
糖尿病薬「マンジャロ」ダイエットと「ふくらはぎ神経遮断」整形がSNSで拡散。短期間でアイドルのような“カリカリ体型”を得られるとされる一方で、副作用や歩行障害といった重大リスクが指摘されている。体験談コラムも交え、その危険性を追った。
脚を細くするために神経を切断?「ふくらはぎ神経遮断」の恐怖
一部の美容外科で行われているふくらはぎ神経遮断手術は、膝裏から腓腹筋に伸びる神経を切断・遮断し、筋肉を萎縮させて脚を細く見せるという大胆な方法である。「ボトックスより効果が長持ち」「半永久的に美脚になれる」と宣伝され、筋肉質の“ししゃも脚”に悩む女性の関心を集めている。
しかしその代償は重い。一度切った神経は二度と元に戻らない。術後には「感覚が鈍った」「階段で疲れる」「左右差が目立つ」といった声も上がり、専門医は「老後の歩行機能を奪うリスクすらある」と警告する。また、肝心の脚のシルエットにおいても、神経切断をするとふくらはぎが平べったい形になる上、筋肉が動かないため浮腫みやすくなるという指摘もあり、理想の脚の形となれるかには疑問が残る。
糖尿病薬マンジャロを乱用する“危険なダイエット”
一方、SNSで「短期間で激やせできる」「魔法の痩身薬」と拡散されているのは、糖尿病治療薬「マンジャロ」だ。本来は2型糖尿病患者のために開発された薬だが、強い食欲抑制と体重減少効果から「ダイエット注射」として利用希望が急増している。臨床試験では体重が平均15%前後減少したというデータもあり、短期的に“カリカリ体型”を目指す若者の間で人気化している。SNSでは「2ヶ月で10kg減」などの体験談やインフルエンサーの使用報告もあるため、手軽にトライしようとする人も多い。
だがやはり本来は糖尿病患者のための薬であるため、健康な人への長期使用は想定されていない。非糖尿病者への長期的安全性は未確立であり、吐き気・嘔吐・膵炎・胆石・筋肉量減少による代謝低下など重い副作用のリスクも指摘されている。
感覚喪失・歩行障害・膵炎…命に直結しかねない副作用の実態
ふくらはぎ神経遮断は二度と元に戻らない神経の喪失を引き起こすリスク、マンジャロは臓器障害や命に関わる副作用を孕む。どちらも共通するのは、「見た目の変化を得る代わりに、生活機能や命を危険にさらす」という点だ。一時的な美脚や細身のシルエットと引き換えに、後遺症のリスクを背負うことになる。
筆者の友人もマンジャロを使用。一時は痩せたが現在は…
筆者の身近にも、マンジャロを使用していた友人がいる。使用開始から1か月でなんと5kg減量し、その後は耐性がついたのか効果は緩やかになったものの、最終的には10kg近い減量を記録していた。
昨年12月に一緒にランチをした際、彼女の顔立ちや体型は以前より引き締まり、すっきりとした印象だった。イタリアンのコース料理を前にしても、最後のパスタをほとんど残しながら「マンジャロのおかげでお腹が空かなくて食べられない」と笑っていたのを覚えている。
ところがその後、彼女は転職活動で内定を得たものの、元々の職場の人間関係の悪化や嫌がらせに直面し、抑うつ状態となり心療内科に通うようになった。最終的に彼女は、内定していた新しい職場で働いていく自信が無くなり、入社を直前で辞退し現在は無職の状態にある。
「マンジャロやめて2ヶ月経ったんだけど、ストレスと不安とで過食やばくてまた太っちゃった」と語る彼女の顔には、以前の明るさとシャープさが失われていた。
もちろん、これらの変化がすべてマンジャロの副作用によるものだと断定はできない。彼女の場合は仕事や人間関係の不運も重なったのだろう。それでも、かつて自信に満ちていた友人が、心身ともに疲弊していく姿を見るのはつらく、痩身薬が抱えるリスクの一端を感じた。
“カリカリ体型”は本当に必要か?副作用のリスクを理解し、後悔ない選択を
アイドルやモデルのすらりとした「カリカリ体型」は確かに憧れを呼ぶ。中には、自身のコンプレックスや人生に対して深刻に悩み、何度も考え抜いた上で自己責任で美容施術に挑む方々がいることも理解しており、その方々を否定するつもりはない。だが、歩行機能や健康を失ってまで追い求めるべきなのか。美脚整形や痩身薬が健康や生活機能を奪うかもしれない現実を忘れてはならない。
「人生100年時代」と言われて久しい現代、「今さえ良ければいい」と思っていても実は想像以上に人生は長く、年を重ねる上で価値観が変わることも多い。
くれぐれも、後悔しない選択をしたいものだ。