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草津温泉が「レイプの町」と呼ばれた6年。虚偽告訴裁判で元町議に有罪判決

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草津温泉
草津温泉 PhotoACより

前橋地裁は29日、群馬県草津町の黒岩信忠町長(78)に対して虚偽のわいせつ告訴や電子書籍で名誉を毀損したとして、元町議の新井祥子被告(56)に懲役2年、執行猶予5年(求刑懲役2年)の有罪判決を言い渡した。判決を受け、黒岩町長は県庁で記者会見を開き、「観光地に『レイプの町』という烙印だけは許せなかった」と6年間の闘いを振り返った。



 

 

「でたらめな電子書籍」が始まりだった

2019年、草津町の元町議・新井祥子被告(56)は、電子書籍を通じて「町長と肉体関係を持った」と記載し、さらに翌年には「町長室で強制わいせつを受けた」と虚偽の告訴を前橋地検に提出した。
世界中に配信された電子書籍は瞬く間に拡散し、町長個人だけでなく、草津温泉という観光地全体をも巻き込む騒動へと発展した。

黒岩町長は「でたらめな電子書籍が世界に出回って6年。われながら、よく戦ってきたと思う」と会見で振り返った。

 

「レイプの町」と広がるレッテル

「1%の非もないのに『レイプ犯』の烙印を押された」。黒岩町長の言葉は、観光地を背負う立場の苦しみを映し出す。
草津温泉は国内外から観光客が集まる「夢を売る場所」だ。にもかかわらず、「レイプの町」「セカンドレイプの町」といった言葉が国内外のメディアやSNSに広まり、町のブランドは傷ついた。

欧米の左派系メディアや一部のフェミニスト団体も批判を繰り返し、町にはデモ隊や街宣車が押し寄せ、爆破予告まで届いた。観光客に夢を与えるはずの場所が、一瞬にして「糾弾の舞台」と化したのである。

 

証拠は「音声データ」だった

事態を覆したのは、町長室での面談を被告自身が録音していた音声データだった。そこには、わいせつ行為を裏付ける証拠は一切含まれていなかった。
前橋地裁の判決は、この音声を根拠に「うその告発によるもので悪質性が高い」と断じ、懲役2年・執行猶予5年の有罪判決を下した。

判決を言い渡した山下博司裁判長は、「名誉毀損についても電子書籍の著者との共謀関係が認められる」と述べ、被告側の無罪主張を退けた。

町を襲った6年の混乱

草津町の町民や議会は、当初から町長を支持する姿勢を示していた。だが、中央の学会や政界、さらに一部メディアによる批判は強く、草津の町名は「冤罪」の象徴のように扱われた。
「ドイツの知人から『大丈夫か?』と連絡を受けたこともある。SNSの拡散力は恐ろしい。世界に広まった嘘を一つ一つ訂正するのは不可能だ」。町長は会見でそう語り、現代社会における情報拡散の脅威を訴えた。

町には観光を楽しむための笑顔ではなく、デモのシュプレヒコールが響いた。街宣車が温泉街を走り抜け、爆破予告により治安対策が迫られた日もあった。観光地としての「夢」が失われる恐怖は、町民に重くのしかかった。

 

謝罪なき元町議と残された課題

判決を受けた今も、元町議から町長への謝罪は一切ない。
一方で、音声データが公開された後には、一部の学会や団体代表から謝罪が寄せられるようになった。しかし、拡散された情報は「ネットの記憶」として残り続ける。

黒岩町長は「民事と刑事の裁判の結論が出た今、明らかになった事実が世界中に行き渡っていくことを静かに見守っていきたい」と語る。だが、草津町の観光イメージの回復には、今後も長い時間と努力が必要だ。

 

草津温泉の再出発へ

今回の判決は、町長の個人的な名誉回復であると同時に、草津温泉という観光地全体にとっても「再出発の第一歩」だ。
ネット時代では、ひとたび広まった噂が半永久的に残り、観光ブランドを大きく揺るがす。草津町に求められるのは、信頼回復に向けた観光施策と、正しい情報発信を続けることだろう。

「夢を売る場所を守り抜くために戦った6年。そのエネルギーを、これからは町の未来に注ぎたい」。
記者会見場でそう語った黒岩町長の言葉には、長年の闘いを経た覚悟と、町への揺るぎない愛情がにじんでいた。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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