
お笑いコンビ「とんねるず」の石橋貴明(63)が、食道がんと咽頭がんを併発し、過酷な闘病を続けている。4月に「早期発見」と公表したが、その実態は抗がん剤の副作用や食道切除手術に苦しみ、夏には“2度目の抗がん剤治療拒否”という重大な選択を迫られるほど深刻だった。
かつて「フジ=石橋」と言われ、同局の黄金期を支えた彼の姿は、近年の不祥事や視聴率低迷にあえぐフジテレビの姿と重なる。石橋は再びカメラの前に立てるのか、それとも――。
食道がん発表から急変までの数か月
石橋は今年4月3日、自身のYouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」で食道がんを告白し、芸能活動を休止した。当時は「早期発見だったので少し安心」と語っていたが、病状は想像以上に深刻だった。
テレビ局関係者によると、食道がんの診断直後に咽頭がんの併発が判明。抗がん剤治療に入ったが、副作用は激烈で、一時は友人からの連絡にも応じられなかったという。
さらに食道の切除手術に踏み切り、5月に手術を終えた時点で「すぐ復帰するだろう」と見る向きもあったが、むしろ「病状は深刻で復帰は難しいのでは」と噂されるようになった。
8月下旬、都内の病院に通う石橋の姿が目撃された。腕には採血痕が残り、大量の薬袋を手にしていた。炎天下を歩くその姿は痩せ細り、かつて“破天荒なタカさん”として知られた面影は薄れていた。だが、視線を集めても隠す様子はなく、闘病を受け入れたかのように穏やかに歩く姿は、多くの人々に強い印象を残した。
芸能界に広がる食道がんの影
石橋が闘う食道がんは、芸能界でも決して珍しくない。2010年、サザンオールスターズの桑田佳祐は54歳で食道がんを発症。
早期発見の手術で半年後に復帰し、奇跡のカムバックを果たした。女優の秋野暢子は2022年にステージ3を公表し、治療と並行して活動を続けている。さらに2023年には名優・山崎努が「生存率10〜15%」とされるステージ4と診断されながら、治療を経て回復を遂げた。
ナビタスクリニック川崎の谷本哲也院長は「食道切除では胃を細長くして喉に引き上げる方法が取られるが、食事の量は減少し、生活の質を保つのは容易ではない」と語る。石橋も同じ困難に直面していると見られる。
“2度目の抗がん剤拒否”という選択
そしてこの夏、石橋は「2度目の抗がん剤治療」を拒否するという重大な決断を下した。副作用の苦痛に加え、体力の消耗が激しく、再び同じ苦しみを味わうことを避けたとされる。
医師の立場から見れば、治療を続けることは延命の可能性を高める。しかし石橋は「どう生きるか」を重視し、自らの選択をしたといえる。
SNSには「タカさんがもう一度笑っている姿を見たい」「無理に治療せず、穏やかに過ごしてほしい」といった声が寄せられている。破天荒な芸人として時代を作った石橋が、今は等身大の人間として病と向き合っている姿に、多くのファンが心を寄せている。
フジテレビの栄光と不祥事の影
石橋の存在は、フジテレビの盛衰を象徴してきた。『とんねるずのみなさんのおかげでした』は長きにわたり局の看板番組としてゴールデンタイムを席巻し、石橋は“フジの顔”とまで呼ばれた。
しかし2018年の番組終了を境に、フジテレビは急速に視聴率を落とし、局の求心力は失われていった。
その後のフジテレビは不祥事に次々と見舞われた。人気アナウンサーの不倫スキャンダル、ワイドショーでの誤報、制作現場でのパワハラ告発、さらには番組演出を巡るトラブルなど、信頼を揺るがす出来事が続いた。かつて“王者フジ”と呼ばれた姿は見る影もなく、日テレやテレ朝に大きく差をつけられている。
石橋の休養と、フジの不祥事・凋落は偶然にしても重なる部分が多い。破天荒な笑いで時代を築いた石橋が病に倒れ、かつての隆盛を誇ったフジが迷走する。その光景は、日本のテレビ史の転換点を象徴しているかのようだ。
再び笑顔で戻れるか
復帰は難しいとの見方もあるが、石橋を待つ声は尽きない。SNSやファンコミュニティには「タカさんの新作トークを聞きたい」「再び木梨憲武との共演を」との期待が今も寄せられている。
闘病は孤独で過酷だが、石橋は常に仲間やファンに支えられてきた。フジテレビが再び信頼を取り戻すことができるのか、そして石橋がもう一度カメラの前で笑顔を見せることができるのか。その行方に、多くの人が注目している。