
和歌山の老舗油脂メーカー・築野食品工業が、東北大学大学院農学研究科とインドネシア・ガジャ・マダ大学と組んで行った研究成果が、国際学会誌「Food Research International」に掲載された。
テーマは、こめ油を調合した際にどのように抗酸化作用が働き、食品の保存性を高めるのか。その“仕組み”の解明だ。
こめ油の「隠れた力」に光
米ぬかを原料とするこめ油は、健康油として知られる一方、酸化に強く長持ちする油でもある。今回の研究は、こめ油を他の油とブレンドした場合にどうなるのかを科学的に追ったものだ。
結果は興味深い。こめ油に含まれる抗酸化成分「γ-オリザノール」が、主要成分である「トコフェロール(ビタミンE)」の働きを長く保ち、酸化を防ぐ“後押し役”になっていることがわかった。つまり、こめ油は単独で優れているだけでなく、他の油と組み合わせることで保存性をさらに底上げできるのだ。
食卓から産業まで広がる期待
研究チームは「こめ油調合の抗酸化作用は常温下でも顕著に働き、食品の長期保存に貢献できる」と強調する。これは家庭のキッチンだけでなく、食用油脂や加工食品の産業界にとっても朗報となる。国際的な学術誌に掲載されたことで、食品保存技術の新しい方向性として注目が集まりそうだ。
「米ぬかの会社」の次なる一手
築野食品工業を傘下に持つ築野グループは、こめ油を出発点に、ファインケミカルやオレオケミカルなど幅広い事業を展開している。廃食油のリサイクルや化粧品・医療分野への応用など、米ぬかを余すことなく活用する姿勢は一貫している。今回の成果は、同社が描く「国内資源を循環させる社会」の実現にまた一歩近づいた形だ。