
歌手・橋幸夫さん(享年82)の通夜に現れたのは、EXILE・ATSUSHIを思わせる扮装をしたものまね芸人・RYOだった。厳粛な場に似つかわしくない姿は参列者を困惑させ、やがて世間の大バッシングへと発展する。謝罪で収束かと思いきや、事態はさらに悪化した。ATSUSHI本人が「正直ナメてるな」と苦言を呈すると、RYOは逆に反発。ネットは炎上の渦となり、芸人の立ち位置と礼節の重みが改めて問われている。
名歌手の通夜に走った衝撃
9月9日、東京・文京区の無量山傳通院で営まれた橋幸夫さんの通夜。昭和歌謡界を代表するスターの逝去に、舟木一夫さん(80)、鳩山由紀夫元首相(78)ら名だたる顔ぶれが集った。静かに流れる弔いの空気を一変させたのが、ものまね芸人・RYOの登場だった。
金髪オールバックに黒いティアドロップ型サングラス――EXILE・ATSUSHI(45)を彷彿とさせる装い。会場アナウンスでは「これからATSUSHIさんが来られます」と伝えられ、一瞬、参列者の間に本人到着との誤解が広がった。
しかし登場したのはRYOであり、囲み取材に「ものまね芸人です」と告白。橋さんとの関係を問われると「お会いしたことはあるが親交はない」と答え、場の空気は冷え切った。弔いの場に芸風を持ち込んだ振る舞いは、瞬く間に批判の的となった。
謝罪とATSUSHIの胸中
11日、RYOはXで謝罪文を投稿。「御遺族やファン、そしてEXILE ATSUSHIさんにまでご迷惑をお掛けしました」と平身低頭した。しかしその裏で、騒動に巻き込まれたATSUSHIの心中は穏やかではなかった。
音楽関係者によれば、ATSUSHIは10日のEXILE公式動画配信サービス「CL」での有料配信にてこの件を語った。「故人を弔うのに自分の格好をする必要は全くない」と厳しく指摘し、「正直ナメてるなと思いました」と率直な憤りをにじませた。とはいえ彼が最も憂慮したのは、自らの名誉よりも、橋さんの遺族やファンの心情だった。「公認した記憶はないが、もしそう言っていたのなら解除」とも語り、誤解の拡散に強い危機感を示した。
ATSUSHIにとってファンとの交流は本来、音楽や感謝を共有する場。その時間を不本意に騒動で割かざるを得なかったこと自体、やり切れない思いがあったに違いない。
“逆ギレ”が火に油
12日、RYOは報道を受け、再度ATSUSHIへ謝罪の意を示した。だが翌13日、その態度は急変する。Xに投稿したのは挑発的な言葉だった。
「そんな言葉を公の場で言うのはやめて下さい。マスコミの話を全て鵜呑みにしてませんか?事実関係も分からないまま配信するのは間違ってませんか?」
さらに2018年放送のバラエティ番組でATSUSHIが「彼、有名ですよね」と発言した場面を引き合いに出し、「この言葉も嘘になるんですね?」と主張。その番組はドッキリ企画であり、軽いコメントに過ぎなかったが、RYOはこれを“公認”と誤解していた可能性がある。
音楽関係者は「公認と解釈するのは無理がある。むしろ逆ギレにより、ATSUSHIさんの名誉を再び傷つけてしまった」と指摘する。謝罪から一転した反発は、火に油を注ぐ結果となった。
ネット世論の冷ややかな反応
RYOの発言は瞬く間に拡散し、SNS上で批判が殺到した。
「結果的に本人に無礼と大迷惑をかけたのに、なぜ被害者ぶるのか」
「反省どころか逆ギレ、本当に有り得ない」
「信じられない…」
批判の矛先は“場違いな行為”にとどまらず、謝罪と挑発を繰り返す二枚舌に向けられた。信頼を取り戻すどころか、自ら炎上を拡大させた格好である。
RYOという芸人像
RYOはEXILE・ATSUSHIのそっくり芸で知られるものまね芸人。
年齢は非公表だが、テレビ番組『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦』や各地イベントでのパフォーマンスで知られ、本人さながらの歌声と風貌で人気を得てきた。サングラス姿と伸びやかな歌唱は特徴的で、ステージ上では歓声を浴びる存在だった。
しかし、その活動は「本人公認なのか」としばしば議論の的となってきた。2018年のドッキリ企画を根拠に“公認”と受け止めていた節もあるが、今回の騒動はその認識の甘さと立ち位置の脆さを露呈した。ものまね芸の根底にあるべきリスペクトが揺らげば、笑いは一瞬にして不快感へと変わる。その教訓を世に示す事例となった。
ATSUSHIの怒りが意味するもの
ATSUSHIの「正直ナメてるな」という言葉は、単なる感情的な一言ではない。芸能界の先輩としての立場から、礼節を欠いた行為に対する警告とも受け取れる。
弔いの場に芸を持ち込むことの軽率さ、そして事後対応の稚拙さ――。今回の騒動は、芸能人や芸人に求められる責任の重さを浮き彫りにした。
話題性は芸人にとって最大の武器であり、同時に諸刃の剣でもある。RYOが今後も表舞台に立ち続けるなら、何よりも誠実な謝罪と深い自省が不可欠だ。信頼を失うのは一瞬、取り戻すには時間と努力を要する。今回の出来事は、その厳しい現実を示したと言える。