
有楽町の冬の空気は澄み、プラネタリウムへ向かう列の先で、久々に高まる“歌姫・中森明菜”への期待が静かに膨らんでいた。
雑誌で語った「また人を信じられるかもしれない」という柔らかな一言が、長く続いた沈黙を揺らし、ファンの胸に灯をともす。
プラネタリウム上映、ラジオ特番、聖子カバー、そして新曲制作。
さらに気になるのは、年末恒例“紅白歌合戦”への出場はあるのかという点だ。
60代を迎えた明菜の再生の軌跡を追った。
「また信じられる」60代の明菜が見せた新たな表情
雑誌『VOGUE JAPAN』と『GQ JAPAN』のインタビューで語られた言葉は、ファンの胸を強く揺さぶった。
「人を信じなくなったこと(笑)。でも、60代になった今、これからまた人を信じられるときがやってくるかも」
家族との断絶が生んだ深い傷。
1995年を境に長い年月を費やした人間不信の影は濃かったが、この日の明菜は不思議なほど柔らかい光をまとっていた。
長く閉ざされていた扉が、少しだけ開き始めたように見えた。
プラネタリウム上映が満席続出 4Kで甦る“伝説のステージ”
11月28日から始まる『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム』は、開始前から話題が絶えない。
東京・有楽町の会場では、紅白出演時の衣装を再現したアクリルスタンドや、春夏秋冬をテーマにしたブロマイドを手に並ぶファンの姿が見られた。
上映を担当する企業によれば、11月の回はほぼ満席。
暗いドームスクリーンに浮かび上がる鮮烈な映像は、1980年代の熱狂をそのまま甦らせる。
昭和、平成、令和、三つの時代を越え、明菜の歌声が再び広がる瞬間、会場の空気は張りつめる。
4時間のANN特番へ “声”から始まる復帰の歩み
12月12日には、ニッポン放送『オールナイトニッポンGOLD』で初のパーソナリティを務める。
ミッツ・マングローブと垣花正を迎え、リスナーのリクエストとともに1年を振り返る4時間の生放送だ。
「どんなリクエストやメッセージをいただけるかとても楽しみです!」
と本人がコメントしたように、歌うことに慎重な今の明菜にとって、声でつながる場は大きな意味を持つ。
再びファンと触れ合うための、確かな一歩だった。
松田聖子カバーに込めた「少女の私」 静かな原点回帰
松田聖子のデビュー45周年企画アルバムに参加し、「赤いスイートピー」をカバーした明菜。
インスタグラムに投稿されたコメントには、誰もが思わず胸を打たれる言葉が並んでいた。
「この偉大な楽曲をどう歌うか非常に悩みました。最終的に、初めてこの曲を聴いた少女の頃の自分に立ち返りました」
80年代を代表する二人。
ライバル視され続けた“象徴の存在”を歌うという選択に、明菜の成熟と柔らかな覚悟がにじむ。
優しい声色で紡いだ“赤いスイートピー”には、少女時代のきらめきと、大人になった彼女だけが出せる深みが宿っていた。
新曲への渇望 米津玄師への憧れと、静かに進む交渉
明菜の完全復活の象徴として最も期待されるのが新曲の存在だ。
関係者によれば、明菜のスタッフはすでに制作チームとの話し合いを進めている。
かつて彼女の代表曲を支えた制作ディレクターに依頼したものの、条件の折り合いがつかず交渉は難しい状況が続いているという。
しかし、その中で明菜の心に浮かんでいる名前がある。
本人が“雲の上の人”と語る米津玄師だ。
彼の音楽に強い敬意と憧れを抱いており、もしも楽曲提供が叶えば、時代を越える歴史的なコラボレーションになる。
舞台に立つことへはまだ恐れも残る。それでも新しい音楽を求める気持ちは確かに息づいている。
「また誰かを信じられるかもしれない」という言葉を支えに、彼女は静かに前へと進んでいる。
“紅白復帰”はあるのか NHKホールに灯る淡い希望
年末が近づくと必ず囁かれる「中森明菜、紅白歌合戦に復帰するのではないか」という期待。
今年は例年以上に、この声が強くなっている。
2014年のサプライズ出演以降、生放送のステージからは遠ざかっているが、プラネタリウム上映や聖子カバー、ラジオ特番、そして新曲の兆し。
復活に向けた動きがいくつも重なっている今年の状況は、NHKにとっても大きな魅力となる。
ただ、極度のあがり症であることや体調面の不安は無視できない。
それでも、出演は歌唱に限られない。映像コメント、事前収録、メッセージのみといった柔軟な参加の形もある。
実現すれば、どの形であれ復活宣言としてのインパクトは絶大だ。
冬のNHKホールに灯る光の中で、ふと彼女の名前が呼ばれる可能性は、決して夢物語ではない。
ファンが願う“明菜自身の幸せ”
インタビューで彼女が語った《誰かがハッピーであること》という言葉。
ファンはその優しさを知っているからこそ、「まず明菜が幸せであってほしい」と願う。
プラネタリウムのスクリーン、ラジオブース、そして新曲への期待。
ひとつずつ重ねられる復帰のピースは、確かな形になりつつある。静かに、しかし確実に。
中森明菜は、再び光の中心へ歩き始めている。



