
「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現には、一時的な寄付ではなく、誇りを持って働ける土壌が必要だ。株式会社ANがネパールで進める植樹と女性支援は、経済と尊厳を両立させる新たな企業活動の指針となる。
ネパール農村部から始まる、持続可能な循環の物語
2026年1月、株式会社AN(東京都新宿区、代表取締役:向山かおり)は、ネパール農村部における植樹プロジェクト「BIKAS COFFEE VILLAGE」への参画を継続し、新たに「AN-NORMALの樹」を植樹した。
同社は2022年からこの取り組みを開始しており、2025年春には初めての収穫を成功させている。特筆すべきは、単なる資金提供に留まらない点だ。同社のメンバー自らが現地へ赴き、農家とともに収穫を体験することで、一杯のコーヒーの背景にある暮らしや、木が実を結ぶまでの歳月に想いを馳せるプロセスを重視している。また、これと並行して、ネパールで性被害を受けた女性たちの保護施設へ化粧品を寄贈するなど、現地の社会課題に深く踏み込んだ支援を展開している。
「意味」を消費し、未来の雇用を育てる独自性
本プロジェクトの独自性は、消費者がコーヒーという商品を「味や香り」だけでなく「意味」で選択する仕組みを構築している点にある。
「BIKAS COFFEE VILLAGE」は、アグロフォレストリー(森林農法)を採用しており、5年間で累計3,000本の植樹により年間最大約30トンのCO2吸収が見込まれる。しかし、本質的な差別化要因は、カーボンオフセットという環境価値に加え、「3年後の雇用」を創出する点にある。コーヒーの苗木を植えることは、収穫期における農家の安定した収入を約束することと同義だ。
また、同社が運営するセレクトショップ『Nature(ナチュール)高田馬場』を通じて行われる化粧品寄贈は、単なる物資支援ではない。「美しさや楽しさを実感する体験が、人権を守る意識を育む」という同社の信念に基づき、精神的な豊かさを提供することで、現地の女性たちの自立を後押ししている。
哲学「AN-NORMAL」が定義する、普遍的な豊かさの定義
これらの活動の背景には、同社が掲げる「AN-NORMAL(アンノーマル)」という独自の哲学がある。これは、「誰もが自由にやりたい仕事を持ち、その人なりのライフスタイルが叶う状態」を指す。
代表の向山氏は、1本の木が実を結ぶまでに多くのご縁やつながりが必要なように、人の生き方もまた他者との関わりの中で実るものであると説く。同社にとって、ネパールでの活動と、国内で行っている沖縄のサンゴ礁保全や女性のキャリア支援は、地続きの課題である。国境を越えて「自分らしく生きられる社会」を追求する姿勢は、現代の企業に求められる「パーパス経営」を体現しているといえるだろう。
現地での収穫を終えたメンバーの一人は、「農家の方々と共に汗を流す中で、私たちのビジネスが誰の、どのような日常を支えているのかを肌で感じた」と語る。この実感こそが、形骸化しがちな社会貢献活動に血を通わせる原動力となっている。
この会社から学べる事:ビジネスと社会貢献の「手触り感」
株式会社ANの事例から我々が学ぶべきは、社会貢献を「外部への施し」ではなく「自社のアイデンティティの延長」として捉える視点だ。
多くの企業がSDGsを掲げる一方で、現場のリアリティと乖離した活動に陥るケースも少なくない。しかし、ANは現地での直接的な労働体験や、自社製品を通じた情緒的価値の提供を通じて、支援の「手触り感」を失わないように努めている。
「意味」で選ばれる商品を作り、その利益が誰かの「やりたい仕事」を生み出し、さらには環境を再生させる。この循環の中に自社の哲学を組み込む手法は、規模の大小を問わず、これからの時代の持続可能なビジネスモデルとして一つの規範を示している。



