
自社製品の廃棄を次世代の学びへと転換する。コクヨが展開する、小学校でのノート回収と再製品化を繋ぐ「つなげるーぱ!」。単なる再生紙利用に留まらない、顧客を巻き込んだ循環型社会への深い洞察とその戦略に迫る。
回収ノートを再資源化した「つなげるーぱ!」第3弾の意義
コクヨ株式会社は、全国の小学校から回収した使用済みのノートを原材料の一部として活用し、再びノートの表紙として蘇らせる「キャンパスノート<つなげるーぱ!>」の第3弾を、2026年1月21日より発売する。
今回の新作が冠するテーマは「絶滅危惧種」である。コアラやアオアシカツオドリといった動物をモチーフに据えつつ、シリーズ初となる試みとして、表紙と裏表紙で異なるイラストを採用した。例えばオコジョの柄では、表面に「冬毛」、裏面に「夏毛」を描き分けることで、ノートを手にする児童が動物の生態や環境変化を直感的に学べる仕様を施している。
リサイクルをシステムから体験へと昇華させる設計の妙
本取り組みの特筆すべき点は、リサイクルを単なる製造工程の一部としてではなく、顧客との共創による体験価値として設計している点にある。
多くの企業が再生材の利用を材料調達の効率化という文脈で語るなか、コクヨは回収の段階から教育の現場に深く関与する。同社は「つなげるーぱ!」という環境学習プログラムを通じ、社員自らが小学校を訪問して出張授業を実施している。自らが使い終えたノートを排出し、それが再び製品となって手元に戻ってくる過程を直接体験させることで、子供たちは資源循環を単なる知識ではなく、実感を伴う自分事として捉えるようになる。2023年の始動以来、すでに約323校、9万人を超える児童がこの循環の輪に参加しており、現場の教員からの高い支持が、この活動の質を証明している。
マテリアリティに掲げる「捨てない社会」への哲学
この活動の背景には、コクヨグループが経営の根幹に据えるマテリアリティ「循環型社会への貢献」が存在する。同社にとってノートは創業以来の象徴であり、現在も市場を牽引する主力製品である。そのライフサイクルの終着点に対して責任を持つことは、ブランドの誠実さを社会に示すことに他ならない。
同社の担当者が、単にリサイクルノートを売ることが目的ではなく、子供たちが自分の出した資源が価値を持って戻ってきたという成功体験を得ることこそが重要であると語るように、その視線は未来を向いている。同社は製品を製造・販売するだけでなく、循環型社会を構成する未来の市民を育成するという重責を、ビジネスを通じて果たそうとしているのである。
物語と実益を兼ね備えたサステナブル経営の指針
コクヨの事例から学ぶべきは、サステナビリティをコストや義務として処理せず、ブランド体験へと昇華させる戦略的な姿勢である。
製品の主要ユーザーである児童に対し、販売時だけでなく廃棄時にこそ最大の接点を持つという逆転の発想は、廃棄接点をファン化の機会に変える可能性を示唆している。再生紙利用という機能的価値の上に、環境教育という情緒的価値、そして社会貢献に参加しているという自己実現的価値を重ねる手法は、極めて高度な差別化戦略といえる。
企業のサプライチェーンが複雑化する現代において、ここまで透明性が高く、かつ消費者の心を動かす物語を付与できた事例は数少ない。資源循環のループをいかにして感情のループへと繋げるか。コクヨの挑戦は、あらゆる製造業がサーキュラーエコノミーに向かう際の、重要な指針となるだろう。



