的試みだ。

 

畳になれなかった「い草」の逆襲

「もったいない」という現場の悲鳴が、一脚の椅子に化けた。広島の老舗畳メーカー、広浜株式会社が2026年1月27日に発表した椅子『バンナ』。その座面に編み込まれているのは、かつて工場の隅で廃棄を待つだけだった「い草の端材」だ。

畳の製造現場では、寸法の都合でどうしても大量の端材が発生する。品質は一級品、香りも手触りも申し分ない。しかし、長さが足りないというだけで、これまでは無慈悲に「ゴミ」として処理されてきた。

広浜はこの「負の遺産」を資源として再定義。端材を紐状にし、職人が一目ずつ手作業で編み上げるという、狂気的なまでの手仕事によって、捨てられるはずだった素材に新たな命を吹き込んだのである。

「蒸れない・滑らない」天然素材の機能美を家具へ転用

この椅子の凄みは、単なる環境配慮に留まらない圧倒的な「機能性」にある。他社の木製やプラスチック製家具と決定的に違うのは、い草が持つ天然の調湿・消臭機能だ。

い草は「天然の空調機」とも呼ばれ、無数の気孔が湿気を吸い、驚くほどの通気性を生む。実際に腰を下ろせば、夏場のレザーチェアのような不快な蒸れは一切ない。

さらに、編み込まれたい草の適度な摩擦と弾力は、驚くほど体に馴染む。「畳の上に座った時の、あの安らぎを椅子で再現したかった」と同社が語る通り、ふわりと漂う草の香りは、現代人が忘れかけていた「和の鎮静」を呼び覚ます。機能性と情緒、その両輪が完璧に噛み合っているのだ。

「守る」のではなく「形を変える」という老舗の哲学

 

なぜ、一介の畳メーカーがこれほど完成度の高い家具を作れたのか。その背景には、畳を単なる「床材」ではなく「高機能な天然素材」として捉え直した、広浜の揺るぎない哲学がある。

かつての日本では、古くなった畳は肥料として土へ還る「循環」の象徴だった。広浜は、その循環の輪を現代のライフスタイルに合わせて再構築したに過ぎない。

「最後まで使い切る」。言葉にすれば容易いが、それを実現するためには、自社でフレームを製造し、端材を紐に加工する手間を厭わない、圧倒的なクラフトマンシップの継承が必要不可欠だった。

廃棄物(負債)を価値ある資産に変える経営のヒント

広浜の挑戦から我々が学ぶべきは、足元に眠る「負の資産」を疑う力だ。自社にとっては長年の悩みだった廃棄物が、視点を変え、技術という翻訳を通せば、世界に通用するサステナブルな一品へと化ける。

畳離れが進むと言われて久しい。しかし、形を変えて現れた『バンナ』は、我々に問いかけてくる。「本当に、い草は古い素材なのか?」と。この椅子が住宅や店舗、公共施設に並び始めた時、日本の伝統産業は「延命」ではなく「新生」のフェーズに入るだろう。

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サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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