
訪日外国人向けに通常の約2倍の価格を設定した大阪市内のラーメン店が、SNSを中心に炎上騒動となった。店側は「特別仕様の商品」だと説明するが、価格差の理由が十分に共有されなかったことで、返金要求や警察出動にまで発展した。一方、北海道では道民・日本人・外国人で料金を分ける多段階価格が比較的円滑に運用されている。なぜ同じ「価格差」でも受け止め方は大きく異なるのか。インバウンド時代の日本社会に求められる「説明力」と制度設計の課題を検証する。
二重価格が招いた炎上の発端
外国人観光客向けに、通常の約2倍の価格を設定したラーメン店が議論を呼んでいる。大阪市内の店舗で導入された、いわゆる「二重価格」。インバウンド回復の象徴ともいえる試みは、なぜ一転してトラブルと批判の対象になったのか。
問題の背景には、単なる価格差以上に、日本社会が抱える「管理」と「説明」の弱さが透けて見える。
「高すぎる」のは価格か、理由か
この店では、通常約1000円のラーメンに対し、外国人観光客向けには約2000円の商品を提供していた。味付けや具材を変えた特別仕様だと説明されている。
しかし今月4日、中国人観光客が「メニューが違うのではないか」と返金を要求し、警察を呼ぶ事態にまで発展した。
店主は「二重価格を導入する以上、一定のリスクは覚悟している」と語る。
だが、炎上の火種となったのは「高い」ことそのものよりも、「なぜ高いのか」が十分に伝わっていなかった点だろう。
北海道にもある多段階価格の事例
二重価格は、このラーメン店だけの特殊な例ではない。
HTB北海道ニュースによると、札幌市の大和ハウスプレミストドームで開催されている体験型イベントでは、道民、日本人、外国人で料金を分ける三段階価格が導入されている。
道民は中学生以上1000円、日本人は2000円、外国人は小学生以上2000円とされている。
価格差は明確に掲示され、主催者は「利用頻度や観光施設全体の価格水準を踏まえた判断」と説明している。
同じ“価格差”でも、こちらは大きなトラブルには発展していない。
分かれ目は「割増」か「割引」か
両者の違いはどこにあるのか。
専門家が指摘するのは、価格設計の「考え方」そのものだ。
「外国人に割増料金を課す」という形は、排除や差別と受け取られやすい。一方で、標準価格を設定したうえで、地元住民や常連客を割引する方式であれば、印象は大きく変わる。
割引は「歓迎」や「配慮」として受け止められやすい。
割増は、理由が不明確な場合、「線引き」や「敵対」として映る。
価格は単なる金額表示ではなく、社会の空気を映すメッセージでもある。
インバウンド時代に問われる説明責任
訪日外国人が急増するなか、店舗や施設の負担が増しているのは事実だ。言語対応、マナー対応、混雑対策。価格で調整したいという現場の感覚も理解できる。
だからこそ求められるのは、制度としての整理と説明である。
「誰が高いのか」ではなく、「なぜその価格なのか」を、事前に、分かりやすく示せているか。
そこを欠いた瞬間、価格は管理手段ではなく、対立の火種になる。
二重価格は悪なのか
二重価格は排除なのか、それとも現実的な管理策なのか。
答えは単純ではない。
ただ一つ言えるのは、「外国人だから高い」と受け取られる構図を放置すれば、摩擦は避けられないということだ。
標準価格と割引という発想への転換は、観光立国日本が分断を深めずに管理を進めるための、実務的で冷静な選択肢となりうる。
値段の付け方は、その社会の成熟度を映す鏡でもある。



