地域から始まるサーキュラーエコノミー

東京都足立区に本社を置くユーエスフーズ株式会社は、2025年9月11日、株式会社ソーイと連携し、コーヒー抽出かす(コーヒーグラウンズ)を活用した地域循環プロジェクト「あだち ぐるぐるコーヒープロジェクト」を始動した。同社が長年にわたり取引を続けるコーヒーロースターを支援しつつ、廃棄物を資源に変える「ローカルなサーキュラーエコノミー」の確立を目指す。
コーヒーグラウンズはこれまで「ごみ」として処理されるのが常だった。今回の取り組みでは、約300年にわたる発酵技術を持つソーイの特許技術「UP 0 TECH®」を導入。乾燥工程を経ずにペースト化して発酵させることで、ゼロウェイストを実現する。
背景にある業界の危機
日本では可処分所得の減少や人口減少によりコーヒー消費の縮小が懸念されている。一方で世界的には需要が高まり、調達コストの上昇が国内のコーヒーロースターを直撃している。ユーエスフーズにとっても、取引先の持続可能性は事業継続に直結する課題だった。
同社は「来店動機の創出」というミッションを掲げ、消費者が自発的にロースターを訪れたくなる仕組みを模索していた。そこに廃棄物のアップサイクルという視点が結びつき、地域循環型ビジネスモデルの実証に踏み出した。
コーヒーから新しい食材へ
プロジェクトでは、協力する区内ロースターや一般家庭からコーヒーグラウンズを回収し、ユーエスフーズが買い取る。ソーイの技術により「発酵コーヒーペースト」として再生された後、菓子製造業者などに販売される。このペーストを用いた新商品の開発・販売が年内に予定されている。
足立区が主催するSDGsイベント「ぐるぐる博 in 来た!アヤセ 2025」では、11月に成果発表が行われ、12月には協力店で商品が店頭に並ぶ見通しだ。2026年以降も継続的な展開が検討されている。
「当たり前」を変える挑戦
「コーヒーは長いサプライチェーンを経て日本に届くのに、抽出液だけを飲んでかすは捨ててしまう。この『当たり前』を変えたい」とソーイ代表の石垣哲治氏は語る。ユーエスフーズ代表の杉本幸広氏も「取引先ロースターの持続的な発展のために、廃棄物を資源に変える新しい価値を広げたい」と強調する。
環境負荷を抑え、地域の消費と生産をつなぐ試みは、足立区発の循環型経済の実証モデルとなる可能性を秘めている。