
官公庁の制服製造で培った安全への矜持を環境配慮と地域貢献へ転換する試みが注目を集めている。創業百周年を控える大和被服が挑むのは、廃棄される高品質な端切れを子供たちの身を守る防犯用品へと再生する独自の循環型モデルである。
警察官制服の端切れをアップサイクル 地域の交通安全を守るを繋ぐプロジェクト
岡山県倉敷市に本拠を置き、警察や消防の制服製造を手掛ける大和被服株式会社が、サステナビリティ活動の新たな一手として警察官制服の端切れを活用した夜光タスキを開発した。2025年12月には、地元の倉敷市立乙島東小学校へ81本を寄贈している。このプロジェクトは、年間2トンを超える廃棄生地の削減を目指すとともに、地元の玉島警察署と連携して児童を玉島ルミナスミニポリスに任命するなど、製品の提供と意識啓発の両面から地域の安全に寄与するものである。従来の廃棄されるはずであった資材を子供の命を守る資源へと昇華させた意義は大きい。
なりすまし防止の壁を突破 官公庁制服メーカーならではの独自性と差別化
官公庁制服、特に警察や消防の衣類は、悪用やなりすまし犯罪を防止する観点から、その処分には厳格な管理が求められる。従来、製造工程で出る端切れや役目を終えた製品は、高いセキュリティを担保するためにコストをかけた焼却処分が常識であった。同社が他社と一線を画すのは、このセキュリティと環境配慮のジレンマを、付加価値の創出によって解決した点にある。警察官の制服と同じ、極めて耐久性の高い高品質な生地を使用することで、製品に本物という圧倒的な説得力を持たせた。贈呈式で児童から上がった、警察官に憧れているから嬉しいといった声は、単なるリサイクル製品では得られない心理的な防犯や安全意識の向上をもたらしている。
守るを繋ぐ哲学 命を守る使命を次世代へ継承するブランド戦略
本取り組みの礎には、先行する消防服アップサイクルブランドであるリターブルの成功がある。高機能なアラミド繊維を再構築し、バッグや防災頭巾へと再生するこの事業の根底には、命を守ってきた隊員の想いを次の持ち主へ繋ぐという確固たる哲学が流れている。大和被服は、自社を単なるアパレルメーカーではなく公共の安全を支えるインフラと定義している。一九二五年の創業以来、職人の手作業で官公庁の信頼に応えてきた技術力があるからこそ、生地に宿る守るというメッセージを消費者に届けることができる。持続可能な開発目標を単なる流行ではなく、自社の存在意義に深く結びつけた先進的な事例といえる。
ビジネスパーソンが学ぶべき産官学連携によるソーシャルエコシステムの構築
大和被服の事例から学ぶべきは、一企業の枠を超えたステークホルダーの巻き込み方である。廃棄物をコストではなく、信頼と憧れの象徴であるブランド資産として捉え直した文脈の再定義に加え、警察署や教育機関など、異なる立場の組織と連携し、地域全体で社会課題を解決する循環を作り上げた共創モデルの構築も特筆すべき点である。今後も警察官制服による子供たちへの心理的効果を活かした展開を広げたいと語る同社の姿勢は、技術と想いを次世代へ繋ぐ、これからの時代の企業経営における一つの指標を示している。



