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【訃報】家庭科のドラゴン生みの親、サンワード創業者・上田修さん死去。裁縫セットの思い出に感謝の声続々

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サンワード創業者・上田修さんとキャラクター
サンワード 公式Xより

小学校の家庭科の時間、多くの男子児童が選んだ「ドラゴンの裁縫セット」。あるいは、駄菓子屋で見かけたあの白い犬のキャラクター。私たちの日常に溶け込み、誰もが一度は目にしたことがあるデザインの数々を世に送り出した人物が、静かにこの世を去った。キャラクターデザインや版権管理を手掛ける株式会社サンワードは12月29日、同社の創業者であり、キャラクターデザイナーの上田修(うえだ・おさむ)さんが病気のため死去したと発表した。

本記事では、一人のデザイナーが日本の児童文化に残した足跡と、SNSに寄せられた温かい感謝のメッセージを辿る。

 

突然の訃報。サンワード創業者・上田修氏が遺したメッセージ

2024年12月29日、キャラクタービジネス界に大きな衝撃が走った。大阪市淀川区に拠点を置く株式会社サンワードが、公式X(旧ツイッター)にて創業者の上田修氏が永眠したことを明らかにした。

同社の発表によると、上田氏はかねてより病気療養中であったという。公式アカウントに投稿された文書では、「かねてより闘病中でありました弊社、株式会社サンワードの創業者、上田修が永眠いたしました」と報告された。上田氏は画家としてそのキャリアをスタートさせ、後にキャラクターデザインの世界へと転身。自らサンワードを立ち上げ、数多くの印象的なキャラクターをプロデュースしてきた。

サンワード社は公式Xにおいて、上田氏の生涯を振り返り、「画家として身を興し、キャラクターデザインの道に進み、『リトルボブドッグ』『家庭科のドラゴン』『スキップバニー』など、印象に残るも見たことがあるけど名前を知らない多くのキャラクターを世に送り出しました」と故人を偲んだ。また、長年にわたり同社のデザインを愛してきた人々に対し、「弊社のキャラクターを見たことがある、すべての皆様に心から感謝を申し上げます」と結んでおり、このメッセージは多くのユーザーの涙を誘っている。

なお、葬儀については近親者のみで執り行われ、故人の強い意向により、一般からの弔問や香典、供花などは辞退する方針であることも併せて発表された。

少年たちの憧れ「家庭科のドラゴン」が果たした大きな役割

上田修氏が手掛けた作品の中で、特に30代から40代以降の層にとって鮮烈な記憶として残っているのが、通称「家庭科のドラゴン」と呼ばれるデザインシリーズである。

このキャラクターは、小学校の家庭科教材である裁縫セット、エプロン、ナップザックなどの収納ケースやバッグのデザインに採用された。当時、可愛らしいキャラクターやシンプルなデザインが主流だった中で、上田氏が生み出した力強く、どこか神秘的なドラゴンのイラストは、多くの男子児童の心を掴んだ。

「家庭科のドラゴン」は特定の作品のキャラクターではないにもかかわらず、その圧倒的な存在感から「裁縫セットといえばドラゴン」という文化を形成するまでに至った。報道各社の記事によると、このドラゴンシリーズは全国の小学校で広く採用されており、地域や世代を超えた共通の「思い出のアイテム」となっている。

SNS上では、この訃報を受けて「自分もあのドラゴンを選んだ」「今でも実家に裁縫セットがある」といった声が溢れている。子供向けの教材という枠を超え、少年の「格好良さへの憧れ」を形にした上田氏のデザインセンスは、まさに日本全国の男子にとっての登竜門的な存在だったと言えるだろう。

「リトルボブドッグ」から「コーラシガレット」まで。日常に溶け込む上田デザイン

 

上田修氏の功績はドラゴンだけにとどまらない。同社の代表作である「リトルボブドッグ(LITTLE BOBDOG)」は、1988年に誕生して以来、実に幅広いシーンで活躍してきた。

特に有名なのが、オリオン株式会社から発売されているロングセラー菓子「コーラシガレット」のパッケージだ。タバコを模した砂糖菓子として知られるこの商品のマスコットキャラクターとして、リトルボブドッグは長年親しまれてきた。また、各地の信用組合のイメージキャラクターとしても採用されており、通帳や看板などでその姿を見たことがある人も多いはずだ。

リトルボブドッグ
サンワード プロジェクト実績より

「リトルボブドッグ」は、シンプルながらも愛嬌のある表情が特徴であり、流行に左右されない普遍的な魅力を持っている。サンワード社の公式発表にもあった通り、まさに「名前は知らなくても、見たことがある」キャラクターの筆頭格である。

さらに、ウサギをモチーフにした「スキップバニー」など、上田氏は動物を擬人化したポップなキャラクターから、重厚なドラゴンのイラストまで、極めて幅広い画風を使い分ける稀有な才能の持ち主だった。画家出身という経歴が、単なる可愛さだけではない、デザインとしての完成度の高さを支えていたことは想像に難くない。

SNSで広がる惜別の声「日本全国の男子に興奮をありがとう」

訃報が伝えられると、XなどのSNSでは「家庭科のドラゴン」「リトルボブドッグ」といったワードがトレンド入りし、ユーザーからは数え切れないほどの追悼メッセージが寄せられた。

投稿されたコメントの中には「日本全国の男子に、裁縫という授業を楽しくしてくれた興奮をありがとう」といった、感謝の言葉が並んだ。

また、別のユーザーは「リトルボブドッグは、計算ドリルや漢字ドリルでも見かけた。あの独特の画風は一生忘れない」と、学校生活の至る所に上田氏のデザインがあったことを振り返っている。

ファンたちの反応に共通しているのは、「自分の成長過程のどこかに、必ず上田さんのデザインがあった」という実感だ。キャラクターの作者が誰であるかを意識せずとも、その作品が人々の記憶に深く刻まれていることこそ、デザイナーとしての最高の名誉と言えるかもしれない。

時代を超えて生き続けるキャラクターたちの息吹

 

上田修氏が世に送り出したキャラクターたちは、今もなお多くの人々の生活の中に息づいている。裁縫セットのドラゴンは、現在もデザインをリニューアルしながら教材として採用され続けており、リトルボブドッグもまた、駄菓子のパッケージという形で次世代の子供たちに笑顔を届けている。

サンワード社が「印象に残るも見たことがあるけど名前を知らない多くのキャラクターを世に送り出しました」と記した通り、上田氏は表舞台に立つことよりも、作品を通じて人々に寄り添うことを選んだクリエイターだった。

その功績は、単なるビジネスの成功にとどまらず、一つの「日本の児童文化」を築き上げたと言っても過言ではない。私たちが何気なく手に取ったあの教材や、小銭を握りしめて買ったあの駄菓子。そこには常に、上田氏が情熱を注いだキャラクターたちがいた。

上田修さんの遺したデザインは、これからも思い出のアルバムの中で、そして現役の子供たちの手元で、輝き続けることだろう。長年の活動に対し、心からの敬意と哀悼の意を表したい。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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