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クレイジージャーニー終了へ 深夜発バラエティーが投げかけ続けた問い ゴールデン移行の果てに

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クレイジージャーニー
クレイジージャーニー 公式Xより

深夜帯で熱狂的な支持を集め、満を持してゴールデン帯へ進出したTBS系バラエティー番組「クレイジージャーニー」が、来年3月で終了することが分かった。視聴率の物差しでは測れない独自性を貫いた番組の幕引きに、惜別と問題提起の声が交錯している。

 

深夜帯から始まった異端の成功例

TBS系バラエティー番組「クレイジージャーニー」(月曜・後10時)が、来年3月で終了することが19日、スポーツ報知の取材で分かった。TBSは同紙の取材に「番組の制作過程についてはお答えしていません」と回答している。

2015年正月の特別番組としてスタートし、同年4月に深夜枠でレギュラー化。世界各地の辺境や危険地帯を訪れる“旅人”の体験談を、スタジオで検証する伝聞型紀行バラエティーという形式は、当時のテレビでは極めて異色だった。
「見せる」のではなく「聞かせる」。編集で感情を誘導しすぎない作りが、深夜帯の視聴者と静かに共鳴していった。

 

丸山ゴンザレスに象徴される取材主義と危うさ

番組の代名詞となったのが、裏社会ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏による海外潜入企画だ。中南米のスラム街、ギャング支配地域、麻薬流通の最前線など、通常の報道取材ですら敬遠されがちなエリアに踏み込み、現地の実態を淡々と伝えてきた。

重要なのは、これらが「危険を売りにした企画」ではなかった点だ。犯罪や貧困の背景にある社会構造、国家や行政の統治不全、経済格差の固定化といった要因が、旅人の証言を通じて浮かび上がる構成だった。
一方で、出演者の安全確保や倫理的配慮というリスクを常に伴う企画でもある。だからこそ、深夜帯という比較的自由度の高い枠で成立していた側面は否めず、ゴールデン帯では制作上の制約がより強まったとみられる。

 

松本人志不在でも維持された「聞く姿勢」

番組開始当初のMCは、松本人志、設楽統、小池栄子の3人。笑いのために話を消費せず、旅人の証言に対して時に言葉を失い、その沈黙すら受け止める姿勢が番組のトーンを形作っていた。

松本の活動休止に伴い、2024年2月19日放送分からは設楽と小池の2人体制に移行。番組の構造上、MCが前に出過ぎることはなく、むしろ「聞き役」に徹することで、テーマの重さを損なわない進行が保たれた。
スターMCの不在によって番組が瓦解しなかった点は、クレイジージャーニーが“フォーマット主導”の番組だったことを示している。

 

ゴールデン昇格が突きつけた数字とコストの壁

2019年9月に一度終了した後、2022年10月からゴールデン枠で復活。今年10月には放送100回を迎えた。だが、近年は世帯視聴率3%台を記録する回もあり、数字面では苦戦が続いた(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

スポーツ報知によると、同局関係者は「海外ロケが多く、円安の影響で制作費が厳しくなった可能性がある」と語っている。渡航費や安全対策費の高騰、世界情勢の不安定化は、番組の根幹である海外取材を直撃した。
ゴールデン帯に求められる安定した視聴率と、番組の成り立ちそのものが抱える高コスト構造。このギャップが、終了判断に影を落としたとみられる。

 

視聴率では測れない問題提起と惜別の声

クレイジージャーニーが評価された理由は、娯楽の枠を超えて社会の歪みに光を当てた点にある。フィンランドにおける移民政策の影響として、薬物汚染や貧困層の外国人街が形成されている現実など、通常のニュース番組が踏み込みにくいテーマを、現地取材を通じて提示してきた。

移民問題の負の側面は、日本のテレビにおいて扱いが難しい領域だ。番組は結論を押し付けることなく、現場の声を提示し、視聴者に考える余地を残した。
だからこそ終了の報に接し、「特番でもいいから続けてほしい」「この番組だけは代えが利かない」といった声が相次いでいる。

来年3月で幕を閉じるクレイジージャーニー。その不在は、テレビがどこまで現実に踏み込めるのかという問いを、改めて突きつけている。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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