
インテリア資材はトレンドの変遷が速く、廃番資材の処理が業界の長年の課題だ。サンゲツはこれを「廃棄物」ではなく、独自の質感を備えた「素材」と再定義し、異業種連携によるアップサイクルという解を導き出した。
インテリアの廃番資材を再生する「Lovēco × sangetsu」プロジェクトの全容
株式会社サンゲツは、インテリア資材を活用した造花(アートフラワー)を展開するプロジェクトを開始した。アパレル残布のアップサイクルブランド「Lovēco®(ロヴェコ)」を手掛ける株式会社スペディーレと連携。見本帳の切り替えに伴い発生するカーテン、椅子生地、壁紙の廃番商品を、職人の手仕事によって「Lovēco × sangetsu」という新たなインテリアアイテムへと生まれ変わらせる。現在、品川ショールームにて展示が行われており、今後はグループ会社のECサイト「WARDROBE sangetsu」での販売も予定されている。
壁紙や椅子生地を再定義。他社と一線を画す素材の「質感」と「耐久性」
本取り組みの白眉は、アップサイクルされる素材の「多様性」と「堅牢さ」にある。一般的な布製品の再生は衣類が中心だが、サンゲツが提供するのはプロ仕様の建築資材だ。摩耗に強い椅子生地や、特殊なエンボス加工が施された壁紙は、造花になった際、生花や一般的な造花にはない圧倒的な重厚感と立体感を放つ。「インテリア資材は元来、過酷な環境に耐える設計。それが造花になることで、メンテナンスフリーで長く愛せる強みになる」と同社関係者は語る。素材を繊維に分解するのではなく、その「表情」をそのまま付加価値に変えるデザイン力が、他社の追随を許さない独自性となっている。
「空間創造」のパーパスに見る、サンゲツが目指す循環型社会の哲学
背景にあるのは、サンゲツのパーパス「すべての⼈と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」の実装だ。トレンドの変遷によって市場から姿を消す「廃番」という宿命を、同社は「役割の終了」ではなく、新たな「価値創造の始まり」と捉え直した。スペディーレの「人を大切にする」という理念と、サンゲツの「素材への敬意」が共鳴。消費・廃棄のサイクルを前提としたこれまでのインテリアビジネスに対し、永続的に空間を彩り続ける「枯れない花」という形で、持続可能な社会への意志を表明している。
廃棄コストを付加価値へ。サンゲツの事例から学ぶ「負債の資産化」
ビジネスパーソンがここから学ぶべきは、「負の資産」を「ブランド資産」へと転換する構想力だ。多くの企業が廃棄コストに悩むなか、サンゲツは自社の強みである素材の魅力を再発見し、異業種の技術と掛け合わせることで、新たな顧客接点(EC・ギフト需要)を創出した。環境対策を「義務」に留めず、自社のアイデンティティと結びついた「物語」へと昇華させること。それこそが、サステナビリティを事業成長のドライバーへと変える本質的な手段といえるだろう。



