
SNSで拡散された一枚の写真が、坂道グループの“現在地”を映し出した。
乃木坂46のメンバーが高校を訪れた際、生徒たちが無反応だったという映像が「お遊戯会」と揶揄され、若者離れやファン層の高齢化を指摘する声が広がっている。
かつて“清楚の象徴”として時代をリードした乃木坂46に何が起きているのか。一方で、櫻坂46はライブ動員とセールスで勢いを増し続けている。
両者の“明暗”は、アイドル文化の変化そのものを映している。
SNSをざわつかせた「無反応の教室」
秋の気配が深まる11月上旬、SNS上に一枚の写真が流れた。乃木坂46のメンバーが高校の教室を訪れた際、生徒たちがほとんど反応せず、静まり返った教室の空気が切り取られていた。その一瞬を写した画像が拡散されると、コメント欄には辛辣な言葉が並んだ。
「制服着て鼻声で踊るだけのお遊戯会グループ」「現役高校生から人気なくなってきて安心した」。
引用リポストは2.8万件、いいねは5万件を超え、秋元康氏プロデュースの「坂道グループ」への“若者離れ”論が一気に広がった。
かつて国民的ブームを巻き起こした乃木坂46。その名を聞けば、清楚な制服と笑顔を思い浮かべる人も多い。だが、今やその“王道の清楚”が時代に合わなくなっているのかもしれない。
「おじさんターゲット」論の根にある構造変化
批判の矛先は、「ファン層の高齢化」にも向いた。
「お金を持っている中高年男性がターゲットなのでは」「若者より“おじさん市場”を重視している」といった意見が相次いだ。
一方で、こうした変化は必ずしも衰退を意味しない。長年支える固定ファン層の存在こそ、アイドルの安定的な収益基盤でもある。
ただし、SNS主導のZ世代文化では、拡散の軸が「新しさ」と「共感」に置かれる。既存ファンに依存する構造は、若年層への発見導線を細らせているのだ。
若者が惹かれるのは「共感と圧倒的パフォーマンス」
TikTok世代が熱狂するのは、FRUITS ZIPPERやME:Iといった新世代アイドル。
軽やかな編集感覚と高いダンススキル、SNSを中心にした発信で、ファンとの距離を詰めている。
「ダンスや歌の完成度が高く、表情もリアル」「推しの“今”がスマホ越しに見える」
Z世代が求めるのは、完成度よりも日常と地続きの熱量だ。
一方で乃木坂46の「制服」「清楚」「物語性」といった象徴は、10年前の“理想像”を引きずっているようにも映る。
ファンの中には「初期の白石麻衣、西野七瀬の時代は学生にも人気だった」と懐かしむ声もある。変化の波に乗り遅れた印象が、SNSでは“お遊戯会”という比喩にすり替わったのだ。
現場では“若返り”も進行中
しかし、実際のライブ会場では違う景色も広がる。
東京ドームの通路を歩けば、制服姿の高校生や若いカップルが目立つ。
「現場は老若男女が入り混じっていて、むしろ世代の多様性が増している」と語るファンもいる。
SNSで切り取られる“瞬間的な冷笑”と、現場での熱気。その乖離こそ、今の乃木坂が置かれた複雑な立ち位置を物語っている。
対照的な存在 櫻坂46の“熱狂の構造”
一方、姉妹グループ・櫻坂46は別の地平を見ている。
11月5日発表のオリコン週間合算シングルランキングで、13thシングル『Unhappy birthday構文』が12作連続1位。初週50万ポイントを超えるハーフミリオンを達成した。
その勢いの背景には、ライブ体験を核にした“熱狂の構造”がある。
東京ドーム3DAYSや京セラ2DAYSでは、ノンストップ構成の3時間ステージで観客を圧倒。MCを排し、映像・照明・振り付けを一体化させたステージングは「女性アイドルの新しい形」と評される。
ファンたち「Buddies」はSNSで日々投票や配信応援を重ね、リアルサウンドによると、その行動がセールスの数字を押し上げているという。
「ライブに行くことが支援につながる」「投票すれば街中で曲が流れる」。
推し活の熱量が“日常化”していることが、櫻坂の強みだ。
清楚から“共創”へ 乃木坂46が進むべき次の一歩
清楚で王道、メディア中心の乃木坂らしさは、日本のアイドル文化の完成形だった。
だが、Z世代は参加型でなければ心を動かされない。
固定ファンとの絆を守りながら、新しい世代と「共に物語を作る」仕組みが必要だ。
それは、ライブ体験の再設計かもしれないし、ショート動画での発信かもしれない。
時代の変化を受け止めたその先にこそ、再び“乃木坂らしさ”を更新するヒントがある。



