
フジテレビの人気バラエティー番組収録中に「SUPER EIGHT」横山裕(44)が骨折する事故が起きた。番組側は謝罪したが、近年、タレントや出演者が収録現場で負傷する事例は相次いでおり、テレビ制作現場の安全管理の在り方が改めて問われている。
フジテレビ「ドッキリGP」で発生した横山裕の負傷事故
フジテレビは12日、バラエティー番組「芸能人が本気で考えた!ドッキリGP」(土曜午後7時)の公式サイトを更新し、収録中の事故で「SUPER EIGHT」の横山裕(44)が右肋骨骨折および腰椎捻挫のけがを負い、全治2カ月と診断されたと発表した。
公式サイトによると、事故が起きたのは12月11日午後。番組ロケ中、横山が回転台の上に乗るゲーム企画に参加していた際、バランスを崩して身体を強く打ったという。
番組側は「横山さんが怪我をされたことについて、大変申し訳なく、心より御見舞い申し上げます」と謝罪し、「関係者の皆様、ご迷惑をおかけした皆様に心よりお詫び申し上げます」とコメントした。
さらに「横山さんの一日も早いご回復をお祈りするとともに、今後は番組制作上の安全管理をより一層徹底してまいります」とし、再発防止に努める姿勢を示した。
単発ではない番組収録中の事故の連鎖
横山裕の負傷は、偶発的なアクシデントとして片付けられるものではない。近年、テレビ番組の収録現場では、ジャンルや局を問わず出演者が負傷する事故が相次いでおり、構造的な問題が浮かび上がっている。
11月に収録が行われたTBS系スポーツバラエティー「最強スポーツ男子頂上決戦2025冬」では、俳優の佐野岳(33)が競技中に負傷した。診断は右膝の半月板損傷と靱帯断裂で、全治8~9カ月。
日常生活だけでなく、俳優としての身体表現にも長期的な影響が及ぶ重傷だった。番組は肉体能力の限界に挑むことを売りにしてきたが、その裏側で、出演者の身体的リスクがどこまで管理されていたのかは十分に検証されたとは言い難い。
さらに11月末には、TBS系情報番組「THE TIME,」の企画取材中に、フリーアナウンサーの原千晶(35)が負傷したことを公表した。左脛骨高原骨折で全治3カ月とされ、階段や段差の多い場所での取材だった可能性も指摘されている。バラエティーだけでなく、報道・情報番組の現場においても、安全対策が後回しにされてきた実態が透けて見える。
これらの事例に共通するのは、「番組として成立するか」「画になるか」といった演出上の判断が、出演者の安全よりも優先されてしまう構造だ。特に人気番組や大型特番では、過去の成功体験が踏襲されやすく、「これまでは大丈夫だった」という慢心がリスク評価を甘くする要因になりやすい。
また、出演者側も立場上、企画内容に強く異議を唱えにくい事情がある。タレントや俳優は番組への出演機会を失うことを恐れ、多少の危険が伴っても受け入れてしまうケースが少なくない。結果として、制作側と出演者の力関係が、安全配慮を形骸化させる温床になっているとの指摘もある。
番組収録中の事故が続発している現状は、個々の制作チームの問題にとどまらない。業界全体でリスク管理の基準を再確認しなければ、同様の事故は今後も繰り返される可能性が高い。横山裕の事故は、その警鐘を改めて強く鳴らす出来事となった。
バラエティー演出と安全確保のせめぎ合い
バラエティー番組は、視聴者に驚きや笑いを届けるため、体を張った企画やスリルのある演出が多用される。その一方で、演出が過剰になれば、出演者の身体に大きなリスクを伴う。
今回の横山の事故でも、回転台という装置の安全性や、転倒時の衝撃を軽減する対策が十分だったのかが問われている。
制作現場では、事前リハーサルや注意喚起、医療スタッフの待機などが行われるのが通例だが、短期間で成果を求められる制作スケジュールや、人気タレントの過密日程の中で、安全確認が形骸化していないかという指摘もある。
横山裕の多忙な活動と今後への影響
横山は来年1月16日スタートのテレビ東京ドラマ「元科捜研の主婦」(金曜午後9時)で、初の父親役に挑戦する予定だ。松本まりかが演じる元科捜研のエースだった妻の推理力を軸に、一家で事件解決に挑む作品で、横山は新米刑事の夫役を演じる。
本人は「父親役は初めてで不安もありますが、弟がいるので距離感は自然にできると思っています」と意気込みを語っていただけに、今回のけがが撮影スケジュールに与える影響が懸念される。
さらに、ABEMAドラマ「スキャンダルイブ」への出演や、日本テレビ系「ヒルナンデス!」「ザ!鉄腕!DASH!!」といったレギュラー番組も抱えており、仕事量は多い。
だからこそ、今回の事故は本人だけでなく、関係各所にも大きな影響を及ぼす。
テレビ制作現場に突き付けられた課題
番組側が謝罪し、再発防止を表明することは不可欠だが、それだけで問題が解決するわけではない。事故が起きるたびに個別対応を繰り返すのではなく、業界全体で安全基準や演出の在り方を見直す必要がある。
出演者が同意している場合でも、危険性の高い企画を実施することの是非や、制作側の責任の重さは軽減されない。
視聴者が求めているのは、出演者が傷つく姿ではなく、安心して楽しめるエンターテインメントだ。相次ぐ番組収録中の事故は、テレビ制作の現場が安全と演出の原点に立ち返るべき時期に来ていることを強く示している。



