「印刷」をフックにお客様の課題を本質的に解決するサポートを
印刷会社といえば、「印刷をしてくれる」と思うのが普通。ですが、伸和印刷にオーダーをすると「印刷をしない」という選択肢も提案してくれるというのだから、なんとも面白い。とはいえ創業1953年、70年近く三代に渡り続いているという印刷の腕の確かさも、しっかりと持ち合わせています。今回はそんな伸和印刷の三代目代表取締役社長・仲川文隆さんにインタビュー。
仲川さんは時代の潮流に合わせて印刷のあるべき姿を見直し、印刷という観点から環境問題に貢献するべく、新しいフィールドへの事業を展開。印刷はもちろん印刷だけでないサービス展開という、会社のリブランディングに成功しました。そんな彼が感謝をするステークホルダーとは? お話を伺いました。
——御社のサービスについて、詳しく教えてください。
伸和印刷は今年で68年目になる印刷会社で、私で三代目です。印刷会社なのでサービスのメインはもちろん「印刷」なのですが、個人的に環境問題に興味があり、それを印刷という観点から何かしら貢献できないかということで新事業を提案しています。ここが同業他社との大きく違う点かと思います。また、印刷という紙媒体だけではなく、WebやYouTubeなどオンラインメディアで発信する際のサポートにも視野を広げています。
私たちの目指すのは、お客様の課題を本質的に解決すること。そういった意味では、印刷というの「手段」でしかないと考えています。「お客様のお客様を動かす」ための方法として印刷が最適な手段であれば印刷をするし、それ以外の方法が適切なのであれば印刷以外のことも提案します。そういった意味を込めて、弊社のホームページでは「印刷しないことも提案する」という表現をしております。
——サイトを拝見し、とても興味が湧きました。印刷×環境問題という観点では、具体的にどういった事例があるのでしょうか。
例えば、印刷物が不要になったらゴミとして破棄してしまうことも多いと思います。それを防ぐために「印刷物自体の価値をあげる」という観点での提案もしています。例えば印刷物を手に取った人がより興味を持つような仕掛けとして、QRコードをガチャのデザインにして読み込むことでクジをひけるようなものだとか。実際にこのようなDMを作った際は、QRコードの読み取り率がぐんと上がりました。
反応率が上昇するとDMの部数を減らしても売上が上がり、効率的に結果を出すことができます。部数を減らすことは、コスト削減およびゴミを増やさないという観点から、環境改善にも繋がります。こういった事例のように、印刷物の価値を高めるべく「どんなターゲットにどのタイミングでやるか」といったようなマーケティングの視点でのアドバイスも行います。
——印刷会社としての新しい試みは、三代目として継がれたときに初めて仲川さんが着手されたのですか?
そうですね。私より前の父の代までは普通に印刷サービスのみでした。継いだときに「今の時代は印刷だけでなく何か新しいことやったほうがいい」と考え、現在視野を広げてサービスを展開しているところです。
——「新しいことを」と思われたきっかけは何かあったのですか。
まだ前職のコンサルタント系の会社にいた当時、東日本大震災後に会社の業績が悪化し、父から経営についていろいろと相談を受けていました。このままにしておくとあと半年持つかな……という状態にまでなっていて、何か手を打たねばと。そこで本格的に伸和印刷に参入し、刷新を図る事業計画を立て直しました。
——コンサル系の会社から印刷事業を継がれたのですね。
もともと家業を継ぐつもりもなく、父から継いでほしいという言葉もとくになかったのですが、自分のなかにはいずれ継ぐという意識があったんでしょうね。そのためにも能力を高めるべくコンサルタント業界に身を置いたような気がします。とにかく、自分の能力を高めておきたかったんですね。おかげさまで、事業刷新にともなっていろいろできることがありました。まあ、大変な道でしたけどね(笑)
これから目指すところとしては、いろんな企業の目的って、最終的には「幸せになること」を掲げていらっしゃるじゃないですか。そういうことの、いわば「幸せを広げるサポート」ができたらいいと考えています。その方法が印刷かもしれないし、他の方法かもしれないし。そこをサービスとしてお手伝いできるような会社になれたら、と思っています。
伸和印刷株式会社からステークホルダーへ。「井戸を掘ってくれた人への感謝を忘れずに」
——印刷会社を継ぎ新しいフィールドへと展開していくなかでのステークホルダーへの想いを聞かせてください。仲川さんからのメッセージ、私たちが預かります!
昔からのお客様がたくさんいらっしゃって感謝は限りないのですが……挙げるとしたらニシトさんです。YouTubeやVoicyで様々な無料コンテンツを発信しながら、ニシトアキコ学校という話し方や生き方に関わる学校を開講している方で、学校で最後に受講生が作成する本の制作に関わらせていただきました。私が環境問題や「幸せを広げるサポート」に関心を持ったのは、ニシトさんの影響が大きいです。
ニシトさんのスピーチセミナーを受け、それがきっかけでいろんな学びの場に参加させてもらったことによって、考え方の気づきがありました。かつては自己の能力を周りと比較して、自分の足りないところばかりに目を向けてしまいがちだったのですが、それではいつまで立っても自分の能力に満足することはできないのではないか、とあるとき気づき。
自己否定ベースで物事を考えるより、「自分は十分満たされている」という自己肯定ベースで物を考えられるようになりました。自分のことを認められないときは、人も認められなかった。自分が足りないから、相手の足りないところばかり目につく。そういった感情に変化が起こってからは自然と物事がうまく回るようになったし、自分がやりたいことも見えてきました、ニシトさんにはそういった気づきを与えてくださって感謝しています。
社員は全員に感謝しています。もはや家族のようなつもりでいます。皆、会社のため人生の実現のために一生懸命働いてくださっています。感謝しかありません!
父へはとても感謝をしていますね。私が継ぐ際、父としては大企業を辞めるのはもったいないという感覚もあったようですが、私としてはいまの規模の会社に入ってこそしかできない経験をいろいろとさせてもらっています。いま幸せな状態にあるのは、家業を継いだことも大きいですね。感謝しかありません。
財務関係をお願いしている会社・株式会社アトムズの仁村さん。子会社・株式会社エクシオを一緒に作りました。彼はコスト以上のメリットを出す、と常に邁進してくださり、紹介や提案をしてくれる。本当にありがたいです。彼の言った印象的な言葉で「井戸を掘ってくれた人への感謝を忘れずに」というのがありまして。
それは、新しい人とあっていい関係が築けたのは、その人に引き合わせてくれた誰かのおかげ。という考え方で、つまりは、大元を切り開いてくれた人への感謝を常に忘れないように、ということです。そうしていると、いろんな人に対して感謝が溢れ出てきます。
僕は1979年生まれなのですが、同学年の未年、申年の経営者が集まる「羊猿(ようえん)会」というのがあります。この会がきっかけで、前述のニシトさんにも仁村さんにもお会いできました。
羊猿会に誘ってくださったのが、TESTEA(テスティー)という個別指導塾の塾長をされている繁田和貴さん。『開成番長の勉強術』という著書も出されています。ちなみに、繁田くんは中学時代からの旧友。高校時代は一緒にバンドを組んでいた仲です。私が会社を継いだタイミングで経営者同士ということもあり、この会に誘っていただきました。おかげさまでいろいろと仕事が広がり、感謝しています。
ライフデザイナー 兼 ADDress 事業開発担当・池田亮平さん
羊猿会を作ってくださった方たちです。この2方が言うなれば「井戸を掘ってくれた人たち」ですね。この2人が羊猿会を作ってくださなければ、そもそも始まっていません。いろいろな出会いや繋がりに、本当に感謝しています。
日本でのサーキュラーエコノミー推進を行うサーキュラーエコノミー・ジャパンという団体に所属し、「作って捨てる」ではなく「循環させる」ことを掲げ、地球環境についての最新事例の共有や団体に所属する企業間での活動・行動をしています。私たちの会社としては「印刷でのSDGs対応サポート」とうたっているのですが、つまりはお客様に対し「どういう印刷物を作っていくのか、方針を決める」を大前提にした提案をしています。
>例えばアップルやアマゾンなどでは、企業として「印刷物の使用」について方針を打ち出しています。アップルではどれくらい紙を再生したかなどを公開し、環境問題への解決のフックとしています。そういったことをうたっている日本の会社は、私が知っている限りでは今のところありません。環境問題により関心が集まる今の時代だからこそ、紙の使用について見つめ直し発信することで、企業のブランド価値向上にも繋がると考えています。そうすることで仕様を共通化でき、コスト削減にも繋がるのです。
初期費用0円でコスト削減できる新クリーン電力サービス、アスエネ。SDGsへの取り組みの観点としてひとつ大きくできることとして電気の問題があると思い切り替えを検討していたところに紹介していただいて、去年から使用させてもらっています。再生可能かつ、コストも削減できるところがすごいですね。会社としてSDGsの考えを取り入れるという観点でも、大きく貢献していると思います。
朝日信用金庫さん
先代からお取引がある、みずほ銀行さんと旭信用金庫さんには感謝です。お金を借りることができなければ、事業を回していけませんから。
冒頭の話にも通ずるところがありますが、未来世代に「自分はちゃんと満たされている」という発想を持ってもらうというところを最終目的に据えて、「幸せを広げる活動」になりうる事業を展開していけたらと思っています。誰か一人が幸せの核となって変わっていくと、その周りから派生し、ひいては世の中が良い方向に変わっていくと思います。私たちは「印刷」という一つの手段、またはそれ以外の手段を通じてそのお手伝いをしていけたら、と考えます。
【企業概要】
伸和印刷 株式会社
代表取締役社長 仲川文隆
〒110-0016 東京都台東区台東1-13-6
03-3833-5651