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世界最下位水準の日本の有給休暇 取得率低迷の理由と制度見直しの動き

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日本の有給休暇取得率
DALL-Eで作成

日本の有給休暇取得率が国際調査で世界最下位水準にとどまっている。法律で付与が義務付けられた制度でありながら、「忙しさ」や「人手不足」を理由に十分に活用されていない実態が改めて浮き彫りになった。一方で、年休取得を巡る裁判例が相次ぐほか、独自の休暇制度を導入して取得を後押しする企業も現れている。低迷する取得率の背景と、変わり始めた有給休暇制度の現在地を整理する。

世界調査で判明した日本の低い取得率

米旅行予約サイト大手エクスペディアが発表した有給休暇に関する国際調査によると、2023年の日本の有給休暇取得率は63%にとどまり、調査対象となった世界11地域の中で最も低かった。
調査は2024年3月26日から4月3日にかけて実施され、日本を含む世界11地域で働く1万1580人を対象に行われた。定められた有給休暇日数に対し、実際に取得した割合を「取得率」として算出している。

日本の平均取得日数は12日で、フランスの29日、香港の28日、ドイツの27日などと比べても低い水準だった。国際比較の中で、日本の休暇取得の少なさが改めて浮き彫りになった。

 

取得を妨げる要因は「仕事の都合」

有給休暇を十分に取得できない理由として最も多かったのは「人手不足など仕事の都合上、取得が難しいため」で32%だった。
次いで「緊急時に取っておくため」が31%、「忙しすぎて休暇の計画を立てる暇がなかった」が20%と続いた。業務の繁忙さや人員体制が、取得の大きな壁となっている実態がうかがえる。

一方で、「休み不足を感じていない」と回答した日本の労働者は47%に上り、調査対象地域の中で最も高かった。取得率は低いものの、主観的な満足度は必ずしも低くないという、日本特有の傾向も示された。

 

JR東海の年休訴訟 大阪地裁は請求を棄却

有給休暇を巡る問題は、司法の場でも争われている。JR東海の元新幹線乗務員の男性が、希望通りに年次有給休暇を取得できなかったとして損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁が原告の請求を棄却していたことが報じられた。

男性は2015年から2016年にかけて年休を128回申請したが、そのうち95回が希望通りに認められず、7日分が時効により消滅したとして、約40万円の賠償を求めていた。
判決は、会社が恒常的な人員不足を理由に時季変更権を乱用したとは認められず、他の従業員の取得状況を踏まえた調整の結果だと判断した。直前の変更についても「不合理とはいえない」と結論付けた。

労基法が定める原則と「時季変更権」

年次有給休暇について、労働基準法39条は、労働者が請求した日に休暇を与えることを原則としている。一方で、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者に「時季変更権」を認めている。

裁判所は、この時季変更権の行使が適法かどうかを、職場の人員体制や業務内容、他の労働者の取得状況など、具体的事情に即して判断する。別の裁判では、企業側の対応が違法とされ、賠償が命じられた例もあり、判断は一様ではない。

 

休暇取得を後押しする企業の動き

取得の難しさが指摘される一方で、休暇取得を積極的に促す企業の取り組みも広がりつつある。アパレルEC事業を展開する夢展望は2025年11月28日、従業員が自身の「推し」や「好き」を応援するために使える特別休暇「推し活休暇」を導入したと発表した。

制度は全社員を対象とし、年間2〜3日を目安に、イベント参加やリフレッシュ、自己研鑽など幅広い目的で利用できる。企業理念である「すべての女の子の『かわいい』を応援する」という考え方を、働き方の制度面にも反映させる狙いだとしている。

 

有給取得を巡る企業リスクと今後

年次有給休暇は法律で付与が義務付けられた制度であり、合理的な理由なく取得を拒むことは法令違反にあたる可能性がある。
JR東海の事例では企業側の対応が適法とされたが、別の裁判では企業に賠償が命じられており、運用次第では大きなリスクを抱えることになる。

休暇取得を前提とした人員配置や業務設計に踏み込む企業が現れる一方、従来型の運用を続ける企業も少なくない。有給休暇を巡る対応の差は、今後さらに企業間で広がる可能性がある。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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