
「設定と外見のチームが別だった」「偶然似てしまった」。12月5日の釈明文に対し、ユーザーからは「その確率でその見た目は無理がある」と冷ややかな声。上場企業の苦しい弁明は、逆に信頼を損なう結果となった。
VTuber事務所「ホロライブ」を運営するカバー株式会社が、メタバース『Holoearth』内の不謹慎NPC騒動について、12月5日に詳細な謝罪文を公開した。
池袋暴走事故の加害者・飯塚幸三元受刑者を想起させる「コウゾーさん」について、同社は「意図したものではない」と強調したが、その経緯説明が「あまりに苦しい」として、火に油を注いでいる。
「チームが別だから」という責任転嫁
今回、カバー社が持ち出した論理は「組織の分断」と「偶然」だ。釈明によれば、「キャラ設定(名前・内面)を考案するチーム」と「アバター(外見)を作るチーム」は独立して作業していたという。
設定チームは「農業経営者」としてキャラを構築。一方、外見チームは「作業服などの素材が不足していたため、ありあわせの現代的なアイテム(白ハットや眼鏡等)で代用した」と説明した。つまり、「農業設定の『コウゾー』という名前」と、「偶然できあがった『飯塚氏似の外見』」が、連携ミスで不幸にも合体しただけであり、「特定の人物とは無関係」だというのだ。
「奇跡的な確率」への違和感
この説明を額面通り受け取るユーザーは少ない。ネット上では、「農家を作るはずが、なぜ作業着ではなく白ハットにスラックス、眼鏡姿になるのか」「名前が『コウゾー』になった時点で、外見担当が寄せたとしか思えない」といった指摘が相次いでいる。
あるゲーム業界関係者は呆れ顔でこう語る。
「アバターの組み合わせは無数にある。その中でピンポイントにあの事故の加害者を想起させる服装になり、かつ名前が一致する確率は天文学的数字です。『チームが別だった』というのは責任の所在を曖昧にする常套句だが、今回はさすがに無理筋でしょう」
信頼回復には程遠く
同社は当該キャラを削除し、今後は「企画段階からの検証(シフトレフト)」や「モブキャラへの命名廃止」で再発を防ぐとしている。しかし、求められていたのは官僚的な対策発表ではなく、「なぜ悪意ある“おふざけ”が混入したのか」という真摯な反省だったはずだ。「意図的ではない」と言い張ることで、かえって「無意識でこれが作られる開発体制のヤバさ」を露呈してしまった。
社名は「カバー」だが、今回の下手な言い訳では、失墜したモラルと信頼をカバーしきることはできなかったようだ。



