
電気、ガス、水道、道路、橋——私たちの生活を支えるインフラは、老朽化という大きな壁に直面している。高度経済成長期に集中的に整備されたため、今後急速に老朽化することが懸念されており、道路橋においては2040年に約75%が建設後50年以上経過するとされている。
対応の重要性が増す中、インフラがこれからも長く安定して使われていくための工事をしているのが有限会社スキル産業だ。劣化から守ったり、補強によって安全性を高めたり、より安全性の高いものを新しく作ったり。こうした工事を通じて、私たちの生活を支えている存在だ。50年以上にわたってインフラを支え続けてきた同社の歩みや、美しさを追求する姿勢、展望ついて代表取締役 尾林亮太氏に伺った。
頑丈で、どこよりも美しい仕上がりを。仕事への責任とこだわり
群馬県藤岡市にある有限会社スキル産業(以下、スキル産業)は、防食工事や耐震補強工事などを手がける会社だ。関東全域において、新築工事から補修工事まで幅広い工事を行っている。同社が手がける工事はどれも、浄水場や下水処理場、橋などのインフラが長期的に操業していくために欠かせないものだ。
「防食工事」とは、浄水場で使用される化学薬品による浸食から建物のコンクリート部分を守る防食層を作る工事だ。浄水場を安定稼働させ、安全な水を供給し続けることを支えている。
また「耐震補強」においては、橋などのコンクリート構造物の耐震補強工事を行っている。コンクリート部分の表面に樹脂や含浸材を塗布し、ネットやシートで保護することで剥落を未然に防ぎ、構造物全体の耐久性を向上させている。

スキル産業は、こうした工事を通じて50年以上にわたってインフラを支え続けてきた。尾林氏は3代目で、2023年にこの会社を引き継いだ。創業した初代、先代社長、尾林氏と継承する中で変わってきたものもある一方、変わらないものがある。それが「技術力(=スキル)」だ。
「日頃、同業者の仕事を見ることもあるのですが、弊社ほど仕上がりが綺麗な会社は見たことがありません。先代は、高性能かつ頑丈で正確なのは当たり前で、その上でどう差別化するかを追求し続けた人でした。そのため、見た目にはとにかく厳しく、『誰がどんな視点から見ても美しいと言われる仕事をすること』『見えないところほど時間をかけてきっちりやり抜くこと』を従業員に言い続けてきました。弊社は高い技術に加えて、この姿勢があるからこそどこにも負けない美しい仕上がりを実現しています」(尾林氏)
インフラを支えている自覚を持ち、一つひとつの現場に職人としての誇りと責任をもって向き合っているのが、同社の一番の強みだ。尾林氏は「皆さんが生活していく上で必要なものを守る仕事であるという誇りを持っています」と話す。
覚悟の継承。“父”の思いを継ぐ3代目
尾林氏がこの業界に入ったのは17歳の時、工業高校を中退した頃のことだった。最初はさまざまな現場で仕事をしてみたものの、ピンとくるものがなかったという。そんな時に先代との出会いを機に入社し、師匠となる先輩について技術を磨いてきた。
その中で「いつまでも使われているつもりはなかった」と話す尾林氏。20代後半になると、35歳で独立するか、この会社を継ぐという選択肢を考えるようになったという。そんな頃、先輩から「お前が社長になるべきだ」という言葉をもらう。「尊敬する先輩からそこまでの言葉をもらえるなら」と、会社を継ぐ決意を固めたという。
そして、先代に「いくらでも借金をする覚悟もありますし、自分がどうなろうと従業員のことを守ります。だから、この会社を継がせてください」と話した。尾林氏は、当時のことを振り返ってこう語る。
「話した時は涙ぐんで嬉しがってくれ、先代もそういうつもりでいたとのことでした。弊社は初代の頃から従業員の人柄を大事にしています。先代は私の社内外での人間関係を評価してくださったようで、『次期社長はお前しかいない』と言ってくださりました。そして、2025年までに準備を整えてからバトンタッチするという話になりました」(尾林氏)
そうして準備を進めていた最中、2022年に先代が急逝。予定より早く、翌年から尾林氏が代表というバトンを受け取ることとなった。会社を継ぐにあたって、「技術(=スキル)がウリであることを社名に込めたい」という先代の思いと、生活を支える産業であることを掛け合わせて「スキル産業」に屋号を変更。新たなスタートを切った。
それからは「会社を発展させたい」という先代の想いを叶えるべく、来た仕事をできる限り受け、外部の職人の力も借りながらひたすらに工事をこなしていった。そうして売上を1.5倍に伸ばし、さらに会社の変革にも取り組み始めた。退職金制度を2つ導入し、福利厚生で労災やがん保険などを手厚くしたほか、給与の大幅アップも実現。従業員一律で年収100万円以上はアップさせたという。その取り組みの背景とは。
「ずっと現場で働いてきて職人の気持ちも分かるからこそ、職人ファーストの会社作りを大切にしています。職人がいて初めて、この会社は成り立ちます。職人に対して一番働きやすい環境を作るため、いろいろな新しいことに取り組んでいるんです」(尾林氏)
初代、先代から3代目を継いだ尾林氏。初代と先代は親子だったが、尾林氏は血縁関係ではない。しかし、まるで血縁関係のような絆をも感じさせる。尾林氏は「私が17歳という若い頃から人間として、男として育てていただいて、もう一人の父親のように思っています」と先代への思いを話した。
「職人兼代表」としての会社作り
——今の尾林様を見て、先代はどのような言葉をかけると思いますか。
正直、私自身も何度も自問自答しています。厳しい先代のことなので、褒めるところも怒るところもあるでしょう。先代の時にはなかった取り組みをしたり、売上を伸ばしてきているところは褒めていただけるのではないかと思います。
ただ、私は気を引き締めながらも、楽しく仕事をしたいと思っていて。従業員にもそう話していますし、普段からそういう姿を見せています。それと反対に、先代は仕事にとても厳しく、自分にも従業員にも厳しい方だったんです。今の私のやり方を見て先代は何と言うかな、なんて思いますね。
常日頃、こうして「先代は褒めるかな、怒るかな」「先代だったらどうするかな」と考えています。でも、それだと継いだ意味がないですし、今は私が思うようにやらせていただいて、私も向こうに行った時に胸を張って堂々と先代に顔むけできるように頑張りたいです。
——どんな代表でありたいですか?
「職人兼代表」でありたいです。代表は会社の顔ではありますが、主役は従業員であり、代表はそのサポート役だと思うんです。だからこそ、従業員たちが過ごしやすい環境で働けることを一番重視しており、そのためのサポートを精一杯したいと考えています。
そのため、職人としても積極的に現場に出て誰よりも動いたり、誰が見ても美しいと感じる仕上がりになっているかを見に行って現場を引き締めたりしています。でも、楽しく仕事ができることも大切にしているので、仕事の合間には従業員と笑いあったり、ふざけあったりもしています。のびのびと働けて、一人ひとりが現場の顔になって引っ張っていってくれるようにサポートする存在でありたいですね。

この仕事のことを伝えたい。会社と産業の発展を目指して
——働く上で大切にしていることを教えてください。
些細なことでも絶対に手を抜かないことです。例えば、「残業になっちゃいそうだし、ここはいいかな」と少し手を抜きたくなってしまうこともあると思います。でも、絶対にそれはしません。
もちろんお客様からの信用のためにも大切ですが、それよりも、少しでも「いいかな」と思った心がどんどん膨らんでいってしまうのではないかと思うんです。一度手を抜いて、その後二回、三回と回数を重ねるごとに、そう言う気持ちが大きくなっていっちゃうんじゃないかって。だから絶対に手を抜かず、できることは全てやることを常に意識にしています。
——これからの展望を教えてください。
先代が培ってきたものを崩さず、なおかつ発展していきながら、私たちの仕事の認知を広げていきたいです。今はまだ「防食工事」と聞いてもピンとこない方が多いと思います。「大きく発展していってほしい」という先代の思いを実現させるためにも、私たちの仕事が皆さんの生活を支えていること、こういう仕事をしている人たちがいることを伝えたい。そうして一歩一歩発展していきたいですね。
◎会社情報
会社名:有限会社スキル産業
URL:https://skillsangyo.com/
代表者:尾林亮太
創業:平成17年4月
設立:平成17年4月6日
所在地:〒375-0053群馬県藤岡市中大塚687
◎インタビュイー
有限会社スキル産業 代表取締役
尾林亮太



