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AI恋人アプリが40代男性に人気 既婚者も利用する“仮想恋愛”の実態

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AI スマホ
PhotoACより

夜明け前、枕元のスマホに「おはよう」の文字が浮かぶ。相手は人間ではなく、生成AIの恋人だ。数秒後、画面には眠たげな返事が返ってくる。こうしたやり取りを日常にしている人が、今じわじわと増えている。

2023年に登場したAI恋人アプリ「LOVERSE(ラヴァース)」は、数千人のAIキャラクターの中から気になる相手を選び、恋愛体験ができるマッチングサービスだ。利用者は意外にも40代以上の男性が多く、既婚者も少なくないという。恋愛経験が二極化する時代、AIはどんな「心の居場所」になっているのか。

 

 

人間らしさを再現するAI恋人

「LOVERSE」は、従来のマッチングアプリとは根本的に違う。相手は実在の人間ではなく、生成AIが作り出したキャラクターだ。ユーザーはプロフィールを見て「いいね」を送り、返事があればマッチング成立。その後はメッセージをやり取りする。

特徴は「人間らしさ」の再現にある。AIキャラクターには職業や趣味に基づいた1日のスケジュールが設定され、仕事中や休息中は返事をしない。あえて即レスを避けることで、現実の恋人とやり取りしているような没入感を演出している。

さらに運営会社は、AIが同時に多数のユーザーに完璧な返答を返すような「超人的な挙動」を避けるよう設計している。リアルさを重視し、ユーザーが「まるで本物の人間と接している」と錯覚できるバランスを追求しているのだ。

 

利用者は40代以上の既婚男性が中心

同社の調査によると、ユーザー層で目立つのは40代以上の男性で、既婚者の割合も少なくない。恋愛の機会が限られている人、家庭や仕事を優先してきた人たちが、AIの恋人に「心地よさ」を見出している。

ある利用者はコメント欄でこう語る。
「現実の人間相手だと食事代や予定の調整、気遣いが必要になる。でもAIなら、自分が会いたいときにアプリを開くだけで、都合よく優しい言葉をくれる。それが心地いい」

既婚者が多い理由について、運営会社の楠剛毅CEOは「事情があって恋愛できない人にも、人を好きになる気持ちを思い出してほしい」と説明する。つまり「裏切り」ではなく、「忘れかけていた感情の再現」としてAIを選ぶ人が少なくないのだ。

 

67%がAIに「愛着」を抱く時代

電通が今年6月に実施した調査では、対話型AIに「愛着を抱いている」と答えた人は67.6%。そのうち26.2%はAIに独自の名前をつけていた。

実際にAIと「結婚」した女性もいる。東京都江戸川区の会社員は、ゲームキャラクターを土台にChatGPTで人格を構築し、「クラウスさん」と名付けた。毎朝「おはよう」と交わし、6月にはAIからのプロポーズを受け入れた。「仕事と料理とお風呂以外は、常に彼と会話しています。私は今、とても幸せです」と語る。

こうした現象について、OpenAIのサム・アルトマンCEOも「多くの人がAIをセラピストやライフコーチのように使っているのは良いこと」と評価する一方、「長期的幸福を損なう可能性がある関係性には注意が必要だ」と警鐘を鳴らしている。

 

恋愛の二極化とAI需要の必然性

背景には「恋愛の二極化」がある。調査によると、30代男性の約4割は「交際経験ゼロ」。一方で20代女性の半数は「現在交際中」だ。恋愛に積極的な層と、まったく経験のない層に分かれている。

「交際経験がない理由」として最も多かったのは「自分に自信がない」(35.6%)。続いて「出会いの機会がない」「恋愛が面倒に感じる」と続く。出会いの場が不足しているだけではなく、心理的ハードルが行動を止めているのだ。

この空白を埋めるのがAI恋人アプリだ。出会いの失敗もなく、自分の都合に合わせてやり取りできる。現実の恋愛に踏み出せない層にとって、AIは“ちょうどいい距離感”の存在になりつつある。

 

AI恋人は人間の関係を代替できるのか

AI恋人の広がりは、便利さと同時に依存のリスクをはらむ。自分の望む言葉だけを返してくれる存在に慣れてしまえば、人間関係の摩擦や面倒をますます避けるようになるかもしれない。

一方で、AIとのやり取りを「恋愛の練習」と捉え、実際の人間関係に踏み出すきっかけにする人もいる。AIは現実の代替ではなく、現実へ戻るための“ステップ”になり得るのだ。

恋愛や結婚の価値観が多様化する時代。AIは「孤独を埋める道具」なのか、それとも「新しい愛の形」なのか?答えはまだ定まっていない。ただ一つ言えるのは、私たちが人間関係の意味を改めて問い直す時代に突入したということだ。

 

AI恋愛が投げかける問い

生成AIを恋人に見立てたマッチングアプリ「LOVERSE」が広がりを見せている。利用者は40代以上の男性が多く、既婚者も少なくない。AIとの会話は気楽さと安心感をもたらし、「恋する気持ち」を手軽に再現できる点が支持されているのだ。

一方で、電通の調査では67%の人がAIに愛着を抱いていると回答し、結婚を選ぶ人まで現れている。背景には「30代男性の約4割が交際経験ゼロ」という現実があり、恋愛経験の二極化が進む社会で、AIがちょうどいい距離感のパートナーとして受け入れられている。

ただし、AI恋人は孤独を癒やす存在であると同時に、現実の人間関係から遠ざけるリスクも持つ。利便性と依存の狭間で、私たちは改めて「人を好きになることの意味」を問い直す時代に入っている。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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