日本トイザらスおもちゃ回収で廃棄ゼロへ小売業が実践するサーキュラーエコノミーの設計図

玩具小売の最大手が、使われなくなったおもちゃの再利用を事業の柱と結びつけ、持続可能な社会への貢献と、子どもの豊かな成長を両立させている。

299点をリユースおもちゃ回収キャンペーンを全国拡大

日本トイザらス株式会社は、サステナブルな取り組みとして実施した「おもちゃのリユース大作戦」を通じ、合計440点のおもちゃをクリスマスプレゼントとして全国32の児童養護施設や保育園などに寄付した。

同キャンペーンは、2025年3月に1店舗で試験的にスタートした後、10月17日から11月20日の期間には全国7店舗へと拡大して実施された。この拡大キャンペーンでは、顧客から299点のおもちゃが回収された。これに、トイザらスオリジナルブランド「Playpop」の新品おもちゃ141点を合わせて寄付した。

回収されたおもちゃは、清掃や選別を経て次の持ち主へ届けられる「資源」へと生まれ変わる。同社は、遊ばなくなったおもちゃを回収し、資源の有効活用と、「笑顔の輪を広げる」ことを目的に掲げ、この取り組みを来年度以降も継続・拡大していく方針を示している。

小売店インフラで実現する「おもちゃの再流通」モデル

トイザらスによる「おもちゃのリユース大作戦」の独自性は、単なる慈善活動として終わらせず、事業との自然な連動性に貫かれている点にある。

多くの企業が環境対策として一般的なリサイクルや寄付を行う中、同社は「おもちゃの小売業」というその中核事業が抱える課題、すなわち「商品のライフサイクル」に正面から向き合っている。子どもたちの成長に伴って「遊ばなくなった」おもちゃは、大量に家庭で発生する。これを単に廃棄せず、小売店のインフラ（店舗網）を活用して回収し、最も必要とする施設へ届けるという流れを構築した。

回収に際し、顧客にはスターカードポイント100ポイントを付与。これは、環境貢献へのインセンティブとして機能するだけでなく、顧客の再来店を促す経済合理性も有している。また、寄付品に自社ブランドの新品おもちゃを加えることで、リユース品の補完と同時に、自社ブランドの認知向上にも繋がる。

つまり、トイザらスは、サプライチェーンの川下（購入後）の活動を、環境（リユース）、社会貢献（寄付）、経済（再来店インセンティブ）の3つの側面で統合した、サーキュラーエコノミーの構築に小売業として独自のアプローチを試みている。

資源有効活用と子どもの「遊びの機会」の確保

この取り組みの背景には、同社が掲げる哲学、特にオリジナルブランド「Playpop」のコンセプトが深く関わっている。「Playpop」は「たのしい時間をみんなで。わくわくをみんなに届けよう！」をコンセプトに、「遊びを通じて個性を尊重し、世界をつなぎ、すべての人にわくわくと喜びを届ける」ことを目指している。

遊ばなくなったおもちゃを「次の持ち主」へつなぐという行動は、まさにこの「喜びの共有（わくわくをみんなに）」を物理的に実現するものだ。おもちゃは、子どもにとって単なる「モノ」ではなく、成長と学習、創造性の源泉である。同社は、環境負荷の軽減という大義と同時に、「遊びの機会を失った子どもたちへ、成長の機会を再提供する」という社会的な役割を意識していると見られる。

同社が自社ブランドの新品おもちゃを寄付品に加えることは、「喜び」を分かち合うという哲学を体現するものであり、単に「要らなくなったものを回す」のではなく、「質の高い遊びの体験を届ける」という強い意思の表れであると言える。