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世界的リゾート野沢温泉と北斎の小布施が初共演 栗の鬼皮アップサイクル“OBUSE GIN”誕生の裏側

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世界的リゾート野沢温泉と北斎の小布施が初共演 栗の鬼皮アップサイクル“OBUSE GIN”誕生の裏側
提供:Nozawa Onsen Distillery株式会社

野沢温泉と北斎ゆかりの小布施が、地域資源と文化を束ねたクラフトジンを生み出した。栗の鬼皮をアップサイクルし、東町祭屋台天井絵「龍」を纏う特別ボトルを採用。北信州を一つの“文化圏”として世界へ発信する挑戦が始まった。

 

北斎アートを纏う特別ボトル──野沢温泉と小布施が描く“広域コラボ”の現在地

野沢温泉蒸留所を運営するNozawa Onsen Distillery株式会社が、小布施町と共同で「OBUSE GIN」を先行限定販売した。ボトルには北斎の代表作の一つ、東町祭屋台天井絵「龍」が施され、地域の芸術と蒸留文化を重ねた一本に仕上がっている。

秋の野沢温泉は透明感のある空気が広がり、静かな冬支度の季節を迎える。この土地の空気感を閉じ込めたようなジンは、地域の自然・文化・歴史を一体にまとめた商品構造を持つ。価格は500mlで5,350円(税込)、200mlで2,750円(税込)。蒸留所店頭のほか、公式オンラインや小布施・中野エリアの店舗で販売される。

廃棄される“栗の鬼皮”を資源に──小布施の循環型ジンづくり

最大の特徴は、通常は捨てられる小布施の栗の“鬼皮”をボタニカルとして再生した点である。小布施町は栗の名産地として知られ、加工過程では大量の廃棄残渣が発生してきた。

「この苦味と渋みには個性がある」。
蒸留責任者サムがそう語るように、廃棄物を価値に転換する視点が今回のジンづくりの起点となった。鬼皮の渋みは、深みのある味わいをつくる重要な構成要素となっている。

信州そばから“韃靼(ダッタン)蕎麦”を選んだ理由──風土を味わいへ翻訳

 

秋の信州を象徴する“そば”をボタニカルに──その発想から採用されたのが韃靼(ダッタン)蕎麦である。標高1,500〜4,000mの厳しい環境で育ち、通常の蕎麦の約100倍のルチンを含む。

長野県の日穀製粉グループ「ファームめぶき」で栽培された韃靼蕎麦は、野沢温泉の湧水との相性がよく、ジンに厚みと余韻をもたらしている。

スパイスの系譜──蒸留責任者の曽曽祖父に連なる“ターメリック”の物語

ターメリック(秋ウコン)を採用した背景には、蒸留責任者サムの家族史がある。
日本でカレー文化が根付く以前、スパイスを独自にブレンドし日本風にアレンジした先駆者が、彼の曽曽祖父だったという。

「季節が変わると、カレーやシチューが食べたくなるでしょう。あの香りは、人の記憶に残るんです」
サムは静かにそう語る。OBUSE GINに加えられたターメリックは、味のレイヤーを整える役割を担っている。

さらに、愛知県・萬秀フルーツのベルガモットピールが爽やかさを補い、野沢温泉の湧水が全体をまとめ上げることで、香りと深みを併せ持つ一本が完成した。

北斎の小布施を象徴する「龍」──地域文化を“飲めるアート”へ

小布施町は北斎が晩年に滞在し、多数の作品を残した地である。その象徴が、豪商・高井鴻山の依頼で描かれた東町祭屋台の天井絵「龍」だ。今回のラベルは、この文化遺産を現代の工芸へ翻訳する試みであり、“飲めるアート作品”ともいえる仕上がりとなった。

地域工場を蒸留所へ──野沢温泉が示す“ローカルブランドの進化形”

 

野沢温泉蒸留所は、かつて村の食を支えた缶詰工場を改装して2022年に開業した。クラフトジン4種が2023年の世界的品評会SFWSCで全て金賞を受賞し、国際的評価を獲得している。

蒸留所は現在、シングルモルトの生産も拡大しており、初リリースは2026年を予定する。地域観光、アート、農業、ものづくりをつなぐ新しい地域産業モデルを提示している点に、同施設の存在意義がある。

廃棄物から文化へ──北信州が描く“広域文化圏”構想の可能性

今回のプロジェクトが示すのは、単なる商品開発ではない。
野沢温泉、小布施、信州そば、北斎アート。
本来は別々に存在していた資源を束ね、一つの“文化圏”として外に発信する手法である。

廃棄物の価値転換、地域文化の再評価、観光と産業の統合──地方発ブランドが世界市場で存在感を持つためのヒントが詰まっている。

北信州が複数の資源を一本のジンに凝縮したように、この地域を巡る文化の連鎖は、今後さらに広がりを見せるだろう。

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サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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